ビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ



貴女の官能的なビアンエッセイやノベル
い〜っぱい投稿してくださいね♪

☆ サーバのトラブルで
☆ 最近のデータがなくなってしまいました
☆ 申し訳ありませんm(_ _)m

■ 登場人物は「女性のみ」でお願いします♪
■ 卑猥な日本語も使わないでくださいね。
■「新規作成」から新規投稿ができます。
■ 続きは新規ではなく子記事として投稿してください。
■ 当面 imgタグや、画像アップ機能も利用可能です♪
  著作権付きの画像、法律に触れる画像はダメですよ〜
■ 24時間以内に作成されたスレッドは New で表示されます。
■ 24時間以内に更新されたスレッドは UpDate で表示されます。

記事リスト ( )内の数字はレス数
Nomalペット 《プロローグ》(5) | Nomal17年たった今も愛しているよ♪(0) | Nomal愛と恋(仮題)(0) | Nomalサドとマゾ(仮題)(0) | Nomalノンケとオカマ(仮題)(0) | Nomal女子校奇譚(仮題)(4) | Nomalノンケとビアン(仮題)(2) | Nomal恋人募集(仮題)(1) | NomalSとM(仮題)(2) | Nomal先生と私(仮題)(2) | NomalYとK(仮題)(2) | Nomalアヤナミ1(14) | Nomal主婦まりえの憂鬱1(20) | Nomal宿題(35) | Nomal挿し木(2) | Nomal百合色のキャンパス(1) | Nomalすこしづつ…V-1(27) | Nomal すこしづつ…U(62) | Nomalどうして私は・・(8) | Nomal僕に彼女が出来たんだ。(8) | Nomal女社会1(22) | NomalNO TITLE(0) | Nomalバレンタインはどうなるる? 前編(1) | Nomal愛してる(0) | Nomalボクの愛する人(0) | NomalGLOOVE(2) | Nomal片想いの狼(2) | Nomal片思いの狼1(0) | Nomalすこしづつ…@(43) | Nomalみはるとサツキ1(6) | Nomal転校生A(10) | Nomal断捨離(2) | Nomal痴漢少女A(7) | Nomal青空のかなた(2) | Nomal窓際の彼女(17) | Nomalエステティシャンの恋1(10) | Nomalレン・アイ1(12) | Nomal僕の愛するヒト(25) | Nomalクリスマスの夜に1(2) | NomalTIME ∞ LAG - V -(68) | Nomalキモチクナイ1(10) | Nomal君のために(27) | Nomalノンケの彼女1(7) | Nomal愛〜蜜の味〜 (46) | Nomalキミ(17) | Nomal『泡沫の秘め事』(0) | Nomalギターを弾く女(3) | Nomal夜行バスの女(3) | Nomal走る女(0) | Nomal少女たちの物語(2) | Nomal再開(12) | Nomalだいすきなメル友(5) | Nomalアイヒト(2) | Nomalねえ、先生。(3) | Nomal天使の声(2) | Nomalお久しぶりです。(25) | Nomal初めての夜(1) | Nomal実際に見た夢の話(1) | Nomal甘い口づけ(16) | Nomal褐色の赤(10) | Nomalだいすきなメル友2(0) | Nomal叶わぬ恋(26) | Nomal続・ご褒美(12) | Nomal大嫌いな人1(0) | Nomal(削除)(6) | Nomal首元に三日月(2) | Nomalヤクソク(8) | Nomal青い空の白い雲 第一話(1) | Nomal純白の花嫁(12) | Nomal赤い糸(1)(4) | Nomal(削除)(32) | Nomal歳の差から生まれる心の距離はありますか?(50) | Nomal愛してるから、愛してるから、(1) | Nomal永遠の願い 1(1) | Nomal青春のすべて(1) | Nomalscene(2) | Nomal深海 1(1) | Nomalあの夏(5) | Nomal色恋沙汰(100) | Nomalリバな関係(4) | Nomal大切なひと(16) | Nomal紅い月(33) | Nomal恋に落ちて。。(11) | Nomal続・砂漠の花(26) | Nomalモー娘。小説(57) | Nomalキミに伝えたい(38) | NomalRuna&Emi(100) | Nomal相思相愛(50) | Nomalimage(30) | Nomalお題小説 7.3(94) | Nomal10年間 -プロローグ-(6) | Nomalりょうて りょうあし 白い花(13) | Nomalお題小説D(97) | Nomalお題小説 G(71) | NomalRuna&Emi PARTV(99) | Nomalくもりのち(18) | Nomal僕の居場所1(91) | Nomalfall(91) | NomalEverytime(100) | NomalCLUB ANGEL's T(101) |



■記事リスト / ▼下のスレッド
■21968 / 親記事)  『泡沫の秘め事』
□投稿者/ 真琴 一般♪(1回)-(2015/07/16(Thu) 17:32:38)


     「泡沫(うたかた)」とは、水面に浮かぶ泡つぶのことである。
    それは、はかなく消えやすいもののたとえ。自らの人生を恨み、
    悲しみ、それでも受け入れて前に向かって歩こうとする女たちのようでもある。


