ビアンエッセイ♪

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■8275 / 親記事)  Everytime
  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(1回)-(2005/03/26(Sat) 12:29:23)


    忘れかけていた歌や言葉たちは

    春の優しい風にのって舞い戻る。



    愛しい人の香りや表情が

    鮮明に蘇るのは何故だろう


    since

    いつからだろう

    こんなにこんなに"愛"というものを知ったのは。


    いつからだろう

    "愛しい"だなんて思うようになったは。




    (携帯)
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■8276 / ResNo.1)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(2回)-(2005/03/26(Sat) 12:30:43)


    「ただいまー」

    鍵を開けて、少し疲れた声で言ってみる。

    誰もいない部屋からは返事が返ってくるわけではないけど。
    わかってても言いたくなるんだよね。


    いつもより風が強くて、綺麗な雪も荒々しく見えていた今日は
    冬の寒さ以外にも、何か他の、冷たさのようなものがある気がした。


    部屋の電気をつけると
    殺風景な様子が現われて、余計に冷たく感じてしまう。

    チャラチャラと指で鍵を回していたら、鼻歌が自然と流れる。



    何かいい気分。

    そのまま、コーヒーでもいれようかと思った。

    〜♪


    鞄の中が騒がしくなる。

    あっ‥電話?

    鍵をテーブルに置き
    すぐに鞄の中をあさってみるが、
    焦っているとなかなか見つけだすことが出来ない。


    やばっ切れちゃう!


    〜♪――‥

    「あっ。」


    手探りでやっと見つけたのに。
    切れちゃった。

    「チェッ。」


    静かになった携帯を開き、着信履歴を見てみる。



    少しだけの期待が、私の胸を襲う。



    けれど、
    あぁ、また‥か。



    ―非通知設定―



    うまい具合に期待が裏切られてしまう。


    誰なんだろう。前からあったけど、最近は特に多いな。

    「ストーカーかな?」


    そんなことを呟いてみるが、本当は大して気にしていない。
    だからそのまま鞄ごとソファに放り投げる。




    何期待してんだろー。


    なんとなく、そんな自分に嫌気がさした。



    もう自分の心の中は整理したはずなのに。


    ちゃんと受けとめられたはずなのに。





    どうして私は。





    (携帯)
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■8277 / ResNo.2)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(3回)-(2005/03/26(Sat) 12:32:05)


    「ちょっと、、柚羅さーん?」


    「えっ?」

    可愛らしい女性の声でハッとする。

    あっ‥今仕事中だっけ。

    忘れてた。


    「ほら、全然進んでないじゃないですか。もう。」

    休憩のお茶を運びにきた亜紀は、
    頬を膨らまし、何だか怒ってるみたいだ。


    そのまま私の横に腰を下ろしハサミを手に取り、
    綺麗な色画用紙を切り始める。


    「まさか、明日お遊戯会だってこと忘れてませんよね‥?」


    それでもまだうわの空の私に、恐る恐る亜紀は聞いた。


    「あっ‥。」


    忘れてた。


    お茶を飲もうとした手を、パチッと叩かれる。


    「もう、休憩なしですよ!何か‥最近柚羅さんおかしいですよ。」


    いきなり叩かれたもんだから‥びっくりした。



    確かに、変かもな。



    けどソレは。




    「何でもないよ。工作が苦手なだけ。」





    「‥嫌味ですか?」


    私より工作が苦手な亜紀はまた頬を膨らます。

    「あっ‥」

    思わず笑ってしまった。


    先程まで綺麗な長方形だった色画用紙は、
    うさぎだか、くまだか、犬だか、
    ‥わけのかわらない、不思議な形を作っていた。


    「あぁ‥ごめん‥」


    必死に笑いを堪えてみせるが、亜紀はまた頬を膨らます。


    「いいんです、子供たちはわかってくれるんだから。」


    そう言うと亜紀は怒ったように顔を背けた。




    「あっでもこの間亜紀が作った‥キリンだっけ?
    あれ優太君に馬って言われてたよね。」


    言った瞬間、亜紀にギロッと睨まれる。


    でも負けない。


    「あんなに特徴的な動物なのにね。」



    「―‥もう!」


    堪り兼ねた亜紀が大声を出した途端、


    お昼寝中の子供たちがモソモソと動き始める。



    「亜紀先生静かにしてくださーい。」


    わざとらしく言ったら、


    亜紀はまた頬を膨らませた。




    亜紀のせいだ。





    亜紀のせいだ。






    亜紀のせいなんだ。





    (携帯)
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■8278 / ResNo.3)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(4回)-(2005/03/26(Sat) 12:34:15)


