■20801 / ResNo.16) |
二つの願い 13
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□投稿者/ 槇 一般♪(16回)-(2008/04/21(Mon) 02:02:32)
| 『別れる事が分かってる恋愛なんて恋愛じゃない』
那智にはそう言われた。私も綾子に出会うまではそう思っていた。 既婚者との恋愛はいつか終わりがくるに決まってる。結婚している人はいつか必ず家庭を選ぶだろうから…。 だから私は絶対に既婚者とは恋愛はしない
綾子と出会ったのは、4年前。 那智の古い友人がバーを開いたということで、初めてその店に連れて行かれた時だった。 那智は顔が広いから色んな顔見知りがいて、その中の一人が綾子だった。
私は初めて会った人に気さくに話し掛けるという芸当はできない人間だったから、綾子と一緒に飲んでいた人たちと合流しようという話になった時、正直、「参ったなあ」なんて思っていた。
5,6人でわいわいと騒いでいても、私はその輪にいまいち入りきれずに、楽しそうに笑っている那智を眺めながら飲んでいた。 気がつくと、人の輪から完全に外れてしまったはずの私の隣には綾子が座っていた。 仕事以外の場で、初対面の人と話すのが苦手な私が、彼女には古くからの友人のように話していた。
話の内容は覚えていない。多分、テレビ番組とか最近見た映画とか子供の頃流行ったモノだとか、つまらない内容だったと思う。そんなくだらない話で私たちは盛り上がり、いつしかグループから離れ、二人で飲んでいた。
出会った夜はそれだけだった。 ものすごく気の合う人に出会った。 ただそれだけ。いい友人ができた。 それで十分だった。
綾子との再会はものすごく早かった。
綾子は出会った夜の次の日、お客として私の前に現れた。驚く私を鏡越しに見て、してやったりと満足そうに笑っていた。
それからは月に一回、店にやってきて私を指名した。私たちはどんどん仲良くなっていき、プライベートでも頻繁に会うようになっていた。
ある日、ひょんなことから、綾子とよく遊んでいることを那智に話した。 那智は、渋い顔をして言った。
「綾子は結婚してるから止めときなよ。嫌でしょ?そういうの。」
私は「そんなんじゃない」とすぐに否定した。 でも那智は勘がいいから、すぐに分かったんだろう。
私自身よりも早く…
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