    1−1

     側面に青い帯を走らせた車両が、警笛を鳴らしてから徐々に加速する。
    日差しはすっかり沈んでいるように思えたが、それでもあたりはまだ明るい。
    肩まで出して、ホームの異常を警戒している車掌が目の前を加速しながら通り過ぎる。
    埃っぽい都会の、さほど大きくもない駅のホームに出た真琴は、
    過ぎ行く京浜東北線の車体を誘われるように眺め、最後部車両を見送る。
    過ぎ去っていく電車が巻き起こした風が真琴のグレーの巻きスカートを揺らす。
    ホームの中程には大きな時計がぶら下がり、分針を刻むのが見えた。
    諦めたように踵を返した真琴は、連絡通路の階段に向かう。
    ハイヒールの踵が薄汚れたホームを叩き、喧騒の中に乾いた音を響かせる。

     春が過ぎ、梅雨を迎えたばかりの東京は、その湿度を限界ギリギリまで高め、
    今にも目の高さから水滴をこぼしそうな重たい空気をたたえている。
    まとわりつくような空気をブラウス越しに押しのけながら、真琴は疲れた
    足を進める。
    視線の先には、事務的に開閉を繰り返し、人々を吐き出している自動改札。

     勤め先のある都心から乗ってきた車両を、特に意味もなく眺めていた真琴は、
    電車が吐き出した人の群れから少し遅れていた。
    今日も一日が終わった、と感慨にふける暇もなく、乗ってきた電車とは
    逆方向の都心へと向かう電車の接近を知らせるアナウンスが喚く。
    気が付くと脚が止まっていたことに気付き、再び諦めたように改札を出る。

     駅から歩いて5分ほどの線路沿いに、真琴が住むマンションがある。
    アパートと呼ぶべきでは、と思わせるその外観だが、それでもWマンションの名を
    冠している。京浜東北線のW駅は、その名の通り、埼玉県のW市に位置する。
    東京から荒川を渡ってまもなくの駅である。
    恐らく日本一小さな市として知られるW市は、どこか大都会の一角を占めている
    という自覚に欠けた下町風情を残している。
    真琴はこの街が好きだった。
    東京駅まで、3〜40分のこの地に真琴がここにマンションの一室を借りて
    住み始めて、半年が過ぎていた。

     今から半年ほど前、家族連れや恋人同士が、人々の羨ましそうな視線を
    全く意に介さず街をそぞろ歩くクリスマスの近づいた頃、真琴は恋人と別れた。
    振られたという自覚はある。
    しかし、現実が受け止められず、銀座の歩道に立ち尽くしてしまった。
    なんで、あんなことを言ってしまったんだろう。
    彼女の気持ちは本当は自分にあったんじゃないか。

     ああ、頭が混乱してきた。
    あれって、どこからあんな話になっちゃったんだろう。

引用返信/返信



■記事リスト / ▼下のスレッド / ▲上のスレッド
■21960 / 親記事)  ギターを弾く女
□投稿者/ いちこ 一般♪(5回)-(2015/06/28(Sun) 16:03:12)

    ケイコは、中小企業のOLだ。
    ケイコは落ち込んでいた。仕事でミスが
    重なり、上司にひどく叱られたのだ。
    仕事が終わり、帰りの途についても、
    まだ引きずっていた。
    改札を出て交差点の前で、信号が変わるのを
    待っていた。頭の上からは、電車がやかましく
    通り過ぎる音が降ってくる。
    この交差点を渡り、500mほど歩くとアパートに着く。
    「はぁ〜〜。」と溜息が漏れる。
    やがて信号が変わり、歩行者用信号が
    急き立てるように鳴り出した。
    周りの人たちが、ケイコを残して渡り出す。
    なんとなくこのまま帰りたくなかった。
    ケイコは踵を返し、駅裏へ歩き出した。
    別に呑みに行きたいわけじゃなかった。
    女ひとりで、居酒屋に入れるほどの根性はない。
    ただ、歩きたかった。でもすぐに後悔した。
    呑み屋の多い駅裏は、酔っぱらいも多かった。
    女ひとりは珍しいのか、ジロジロ見られた。
    いやだなぁ〜。
    前から運動部系の学生数人の酔っぱらいが来た。
    大きな声で笑ったり話したりしている。
    その内のひとりがケイコに気づき、
    隣りの仲間になにか喋った。
    思わず立ち止まり横道を探したが、なかった。
    彼らはあきらかにケイコを見ながら近づいてくる。
    逃げるように、すぐ横の木のドアを開けていた。
    そこは小さなライブハウスだった。
    これから始まるようで、ステージの前には
    数人の女の子達がいる。
    ネクタイをしたサラリーマン風のおじ様達もいた。
    ケイコはソルティードッグを注文して待った。
    やがてその人がギターを持って登場した。
    おんな?オトコ?
    前の女の子達が歓声をあげる。
    パラパラと拍手があった。
    黒髪に白いメッシュの入ったベリーショートヘアー。
    穴の空いたスリムジーンズ、よれたTシャツに革ジャン。
    その人はあいさつもせずに、ギターを弾きだした。

    いきなり音の洪水がケイコを包む。
    すごい‥‥音楽には詳しくないが、
    素人目に見ても凄さは感じた。
    とてもひとりで弾いているとは思えない。
    やがて激しい一曲目が終わり、一転して
    静かな曲が始まった。
    その時、その人と目が合った。
    ケイコの胸の奥でズキッと痛みが走った。
    弾きながらも、その人は目を逸らさない。
    ケイコも視線を外せなかった。
    そしてハスキーヴォイスで歌う。
    あっ!‥‥ギターの音とハスキーヴォイスが
    素肌に直接しみ込むような感覚があった。
    身体の中心が熱を持つのが感じた。
    ラブソングだ。
    英語なので歌詞は正確には解らないが
    ケイコはそう感じた。

