□投稿者/ KEI 一般♪(1回)-(2016/03/29(Tue) 16:37:24)
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彼女はいつも窓際に座っていた。
本を開いたかと思うと、ゆっくり顔を上げて窓の外を眺める。
瞬きをする横顔さえも美しい。
僕は彼女に見惚れた。
彼女を初めて見たのは半年前。
高校の課題で自分が一番好きな本を紹介するというものがあった。
僕は、ズラズラと文字が統一間隔に並ぶ本が嫌いだった。
どうしようかと悩んでいたら、ふと、子どもの頃母さんに読んでもらった絵本を思い出した。
絵本も本には違いないと思い、僕は学校の図書室を隅から隅まで探したが、僕が探している絵本は見つからなかった。
そこで僕は学校近くの図書館へと足を運んだ。
図書館なんて来たことなかった。
縁もなかったし。
図書館に入り、探してみるとものの5分で見つかった。
好きだった絵本だが、どんな話だったか忘れた僕は1度読んでみることにした。
この図書館はとても広く、椅子に座って読むスペースも沢山あった。
僕は窓から少し離れた席に座って絵本を読んだ。
『大きなきは きらめき 花はまるで ほうせきのようだった。エミリーは 花をひとつ つみとると たいせつにかかえて ママのもとへと かけよった。ママはエミリーの あたまを なでながら……』
絵本は僕が子どもの頃に読んだときのままだった。
絵本を読み終え周りに迷惑をかけないように小さく伸びをした。
窓の外は薄暗くなり始めていた。
「……」
沈み行く夕日によって光輝く一人の女の子がいた。
窓際の彼女は本を開いたまま、窓の外を眺めていた。
とても美しかった。
彼女は外を眺めるばかりで、時折存在に気づいたかのように本に目をやり一時間に一ページという遅さで本を読んでいた。
〜♪ 本日はご来館頂きありがとうございます。間もなく19時になりますので閉館します〜
閉館の放送が流れた。
気づけば僕は二時間半も図書館にいた。
そしてそのほとんどの時間、窓際の彼女を見ていた。
放送が流れると彼女は本を閉じ、本棚へと戻しに行った。
凛とした佇まい、長い髪はサラサラとして歩くたびに揺れ動いた。
バッグを肩に掛け、本を戻すときに背伸びをした。
背伸びをした彼女の足は細く、長く、上品だった。
そして彼女は出口へと向かい振り向いた。
きれいに整えられた前髪はふわふわと上下に揺れ、大きな瞳はどこか寂しげに見えた。
リップを塗っているのかもしれないが、ぷっくらとした唇はキラキラと潤い、鼻筋が通った小さな顔をしていた。
「美しい」
いつしか僕は心の声を抑えることができずにそう言葉にしていた。
一目惚れだった。
続く
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