    柚羅さん‥

    また考え事してる。


    お昼寝の布団をテキパキと片付けているけれど、

    何だか、背中が小さく見える。



    何かあったのかなぁ‥。



    「あきせんせェー」


    ぼんやりそんな事を考えていたら、
    泣きながら千尋ちゃんがエプロンの裾を引っ張ってきた。


    「んっ?どうしたの?」


    すぐに私はしゃがみこみ、千尋ちゃんと視線の位置を合わせる。


    「ゆうたくんがぁ‥」


    そう言うと千尋ちゃんは、ヒクッと喉をならし、
    大きな声で泣きだした。


    あまりの泣き声の大きさに、柚羅さんがコチラを振り返る。

    「大丈夫です。」と私は目で伝えて、泣きじゃくる千尋ちゃんを抱えあげた。



    「‥っ――。」


    また優太君にいじわるされちゃったんだね。


    優しい声でそう言ってあげると、
    千尋ちゃんは、少しづつ、少しづつ、おとなしくなる。


    「大丈夫。先生が守ってあげるからね。」



    頭をポンポンと撫でてあげると、


    千尋ちゃんは、安心しきったような笑顔を見せた。




    可愛いなぁ‥。






    こんなに自分の気持ちを素直に出せるのは、






    子供の特権だな。って思った。






    自分が素直になれない分。






    私は子供にソレを求めているんだろう。





    だからこの仕事を始めたんだ。



    あっ、そうだ‥!


    千尋ちゃんを下ろしてあげて、

    大丈夫だよ、って言った。


    逃げ回る優太君を必死で追い掛けて、


    やっと捕まえた。



    「優太君っ‥足早い‥」



    抱き上げて肩で息をしながら私が言うと。



    「おめーがおそいんだよ。」


    おめーって‥。


    しかも図星じゃん。


    でも一応、私あなたの先生なんですけど。


    まだ4歳のくせに‥


    くーっ生意気――。




    (携帯)
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■8279 / ResNo.4)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(5回)-(2005/03/26(Sat) 12:35:56)
    2005/03/29(Tue) 16:55:34 編集(投稿者)

    「そんな言葉使わないでくださいー。
    先生は優太君より力、強いですから。」


    そう言って抱き上げた優太君をギュッと抱き締める。

    ちょっと強めに。



    優太君はジタバタと腕の中でもがいているけど、


    動けないみたい。



    「ねっ?強いでしょ?」


    「――ッ!はなせよ!」



    「ちゃんと千尋ちゃんに謝るって約束したら離してあげる。
    優太君はココで一番のお兄さんなんだから、優しくしてあげなきゃ。」



    またギュッてすると、優太君はやっと観念したみたいで。


    「わかったから、はなせよ!」


    だから離してあげた。

    背中をポンポンと押してあげると、素直に千尋ちゃんの元へと向かう。



    「ごめん。」


    そっけなくそれだけ言うと、逃げていってしまった。



    恥ずかしがり屋さんなんだよね。



    それは千尋ちゃんもきちんと理解してるみたいで、


    逃げていった優太君を追い掛けて、


    「ゆるしてあげるよ」って笑顔で言っていた。



    子供なのに大人より大人なんだ。


    すごいなぁ‥。



    あっ‥!感心してる場合じゃなかった。



    「柚羅さん!」



    振り返って、柚羅さんに声をかける。




    けれど‥



    私が呼ぶ前から。







    柚羅さんは冷たいような、淋しいような瞳で






    私を見つめていた。




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■8291 / ResNo.5)  NO TITLE
□投稿者/ 真 一般♪(3回)-(2005/03/26(Sat) 18:29:50)
    続き楽しみです。頑張ってください!

    (携帯)
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■8294 / ResNo.6)  真さん
□投稿者/ 菜々子 一般♪(6回)-(2005/03/26(Sat) 21:57:24)
    読んでくれてありがとうございます(*^-^*)

    スローペースですが頑張りますので、最後までお付き合い頂けるとありがたいです‥☆

    (携帯)
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■8295 / ResNo.7)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(7回)-(2005/03/26(Sat) 21:58:09)

    「柚羅さん‥?」


    亜紀の声で、またハッとする。


    「あっ‥どうした?」



    無意識に



    亜紀の姿に釘づけになっていた。









    「あー今日飲みに行きません?」


    二人の間に流れた気まずい空気。


    亜紀はソレを晴らすかのように明るく言った。


    「えっ何で?」


    「いや、そんなあからさまに嫌な顔しないでくださいよ‥。」


    亜紀が皮肉っぽく笑う。


    「違う違う!亜紀から誘われるの初めてだから。ちょっと驚いたの。」


    「本当ですか?
    今日、私がココに来て一ヵ月記念日なんですよ。だから。」


    背中をポンッて叩かれる。


    「柚羅さんなら覚えてくれてると思ったのになぁ。」


    優しい笑顔。



    亜紀の笑顔って安心するんだよな。



    「えっ早いねェ。もう一ヵ月か。」


    本当早いなぁって思う。


    「えぇ。だからパーティーしましょう?」


    「パーティー?」



    何故にパーティー‥?