    その人は圧倒的なテクニックで五曲ほど
    演奏して、やはり挨拶もなく、さっさと
    袖に隠れた。
    しばらく呆然としていたが、名前も解らないことに気づいた。
    店を出て、表のポスターを確かめると
    ライブスケジュールが貼りだしてあり、
    今日の欄に

    『アッシュ』

    とだけ書かれている。
    「女か男かわかんないじゃない!」
    思わずつぶやくと、背後にアルコールの
    臭気がした。
    いつの間にか、酔っぱらいのおじさん達がいた。
    「ねえちゃん、かわいいねぇ。これから
    一緒に呑まないかい?」
    「ごっ、ごめんなさい。待ち合わせしてるの。」
    「また、またぁ〜。‥‥いてっ!」
    おじさんを突き飛ばして、『アッシュ』がケイコの前に立った。
    「走るよ!」
    アッシュはケイコの手を取り、走り出した。
    アッシュの手は意外に小さく、
    とてもあんな演奏ができるとは思えなかった。
    踏切の高架下まで、一気に走った。

    ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥

    荒い息を整えながら、アッシュが言った。
    「僕、おんなだよ!」
    そして、強引にケイコを抱き寄せ、くちづけた。
    「えっ‥‥んん〜。」
    首すじにもキスをする。
    「あっ‥‥いやっ、やめて!」
    思わずケイコはアッシュを突き飛ばしていた。
    頭の上を電車が轟音とともに通り過ぎていく。
    ケイコは、逃げるように走って帰った。

    続く












引用返信/返信

▽[全レス3件(ResNo.1-3 表示)]
■21964 / ResNo.1)  ギターを弾く女2
□投稿者/ いちこ 一般♪(6回)-(2015/07/02(Thu) 23:25:27)

    アパートに戻っても、激しい動悸が続いていた。
    「どうしてあんな、あんなこと!」
    首すじが、熱い。
    用を足すためにトイレに入って、ケイコは愕然とした。
    あっ、まさかそんな?!
    下着を下ろしたら、ソコが糸を引くほど濡れていた。

    ケイコは『アッシュ』について調べてみた。

    超絶ギターテクの女性歌手であること。
    ケイコより2歳若いこと。
    デビューして2年経つが、ぱっとしないこと。
    音楽のジャンルはブルースであること。

    あまり情報がなく、この程度だった。
    ケイコは次の日、あのライブハウスにいた。
    自然と足が向いていた。今日も出演するはずだ。
    昨日と同じく激しい曲のあと、あのラブソングが始まった。
    ケイコはアッシュの視線を待った。
    しかしアッシュはちらっと見ただけで、
    すぐにギターに集中した。
    ケイコはひどく傷ついている自分に驚いた。
    バカみたい。これではまるで恋する乙女ではないか?
    自分より年下で、しかも女性なのに。
    ライブが終わっても、しばらく動けなかった。
    いい大人が、なにをしているのだろう?
    溜息をついて出口へ向かう。
    出口の横にアッシュがいた。
    腕組みをして壁にもたれていた。
    目を合わせないよう、出ようとしたら、
    アッシュに腕を掴まれた。驚いて振り向くと
    「昨日はごめん!お詫びに飯を奢るよ!」
    と言って、アッシュはさっさと歩き出した。
    一度も振り向かないアッシュに、少しむっとしながらも、
    ケイコは大人しく付いていった。
    アッシュは呑むと饒舌になった。
    自分のことを「カズミ」と名乗った。
    ケイコは思わず吹き出した。あまりにも
    イメージと違ったからだ。
    二人で自分の名前の不満を言い合った。
    そしてアッシュは唐突に、ケイコの目を見つめ、
    「ねぇ、一目惚れって信じる?」
    と欲望にギラついた目でケイコを見た。
    女の子に求愛されたのは、初めてだったが
    ケイコは舞い上がった。

    女の子の一人歩きは危ないからと、
    アッシュは年下のくせに言い張った。
    でも部屋に誘ったのは、ケイコだった。
    そして靴を脱ぐ前にケイコは抱きしめられ
    キスをされた。
    今度はもう抵抗しなかった。

    続く








引用返信/返信
■21965 / ResNo.2)  ギターを弾く女3
□投稿者/ いちこ 一般♪(7回)-(2015/07/05(Sun) 13:27:39)

    アッシュとのセックスは、オトコとのそれに似ていると
    ケイコは感じた。身勝手で傲慢だと。
    でも決定的に違うのは、相手が女だということ。
    当然 女の身体を知り尽くしている。
    アッシュはケイコを楽器のように扱った。
    アッシュは、キスをしながら器用にケイコを素裸にした。
    ベッドに押し倒すと、楽器をチューニングするように
    両手と口で身体中の性感帯を調べられた。
    それからおもむろにケイコという楽器の演奏を始める。
    ケイコはアッシュの望むまま、声を上げさせられ、
    ほとんど強制的に何度もイカされ、
    ケイコがもう許してと懇願しても、
    自分が満足するまでやめなかった。
    アッシュが自分のソコとケイコのソコを
    合わせて動き始めた時、ケイコは痙攣していた。
    身体中いたるところに、キスマークを付けられ、
    ビクンビクンと痙攣しているケイコの耳元に口を寄せ
    アッシュは
    「ありがとう。またね!」
    と言って出て行った。
    ケイコは起き上がることもできずに
    ドアの閉まる音を聞いていた。

