ビアンエッセイ♪

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■9895 / ResNo.70)  43
  
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(59回)-(2005/06/01(Wed) 20:48:09)

    「えっ?」


    「事故だった。けれど柚羅は自分を責めた。」


    戸惑う私に少しだけの笑顔を見せながら。


    「柚羅のせいじゃないのに‥あの娘は去った。
    柚羅を見ていて思った。まだ、綾香のことを忘れていないんだって。」


    そこまで話すと彼女はそっと息をついた。
    そのままコーヒーを一口だけ口にする。


    「‥で、でも‥」


    「柚羅の気持ちは分からない。けど、あなたが柚羅に必要だとは思えないの。」



    私の言葉を遮り、彼女の冷たい声音。



    "お待たせしました。"


    丁度、先程のウェイトレスがいい匂いのハンバーグセットを運んできて、私の目の前にそれを並べる。



    「あなたは子どもすぎる。本当に自分が柚羅にふさわしいと思うの?」




    痛いところを突いてくるな‥。なんて他人事のように思おうとしたけど。
    うつむいていたら、涙が込み上げてきた。


    彼女に見られないように必死で我慢して。
    けれどハンバーグの湯気が目の前を覆うから。


    「もう柚羅に近づかないで。」



    ―トドメ―


    気が付いたら、私は店を飛び出していた。


    涙が、止まらない。






    (携帯)
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■9906 / ResNo.71)  菜々子さんへ
□投稿者/ エビ ちょと常連(70回)-(2005/06/02(Thu) 00:38:03)
    こんばんは、初めまして。エビといいます。

    Everytime、ずっと読んでます。
    確か、1話目がアップされた時からリアルタイムで(笑)

    人の死を扱うって、結構難しいことだと思うんですが、この小説の中ではとても自然に感じられて。
    繊細さが素敵だなあと。


    私的には亜紀ちゃんに早く戻ってきてもらいたいところ。

    “あき”は私の好きな名前でもあるので(笑)


    続きも期待しています(^-^)
    失礼しました。



    (携帯)
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■9925 / ResNo.72)  エビさん
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(60回)-(2005/06/02(Thu) 22:54:49)
    初めまして♪こんばんわ。

    リアルタイムで読んでいてくださったんですか?すごく嬉しいデス、ありがとうございます(*^o^*)
    亜紀、この後出てきます。お待たせ(?)しました♪

    何だか重い内容で‥皆様に見捨てられないか心配な菜々子であります(苦笑)だからそう言って頂けると安心致します♪

    んー‥実は菜々子もエビ様の作品「シエスタ」をリアルタイムで読んでいたり(笑)完結してから感想入れようと思ったのですが‥今度、お邪魔させて頂きますね☆

    このまま、ウチの亜紀(と柚羅と清水さんと郁/笑)も暖かく見守って頂けると幸いです。感想、ありがとうございました☆

    (携帯)
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■9974 / ResNo.73)  44
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(61回)-(2005/06/04(Sat) 15:36:17)

    清水さんから電話がきた。


    頭の中が柚羅さんでいっぱいで。
    胸が痛くて。
    仕事を休んだ夜。


    清水さんから電話がきた。



    "亜紀すぐに病院にきて。柚羅が‥倒れた。"


    布団にくるまっていたら、携帯が鳴って。
    そのまま繰り広げられる会話に耳を疑って。
    けれど清水さんの声が恐いくらいに寂しくて。


    "‥すぐに行きます。"