    しかも二人で?



    でも亜紀らしいなって思ったから。



    「うん、いいよ。」

    快くOKした。



    「良かった。じゃあまた後で‥☆」


    そう言って亜紀は子供たちを集めた。


    「はーい、集まってください。
    今日は何の絵本がいいかな?」


    子供たちは亜紀の前にチョコンと座り、見るからにワクワクしている。


    私もまだ歩けない子供を二人、両腕に抱いて、

    後ろの方に腰をおろした。



    今日はアンパンマンか。




    ってあれ?昨日もアンパンマンじゃなかった‥?




    まぁ飽きないんだろうね。みんなの目、キラキラ輝いているもん。




    部屋に響く亜紀の声。





    子供たちが最後まで黙って聞いていられる声。





    優しい優しい声。





    後輩なのに尊敬しちゃうよ。




    (携帯)
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■8296 / ResNo.8)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(8回)-(2005/03/26(Sat) 21:59:43)
    2005/03/29(Tue) 16:59:56 編集(投稿者)

    「んーっ。」

    家に着いて一服。


    亜紀が来るまであと一時間くらいかな‥?


    "終わったら迎えに行きますね。"


    今日は亜紀が遅番で。


    私の方が先にあがった。



    働いているのは私と亜紀の二人だけ。
    それと私たちを雇っくれている清水さん。



    小さな小さな託児所だから。


    その人数で十分だったりする。



    けど正直しんどいなー。



    だって亜紀が来るまで休みなんてなかったし。



    毎日遅番だったんだよ?





    けどそれでも続けているのは。

    清水さんの人柄と

    子供たちの笑顔があるから。




    「んーっ。」

    なぁんてね。


    そんな事、絶対に口にはしないけど。



    感謝してますよ。



    〜♪


    「おっ?」

    電話。亜紀からだ。


    「はいはい。」


    <あっ柚羅さんですか?>


    「えぇ、そうですとも。」



    亜紀の声。


    本当に優しいな。




    <今から迎えに行きますよ?>


    「えぇ、いいですとも。」


    何か電話で会話って、久しぶりかも。



    <ははっ、じゃあ行きますね。たぶん10分くらいで着きますから。>


    亜紀の笑顔が頭に浮かぶ。


    「あーい。」



    電話を切って、



    ふと思った。





    こういう言葉にできないような気持ち。





    すごく久しぶりだ。と。







    私は一体、







    亜紀に何を求めているのだろう。






    (携帯)
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■8297 / ResNo.9)  
□投稿者/ 菜々子 一般♪(9回)-(2005/03/26(Sat) 22:01:25)

    「柚羅さーん!」


    亜紀が車の中から手を振ってる。


    だから私も手を振る。


    亜紀は、その可愛らしい外見に似付かわしくない、



    大きな四駆の車に乗っている。



    何で?って聞いたら、少し照れたように笑っただけで。



    車はどんどん夜道を進んで行って、
    どこかの駐車場に入る。


    んっ‥?


    亜紀はそこに車を入れると、

    「着きましたよ。」

    って笑顔で言った。


    えっ?だってココ。


    マンションの駐車場だよ?



    「あれ?私の家じゃ不満でした?」


    呆気にとられている私に、亜紀はからかうように言った。



    「えっ!?あぁ、飲みに行くって言ったから、
    てっきり飲み屋にでも行くのかと思ったよ。」

    私はちょっと驚いた顔をしながら、亜紀に言った。



    「そんなに驚かないでくださいよ。
    飲み屋よりきっと楽しいはずですよ?」


    亜紀は苦笑しながら、


    器用に車を駐車場に収めた。



    何か以外。


    亜紀って運転下手そうなのにな。


    うまいもんだ。





    って‥!




    あたし亜紀の家に行くの?





    でも亜紀はもう車を下りていて。


    「行きましょう?」


    なんて笑顔で言うから。






    私はついていくしかなかったんだ。




    (携帯)
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