    それからアッシュは、たびたびケイコのもとを訪れた。
    セックス以外は優しいので、ケイコは惹かれていった。
    やがて「カズ」「ケイ」と呼び合う仲になったが、
    ふたりの間でアッシュの音楽の話は禁句だった。
    素人は、黙っててほしいとはっきり言われた。
    アッシュにとっての聖域なのだ。

    そんなある日、アッシュは曲づくりに行き詰まり、
    モヤモヤを抱えたままケイコのもとを
    訪れた。
    ケイコはアッシュのために食事の準備をしているところだった。
    いきなりアッシュは襲いかかった。
    「いやっ、ねぇ‥‥しっ、食事をしてからに。」
    「イヤだ。まずケイを食べたい!」
    後ろから抱きしめて、首すじにキスをした。
    「だめっ‥‥やめて‥‥あぁ。」
    右手はたくみに乳首を探り当て、
    左手は下着の下に潜り込み、クリを探し出し、
    同時に摘んで引っ張った。
    「かはっ‥‥くぅ‥‥」
    こうなるとケイコはアッシュのなすがままだった。

    数十分後、ケイコはキッチンの床を大量の潮で濡らし、
    へたり込んでいた。
    ぼんやりと拭き掃除しなきゃとケイコは思っていた。
    「まだだよ!もっと食べたい!」
    アッシュはケイコをベッドに連れていき、
    身体中にキスの雨を降らせた。
    ケイコに抗う気力は残っていなかった。
    アッシュはケイコの身体中の水分を
    絞り尽くすように貪った。

    アッシュは満足すると、ケイコの作った食事に手もつけず、
    さっさと着替え、出て行こうとした。
    「カズ、待ってよ!」
    ケイコは重い身体を起こし、声を絞り出した。
    「えっ‥‥」
    驚いてアッシュが振り向くと、
    まだ少し痙攣している身体でヨロヨロと
    立ち上がろうとしてよろめくケイコ。
    慌てて手を出したアッシュに
    「触らないでっ!!」
    とヒステリックに叫んでいた。
    ケイコは怒ったいた。

    続く











引用返信/返信
■21966 / ResNo.3)  ギターを弾く女4
□投稿者/ いちこ 一般♪(8回)-(2015/07/11(Sat) 19:04:30)

    「カズは、あたしの身体だけなの?
    いい加減にしてよっ!」
    「そっ、そういうわけじゃ。」
    「だいたい、自分勝手なのよっ。
    見える所にキスマークつけないでって言ったよね。
    それに私だってカズに触りたいよ。愛したいよ‥‥、
    カズのライブだってそうだよ。」
    これ以上、言ってはダメとケイコの頭の中で警告音が鳴ってる。
    でも、もう止まらなかった。
    「自分の曲を、好きなように演奏して
    聴衆はおいてきぼりよ。カズの演奏は
    そりゃすごいよ。でも無理矢理なのよ。
    聴いている人のこと考えたことある?
    ないわよね。いつも挨拶もしないじゃない?
    あなたの演奏はマスターベーションよ。」
    言っているうちから、アッシュの顔が
    みるみる怒りに赤くなってゆく。
    アッシュが一歩踏み出した。
    「きゃっ」
    ケイコは思わず屈み込んだ。

    でもアッシュは黙って出て行った。

    それきりアッシュは消えてしまった。
    あれからケイコは、連絡の取れなくなった
    アッシュをあらゆる方法で探したが、
    見つからなかった。
    ケイコは、きっちり一週間泣き続けた。
    それから少しずつ笑顔を取り戻していった。
    カラ元気だったが、笑顔でいると何人かの男が言い寄ってきた。
    でもケイコは誰とも付き合う気はなかった。
    どうしても彼女のことを忘れることが
    できなかった。
    どうしても、どうしても、どうしても
    忘れることができなかった。

    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

    アッシュが居なくなって一年が経とうとしていた。
    ケイコには生きている実感がなかった。
    そんな時、ケイコの元に一枚のエアメールが届いた。
    差出人の欄には『Kazu』と書かれていた。
    ケイコは封を開ける前に泣き崩れてしまった。
    中にはSDカードとメモが一枚。
    メモには『PASSWORD Kei's birthday』と書かれていた。
    「覚えててくれたんだ。」
    ファイルを開いてみると、カズがアパートの一室で
    ぎこちない笑顔で写っている。
    『ケイ、元気ですか?突然居なくなってゴメンね。
    あの時言われた言葉、正直傷つきました。
    でも冷静になると、その通りだと思いました。
    そこで一からやり直すことにしたの。
    あれから単身、ギターだけ持ってニューヨークへ渡りました。
    別れの挨拶でケイのアパートまで行ったけど、
    ケイの顔を見たら、くじけそうだったから、黙ってきちゃった。
    まずストリートライブから始めたの。
    運も良かったと思うけど、今のブロデューサーと出会えて、
    そしてなんとこちらでデビューが決まりました。
    やったね!』とガッツポーズをしてる。
    『それで、◯月◯日の◯時着の便で
    ブロモーションのため日本に帰ります。
    もしも、もしもケイにステディがいなかったら、
    成田に来て欲しい。
    来なかったら、二度と連絡しません。
    ケイと愛し愛されるエッチがしたい。
    来てくれることを願ってます。』
    「ばかぁ、なに言ってるのよ!もう。心配したんだから!」
    顔を赤らめながら、泣き笑いするケイコだった。








完結!
引用返信/返信

■記事リスト / レス記事表示 → [親記事-3]



■記事リスト / ▼下のスレッド / ▲上のスレッド
■21943 / 親記事)  夜行バスの女
□投稿者/ いちこ 一般♪(2回)-(2015/06/20(Sat) 18:53:45)