    病院の名前を聞くだけで精一杯だった。
    恐いくらい寂しい声の清水さんに、
    それ以上は聞けなかった。



    近場にあったどうでもいいような服に腕を通し、車のキーを手に取る。けど。


    やだ、震えてる‥


    カタカタと、テーブルとキーがぶつかり合う音。


    不安で、たまらない。



    「柚羅さん‥。」


    この時間の、車の通りは少ない。
    目の前には数台の車が見えるだけの殺風景な大通りが広がっていて。


    薄暗いコンクリートの道。遠く続く一本道。



    「柚羅さん‥」


    ギュッと握ったハンドルが冷や汗でしめる。


    「柚羅さん‥。」


    踏み込むアクセル。
    グンッとスピードが上がって。


    「柚羅さん。」


    何度もあなたの名前を呟いて。


    「柚羅さん‥!」


    何度もあなたを思い浮べる。



    病院に行けば、きっと柚羅さんは笑っている。


    何度もあなたの名前を呟いて。
    私はそう信じているの。




    ふと、幼少時代を思い出した。



    二度と戻らない母親を待ち続けた。
    信じる事しかできない私。




    あの頃から成長できていない。
    信じる事しかできない私。



    不安で、たまらない。






    (携帯)
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■10158 / ResNo.74)  45
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(63回)-(2005/06/14(Tue) 00:16:02)

    あぁ。足、痛い。
    勢いで飛び出したのはいいけど。


    頬に残る涙を伝った跡が、風で乾いて。
    何か虚しい気持ちになった。


    点々と並ぶ街灯。
    数人が行き交うコンビニの前に座り込んだ。


    「何処行こう‥。」


    お姉さんの部屋の鍵は返しちゃったし。

    家、しかないか。



    あまり気持ちは乗らなかったが、ココに居てもどうしようもない。


    少し考えてから立ち上がり、普段は通らない道程を
    家へと向かい歩き出す。


    「んー‥」


    "ふさわしくない"、か。


    彼女の言った、恐ろしく核をついた一言。


    そんなのわかってるもん。お姉さんに不釣り合いなんて、ずっと前から自覚している。
    私が子どもなことくらい、わかっている。


    でも‥


    お姉さんは私と一緒に居てくれた。
    傍に居てくれた。


    あんなに綺麗な人が、どうして一緒に居てくれるのは今でも分からないけれど。


    傍に、いてくれた。


    「なんかなぁ‥」


    お姉さんの前カノの事‥聞いちゃった。
    聞かないほうが良かったかも。って
    今さら後悔しても、ね。



    自然と足取りが重くなる。
    飾りのように明かりを灯した街灯を見つめながらフラフラと歩いて。



    「うわぁっ!!」



    通りの少ない車道。
    突然、私の横を猛スピードで通っていった四駆。


    「びっくりした‥」


    驚いて思わず声をあげた。



    「何なんだよっ。」


    もう投げやりな気持ちになってきて。独り言も波に乗る。


    朝の嬉しい気持ちは、何処か遠くに飛んでいってしまった。



    逢いたい、な。
    今すぐお姉さんに。






    逢いたい。






    (携帯)
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■10160 / ResNo.75)  Re[2]: 45
□投稿者/ さとみ 一般♪(1回)-(2005/06/14(Tue) 00:28:31)
    待ってました!!
    このお話マジ好きです:▽;
    どの子も好感が持てて、だから切なくて、、
    これからも頑張ってください!!
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■10162 / ResNo.76)  さとみさん
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(64回)-(2005/06/14(Tue) 07:18:45)
    初めまして♪お早い反応ありがとうございます(*^o^*)なのに更新遅くて申し訳ないです(T_T)
    忙しいなぁ‥なんて思っていたら10日も空いてしまっていて‥ダメダメ菜々子です(涙)
    マジ好きッスか♪嬉しいお言葉、ありがとうございます☆柚羅たちみんなに好感を持って頂けて嬉しいです。

    頑張りますので完結までお付き合い頂けたら幸いです♪ありがとうございました☆

    (携帯)
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■10281 / ResNo.77)  46
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(68回)-(2005/06/18(Sat) 17:38:21)

    「‥清水さん!」


    大きな総合病院の緊急用の入り口。
    その玄関の外の脇にある喫煙スペース。


    「あー亜紀。」


    煙草をくわえながら、妙に寂しそうな顔の清水さんがソコに居た。


    「あっの‥柚羅さんは‥?」


    そばに駆け寄り、彼女に問う。


    息が切れてしまっているのは走ったせい?


    ‥それとも、この不安のせい?



    「んー、ストレスだろうって。体とかじゃなくて、心、みたい。」


    フーッと煙を吐きながらそう言って、困ったように笑った。


    「あっ‥良かった‥」


    のかな?
    けど体は大丈夫なんだ。


    うん‥良かった‥。


    「ただ、倒れた時に頭打ったから。一応その検査もするってさ。」



    そう言いながらも、彼女の声音から異常は出ないだろう、と感じとれた。


    さっきまでの重たく不安な心が一気軽くなったけど。

    "心"に不安が残る。


    このまま体に異変が出なくても。
    心の異変は、見ることが出来ないから。



    「大丈夫、安心してていいよ。」


    清水さんはそう言って私の頭を2・3回ポンポンと撫でると、
    いつもの笑顔をむけた。


    「悪いね、体調悪いのに呼び出しちゃって。」


    「いえ‥大丈夫です。」


    その笑顔にまた安心する。


    「2〜3日は入院しなきゃいけないらしいからさ。
    明日から仕事、大丈夫?」


    「はい。大丈夫です。」



    夜の外の冷たい風が、二人髪をなびかせた。





    (携帯)
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■10308 / ResNo.78)  47
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(69回)-(2005/06/19(Sun) 16:06:38)

    「良かった。今日は面会とか出来ないみたいだから。明日にでも来てやって、な?」


    彼女は"呼び出したのにごめんね"といったような表情。
    自分のほうがよっぽど疲れているハズなのに、こんな私を気遣ってくれる。


    「あっ‥はい!」


    だから私も精一杯それに答える。けれど、


    「‥そんな不安そうな顔するなよ。」


    やっぱり不安は隠せなかったみたいで。


    私をジッと見つめていた清水さん。


    「あたしはね、柚羅はあんたを待っている、って思うんだ。」


    突然、真剣な顔つきでそう言うと
    私の横へと移動し、右腕で肩を優しく抱き締めた。


    ―‥?
    思わずドキッとしてしまうけど


    ‥煙草、くさい。
    でも決して嫌ではない。
    だって、優しい香りも交ざっているから。


    「まぁ‥あくまでも私的な意見だがね。‥憶測さ☆」


    そのまま私の顔を覗き込むと、イタズラっぽく笑ってみせた。


    「じゃあ、お先に失礼♪」


    戸惑う私を尻目に、彼女は優しく微笑み、その場を去った。


    駐車場、その暗やみに消えていく彼女の背中を見つめながら。
    その言葉の意図がジワジワと心に伝ってきて。


    改めて、彼女の存在の大きさを感じた。



    ‥ありがとう、清水さん。



    「よしっ!」


    両頬をパチンっと叩いて、気合いを入れる。
    さっきまでウジウジしていた自分が馬鹿らしい。


    明るく明るい。私の唯一の長所を。
    無くしてしまうところだった。



    明日仕事が終わったら。
    柚羅さんに、逢いに来よう。





    (携帯)
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■10323 / ResNo.79)  48
□投稿者/ 菜々子 ちょと常連(70回)-(2005/06/20(Mon) 22:40:45)

    "Everytime I try to fly.

    I fall without my wings .I feel so small.

    I guess.
    I need you baby."


    〜♪


    あーコレ。亜紀の車の中で流れてた歌だ。


    あ、そういえば‥あのバーでも流れてたな。
    だから聴いた事ある感じ、したのか。



    やっぱり綺麗な曲。
    透き通るような歌声。



    だけど、あの時の亜紀の寂しそうな笑顔。
    泣きだしそうな横顔が、同時に頭を過る。



    そう思ったら、胸が痛くて苦しくなった。
    だから清水さんの声すら耳に入らなくて。



    あれ‥その後は?



    思い出せない‥。



    変な空間。
    体が重いのに、浮いているような不思議な感覚で。
    閉じたままの瞼は持ち上がらない。



    なんだコレ。夢か?




    "Everytime I try to fly.

    I fall without my wings .I feel so small.

    I guess.
    I need you baby."


    〜♪



    耳に聞こえるのは。
    壊れたオルゴールのように、同じフレーズばかり。




    ‥夢だ。






    "飛ぼうとすれば、落ちてしまう。
    翼のない私は、ちっぽけに見える。

    あなたが必要なの、絶対。"




    だって亜紀の声が聞こえるから。





    "あなたが必要なの"





    今にも泣き出してしまいそうな亜紀の声が。






    (携帯)
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