    私はバス停で夜行バスを待っている。
    地元で大手建設会社に就職でき、
    東京本社での研修に参加するためだ。
    近くのイタリアンレストランから、
    ニンニクの焼ける香りが漂ってくる。
    前のおじさんからはかすかにタバコの匂いもする。
    自分は匂いに敏感な方だと思う。

    バスに乗り込み、一番後ろの窓際席
    何と無く、後ろの視線が気になるのだ。
    隣におじさんが来ませんように。
    目を閉じ、真剣に祈った。
    と、カツコツというパンプスの音とともに
    バラの香りが漂って来た。
    見るとあまりにも場違いな女性が入って来た。
    年の頃は二十歳前後、肩までのブロンドの髪に、
    白い肌、青い瞳にバラのくちびる。
    180cmくらいの長身に抜群のプロポーション。
    まるでファッション雑誌から抜け出た
    ような外人の女性だ。
    みんなが思わず振り返って見ている。
    その人が真っ直ぐ私に向かってきた。
    ふわっと私の隣りに腰掛けた。
    同時にバラの香りに包まれた。
    すごくドキドキした。
    その人は難しい顔をして前を見ている。
    声を掛けるかどうか迷った。
    実は英語が苦手なのだ。
    「ハ、ハロー。」
    「★*○・#$\*」
    さっぱり解らない。私は曖昧な笑顔を
    浮かべ、真っ赤になってうつむいた。
    その人はそれきり何も言わず、また
    難しい顔をした。

    恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。

    やがて車内が暗くなったので、シートを
    倒して、さっさと寝ることにした。

    エッチな夢を見た。
    バラ園の花壇で、素裸でオナニーする夢。
    花壇の中にM字開脚で座り、左手は
    おっぱいを揉み、右手は割れ目をなぞる。
    ソコは恥ずかしいくらい濡れて‥‥
    バラの香りの中、声を押し殺していたが
    だんだん抑えられなくなり、とうとう、
    「アァッ!」
    自分の声に驚き、目を見開いた。

    自分の姿に驚いた。なんとニットのセーターと
    ブラがずり上がり、おっぱいが丸見えに
    なっている。
    そしてスカートも捲れ、股間には手が!

    えっ、えっ、なに、なに?!

    パニクるわたしの口を、きれいな白い手が塞ぐ。
    瞬間、バラの香りが強くなる。
    ブロンドの彼女が、周りを見て人差し指を
    口の前に立て、にっこりと微笑む。
    コクコクと返事をする私。
    それを同意と取られたのか、口を塞がれたまま、
    乳首をそのバラのくちびるで甘噛みされた。
    「! ! んんん〜」
    そのまま舌先で転がされる。
    別の手が、ショーツの中に潜り込む。
    ソコは濡れそぼってビチャビチャと
    音を立てた。

    続く








引用返信/返信

▽[全レス3件(ResNo.1-3 表示)]
■21946 / ResNo.1)  :夜行バスの女2
□投稿者/ いちこ 一般♪(3回)-(2015/06/21(Sun) 17:28:56)

    彼女の白い指が私のクリに触れるたび、
    ビクン、ビクンと反応してしまう。
    息苦しくなってきたら、彼女は口の手を
    緩めて指を入れてきた。
    器用に私の舌を摘まむと引き出す。
    ハァ‥ハァ‥ハァ‥
    そしてバラのくちびるで、私の舌を吸い上げた。
    チユバッ、チユバッと音がする。
    彼女の手が私のショーツに掛かったとき、
    脱がせやすいように自分から腰を上げてしまった。
    私は天使に魅入られ、愛されている
    ように感じていた。
    それほど彼女の美しい顔とバラの香りに酔っていた。
    だから、彼女の指が私の中に入ってきたとき、
    当然のように受け入れようと思った。
    でも‥‥痛かった‥‥
    「いっ、いたっ!」
    彼女は慌てて私の口を塞いだ。
    でもその時、バスにブレーキが掛かって
    私の体が前に持っていかれた。
    一気に深く貫かれた。
    「!!!!!んんん〜!」
    涙が溢れる。痛い。痛い。痛い。
    彼女はちょっと驚いたようだったが、
    中の指はそのまま、優しくキスをして
    少しずつほぐすように愛撫を再開した。
    おっぱいをやさしく揉み、乳首を舐める。
    中の指をゆっくり動かしながら、クリを
    やさしくタイピングする。
    なにより私を興奮させたのは、彼女が
    私の指を自分のソコに入れたことだった。
    ソコは熱く溶けて、別の生き物のようだ。
    私は稚拙ながらも必死に動かした。
    彼女の抑えたあえぎ声で私も濡れた。
    やがて自分なのか彼女なのかお互いの
    吐息が混ざり合い、自分が動かしているのか
    彼女なのか分からなくなり、
    私は体をビクンビクンと痙攣させイッた。
    彼女がイッたのかは分からなかった。
    それから泥のように眠った。

    朝、起きると服装はきちんと直されており、
    まるでなにもなかったかのようだ。
    しかし、アソコの違和感としっかり彼女と
    繋がれた手が夜のことを思い出させた。
    お互い何も話せないままバスを降り、
    別れ際、彼女は私の頬に軽くキスをして、
    「ほな、お達者で!」と言った。

    えっ、えっ、え〜?!

    驚いている私の手に手紙を残し、
    彼女は雑踏の中に消えていった。

    私は手紙を開いて読んだ。

    続く




引用返信/返信
■21955 / ResNo.2)  夜行バスの女3
□投稿者/ いちこ 一般♪(4回)-(2015/06/27(Sat) 07:11:14)

    それから数ヶ月があっと言う間に過ぎた。
    新しい環境に慣れるのと、仕事を覚える
    ので忙しかった。
    時々、お局さまの攻撃にあい、ヘコむことはあったが、
    基本的には楽しい職場だった。
    どんどん日々は過ぎていくのに、
    私は彼女を忘れることができなかった。
    一度会っただけで、連絡先も分からない。
    たぶんもう会えないであろう相手なのに。

    ほどなくして、私は香水を買った。
    バラの香りの。
    どうしようもなく淋しくなると、
    バラの香りを手に付け自分の口を塞ぐ。
    そうするとあの時のことが蘇り、
    自慰にふけってしまうのだ。

    一年ほど経ったある日、私は彼女を発見した。
    彼女はテレビの中にいた。
    英語が全くできないくせに、コテコテの関西弁を話す外人さん、
    しかもモデル並みの美貌ということでウケていた。
    大爆笑の音声の中、私は涙を流してた。

    私は彼女にファンレターを書くことにした。
    彼女から貰った手紙の文面をそのままに。

    『おおきに!ほんでごめん!!
    話されへんふりしたんは、緊張でパニクっていたからや。
    実はこれからオーディションがあるんや。
    そんでも、あんたのおかげでだいぶ
    リラックスできたわ。
    ほんまに感謝してるわ!ほんまはまた
    会いたいけど、あんたの大切なもん
    奪ってもうて、責任感じて会われへん。
    けど会いたい‥‥ごめん!忘れて!
    ほな、元気で!』

    彼女は気づくだろうか?

    数日が経ち、彼女から返事が来た。
    『LOVE』と、ひとこと。
    その下に Eメールアドレスが一行。

    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

    そして私は夜行バスを待っている。
    せっかく就職できた会社も辞め、
    アパートも引き払い、単身 上京し
    彼女のマネージャーになるつもりだ。
    近くのイタリアンレストランから、
    ニンニクの焼ける香りが漂ってくる。
    私の身体からはバラの香りが漂う。
    バスに乗り込むと一番後ろの席に
    高卒くらいの女の子が座っている。
    私は迷うことなく彼女の隣りに座った。
    きっと彼女はバラの香りに包まれているだろう。



完結!
引用返信/返信
■21963 / ResNo.3)  感想
□投稿者/ 奈々 一般♪(2回)-(2015/06/29(Mon) 12:24:01)
    どきどき・・・
    とっても興奮しました^^
完結!
引用返信/返信

■記事リスト / レス記事表示 → [親記事-3]



■記事リスト / ▼下のスレッド / ▲上のスレッド
■21938 / 親記事)  走る女
□投稿者/ いちこ 一般♪(1回)-(2015/06/17(Wed) 22:18:33)

    私は走るのが好きだ。
    夜の街を走るのが好きだ。
    走っている時は、嫌な事も忘れられる。

    ‥‥嫌な事‥‥

    そう、最近パートナーと別れたのだ。
    あの娘がバイなのは、知っていた。
    でもよりによって、男に奪われるとは。

    走っていると、嬉しい事もある。
    それはユイだ。
    彼女から声を掛けてきた。
    折り返し地点の公園でストレッチをしていたら、
    目の端にピンク色の物体が、向かってくるのが見えた。
    良く見ると、150cmくらいのダイナマイト
    ボディーの女が走ってくる。
    大きな胸がユサユサ揺れる。
    ‥‥オイオイ、その胸は犯罪だぞ‥‥
    目の前にまで来ると、息を切らして
    「おネェさん、めっちゃ速いやん。
    オリンピックの選手なん?」
    そう言ってニコッと笑った。
    ‥‥うわっ、ヤバイ。心を鷲掴みされた‥‥
    「いえいえ、ただのOLですよ。昔、
    陸上部だったんですよ。」
    「ふ〜ん、だからそないにペターンと
    してスレンダーなんや。」
    ‥‥オイオイ、ペターンは、ひどいぞ。論点変わっているし‥‥
    「あっ、うちはユイゆうねん。おネェさんは?」
    「わたしはナオです。」
    「なぁ、一緒に走ってくれへん!うち いまダイエットしてんねん。」
    「いいですよ。」
    「ほな、行くで!」
    と、勢い良く走りだした。
    ‥‥えっ、いまかよ!‥‥
    私はマイペースで走り出す。
    ユイの始めの勢いは、すぐに遅くなり
    追いついた。
    「ほら、頑張ってください。痩せられませんよ。」
    「え〜、いけずやなぁ。ちょっと歩く〜。」
    「仕方ないですね。付き合います。」
    ‥‥鷲掴みされた弱味だ‥‥
    「あ〜、こないやったらダンナに
    嫌われるわ〜。」
    ‥‥ガクッ。人妻かよ。‥‥

    それから何回か一緒に走り、仲良くなり
    ユイのことが色々分かった。
    結婚して一年半だということ。
    ダンナの帰りがいつも遅く、時間を持て余し
    ダイエットも兼ねて走り始めたこと。
    休日もダンナは友達優先で、あまり家に
    いないこと。
    ダンナの会社の異動で関西から引越してきたこと。
    こっちではまだ友達が少ないこと。
    などなど‥‥

    ある日ユイが、ダンナが出張で3日いないとこぼした。
    軽い気持ちで誘った。
    「良かったら、泊まりに来る?」
    ‥‥下心はないよ。少ししか。‥‥
    「ほんま〜、うれしいわ〜。」
    ピョンピョン飛び跳ねた。
    ‥‥うわっ、だから胸がヤバイって‥‥
    二人でコンビニに寄り、ワインとチーズを買って帰った。
    自分が先にシャワーを浴び、
    ユイがシャワーを浴びている間に、
    リビングのローテーブルにグラスとワインとチーズを並べる。
    「あ〜、サッパリしたわ〜。」
    ユイが頭にタオルを巻き、Tシャツと
    スウェットパンツで現れた
    ‥‥えっ、ノーブラですか?ポッチが
    見えてますよ!‥‥

    主にユイのダンナの愚痴を聞いてやる。
    そこで、新事実発覚!
    ここ半年くらいセックスレスらしい。
    「こないなええ体してるのに〜。」
    と自分の胸を両手で持ち上げる。
    ‥‥うわっ、どれだけ誘惑するの?‥‥
    「ところでナオはどうなん?」
    「はっ?なにが?」
    「エッチに決まってるやん!」
    わたしは最近、別れたことを告白した。
    「他に好きな人ができたって言われた。」
    「え〜、ひどいやん、その男。かわいそうナオ。」
    ‥‥男じゃなくて女ですけどね。‥‥
    ユイが涙ぐむので、慌てた。
    かわいそう、かわいそうと泣きだした。
    困っていたら静かになった。
    寝ていた。
    ‥‥かわいいヒト‥‥
    タオルケットを掛けてやる。
    無防備に寝ているユイのぽってりとした
    半開きのくちびるに吸い寄せられた。
    ‥‥酔っ払ってるから大丈夫よね‥‥
    軽くついばむようにキスをする。
    と、突然ユイの手が私の後頭部にまわり、
    熱烈なキスをしてきた。
    片手はわたしの股間を探るように動く。
    そして突然動きを止めた。
    「あれっ、ない!」
    ユイが叫ぶ。
    ‥‥誰と間違えたの?私には付いてないから‥‥
    「ご、ごめんやで。」
    私は軽い嫉妬を覚え、意地悪したくなった。
    ユイの耳元でささやいた。
    「だめ、もう火がついて止まらない。」
    ユイはガバッと起き上がり、私を見つめ、言った。
    「ええよ!ナオなら。
    ナオがうちのこと、
    エッチな目で見てんの知ってたし!」
    ‥‥あちゃー、バレてたか。‥‥

    それからのユイは、奔放で貪欲だった。
    もっと、もっとと何回でも求めてきた。
    私も求められるまま、何回でも応じた。

    翌朝、トーストの焼ける匂いとコーヒーの香りで目が醒めた。
    起きてキッチンに行くとユイが朝食を作っている。
    ‥‥オイオイ朝から裸エプロン?!‥‥
    「あっ、おはよー。」
    ユイが包丁を持ったまま近づいてくる。
    思わず後ずさると、目を閉じて唇を突き出す。
    チュッとキスをしてやると、
    「うち、決心した!」
    ビシッと包丁で私を指すと、
    「ナオのお嫁さんになるっ!
    あんなダンナとは別れたるわ。」
    そして、とどめに悩殺笑顔だ。
    ‥‥あたたたっ、コ、コイツは!‥‥
    包丁をよけつつ、ギューとハグした。
    「くっ、くるじい〜。」
    「うるさいっ、我慢せい!」
    不覚にも、ウルッとした自分を見せたくなかった。
    やがて私の右手はユイのお尻から、
    その中心へと伸びていった。






引用返信/返信



■記事リスト / ▲上のスレッド
■21891 / 親記事)  少女たちの物語
□投稿者/ 無花果 一般♪(1回)-(2015/04/08(Wed) 09:50:40)


    少女たちの物語(1) 「水槽の魚とミルクティー」










    透明な水槽に入れられた魚は、死ぬまで水槽の外には出る事が出来ない。
    ただ、他の数匹の魚と水中に揺らめく人工の草と一緒に生きて死ぬ。
    もしかしたらそこには、他に灰色の砂利が沈んでいるかもしれない。
    水は汚いかもしれないし、自分以外の魚は生きていないかもしれない。
    何であれ、狭い世界に生きて、狭い世界の中で死んでいくのだ。
    空の広さも地上の広さも海の広さも知らないまま、その生涯を終える。





    ぽちゃん、と音を立てて紅茶に垂直に飛び込んだ砂糖が沈んでいく。
    立て続けに3個がダイブし、少しだけ角が崩れ、溶け込んでいく。
    私は銀の細いスプーンでぐるぐると紅茶をかき回し、紅茶の渦を作る。
    2、3回混ぜた後、スプーンの裏で固形の砂糖を押し潰した。
    ぐしゃり、と形を崩し、ティーカップの底に沈殿する小さな粒たち。
    その粒も銀色の楕円にかき乱され、紅茶に溶け込んでいく。
    砂糖は少しずつ姿を消していき、最後には1粒も残らず消えていった。


    「はい、」


    角砂糖を3個入れた以外には、レモンもミルクも何も入れていない紅茶。
    そんな甘めの茶色いだけの紅茶を、彼女はとても好んで飲む。


    「・・・・ありがとう」


    分厚い書物を読みふけっていた彼女は顔を上げ、銀色の眼鏡を外した。
    眼鏡の銀色の細いフレームと、あまり日焼けをしていない色白の肌。
    それらのコントラストはとても綺麗で、私の視線を釘付けにする。
    その白い指が白い陶器のティーカップに絡まり、空中に持ち上げる。
    彼女の指と同じく白い喉が上下に動き、液体は彼女の体内へと吸収される。
    彼女自らの意志で彼女の体内に取り込まれる紅茶が、心底羨ましい。
    私だって彼女の体内に吸い込まれて吸収されて、彼女の一部になりたい。






    私も、水槽の中で生きる魚のように、彼女の中で生きる魚になりたい。



引用返信/返信

▽[全レス2件(ResNo.1-2 表示)]
■21892 / ResNo.1)  少女たちの物語
□投稿者/ 無花果 一般♪(2回)-(2015/04/08(Wed) 10:07:35)


    少女たちの物語(2)「付喪神」










    いつのことであったか、ひとりの少女はその短い生涯の中で恋をした。
    彼女の名前も何も知らない、ただ自分を使い捨てるだけの存在に恋をした。




    彼女はまだ高校生になりたての若き少女で、青春真っ只中の時期の女の子だった。
    本当は黒いはずの髪は明るい金色に染められ、濃いめのメイクが顔を彩る子。
    制服のスカートは短く、いつもだるそうに退屈そうに時間を過ごしている。
    それでも少女は知っていた、その瞳の中には寂しさと諦めがあることを。
    本当は誰か頼れる人が、傍に居てくれる人が欲しいと少女が願っていたことを。
    少女は、自分がその女の子の願いを叶えてやることができないことも知っていた。
    だから少女は願った、誰かが彼女の本当の気持ちに気が付きますようにと。
    毎日毎日、太陽にも星にも月にも雲にも何にでも祈りの気持ちを捧げ続けた。




    最近の彼女は機嫌がいい、分かりづらいが前よりも少し表情が明るくなった。
    一見無表情で無愛想に見える彼女の隣には、知らない女の子が笑って立っている。
    明るい彼女は少女の願いを聞き入れ、そして叶えてくれたいわば恩人である。
    孤独な少女の寂しさも、諦めも、微かな表情も、全部を包み込める「おともだち」。
    自分がなりたくてもなれなかった、彼女の理解者、彼女の支え、彼女の恩人。
    毎日願った必死の願いが聞き入れられたというのに、少女は素直に喜べなかった。
    本当は自分があそこに立ちたかった、本当は自分の方が先に彼女の魅力に気が付いたのに。
    願いが聞き入れられたのにも関わらず、無邪気な救世主である彼女の存在を憎んだ。




    だからだろうか、せっかくの彼女の恩人を憎むような真似をしたからであろうか。
    遂に少女は大好きな彼女の元を離れる時、すなわち別れの時がやってきてしまった。
    彼女はひどく辛そうな顔で少女の身体を持ち上げ抱き締め、そして手放した。


    「さよなら、どうか貴女が幸せであらんことを」




    次の日、彼女のお気に入りのぼろぼろになった筆箱は、炎に消えた。



引用返信/返信
■21893 / ResNo.2)  少女たちの物語
□投稿者/ 無花果 一般♪(3回)-(2015/04/08(Wed) 10:26:32)


    少女たちの物語(3)「独占欲」










    義理の母は今日も私を殴る、殴って殴って殴って、この身体を痛めつける。
    ほんとうのおかあさんの妹である彼女は、私のことが心底嫌いなのだろうか。
    何年も前から服で隠れるような場所を殴って抓って蹴って傷をつける。
    だから先生も友達もみんな傷のことは知らない、義理の父は帰ってこない。




    義理の母は言う、私の娘でありたいならば完璧な人間になりなさい、と。
    とうの自分は完全ではない癖に、私に対しては常に完璧を求め続ける。
    成績も一番、運動も一番、クラスの人気者で先生にも信頼される女の子。
    それが私が被り続ける仮面であり、私が掲げ続ける努力の結晶だ。
    周りの人間も私のことを完璧だと感心し、褒めたたえ、頼りにする。
    それでも義理の母は私のことを認めてはくれないし、見てもくれなかった。
    もとより私のことを義理の娘とすら思う気持ちが微塵もないのだから。




    今日も義理の母は帰宅した私を呼び出し、制服姿のままの私を痛めつける。
    拳で殴って、手のひらで叩いて、勢いをつけた足で殴って、そして床に転がす。
    近所の人にばれないように口にはガムテープを貼って、私の全ての声を奪う。
    そして自分の気が済むまで私のことを痛めつけた後、放置という名の解放。
    私は自分の部屋で傷の確認と手当てをして、毎日毎日それの繰り返し。




    本当はこのどこか狂った人に抗う術も、この人から離れる方法も知っている。
    だって私は賢い子、勉強も運動もできて性格もいい完璧な子なんだもの。
    それでも私はそれをしない、この痛みから抜け出す方法はずっと使わない。
    それは私がこの人に義理でもいいから娘だと認めてもらいたいからじゃない。
    この人に一度でもいいから褒めて欲しい、私のことを見て欲しいわけでもない。
    実の姉に恋をしてその姉を亡くしてその姉の娘である私に恋をしたこの人に。
    私が寝ている真夜中に、私の部屋の中でひとり淫らに乱れるこの人に。
    寝た私の身体を使って自分の欲を発散し、日中は暴力を振るうこの人に。
    本当は私の気持ちも部屋にある隠しカメラも盗聴器も全て把握しているこの人に。




    おかあさんごめんなさい、私は悪い子です、なんて思ってもいないけど。


引用返信/返信

■記事リスト / レス記事表示 → [親記事-2]






Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -