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■21109 / 親記事)  私の転校生@
□投稿者/ 牧 一般♪(1回)-(2008/09/19(Fri) 02:43:51)
    真奈美は、最近マンネリだ。

    希望を持って地方都市の女子高の教師になって4年、

    毎日がわくわくすることなんてなんにもなかった。

    学生時代、恋人はいた。もちろん女性、年下だった。

    体育会系の真奈美は、下級生によくもてた。

    自分で言うのもなんだけれど、真面目な性格だ。正義感が強い。

    女子高の教職の道を選んだとき、女性との恋愛関係は封印した。

    学校では、生活指導担当の厳しい融通の利かない きらわれものだ。

    結婚願望ももてない、私生活も砂漠のような日々だった。

    そんなある日、理事長室に呼ばれた。

    部屋には、少年のようなショートカットの生徒が座っていた。

    背が高い、真奈美自身も女性としては高いほうだが、

    座っていても真奈美より10センチ以上背が高いことはわかる。

    無表情で、入室した真奈美にあいさつもない。

    「この子って、転校生・・・」

    と思ったとき

    理事長がようやくニコニコしながら紹介した。

    「牧 紗江さん、転校生よ」

    ははーん・・・ようやくわかった。

    普通の転校生じゃ、理事長室から担任を呼びつけるようなことしない。

    「学校の特待生ってわけね。」

    この学校では、社会貢献の一環として年間数人の特待生制度がある。

    なんらかの不遇の身におかれている生徒を迎えている。

    この子は、幼児期の体験で失語症になったという。

    「成績優秀なのよ、真奈美先生お願いね。」


    それにしても無愛想な子だわ、

    すねたような、横顔、何を考えているのか計れない、

    といきなり膝のうえに長い手がのせられた。

    「えっ」

    その時、ようやくこちらを見て、にっこり。

    「まあ、可愛い子」

    思わず、どぎまぎしてしまう。

    理事長からちょうど死角のデスクの下で、

    牧 紗江のそのしなやかな手が膝からふとももに移動していた。

    真奈美は、その手を払うことなく紗江の横顔にただ見とれていた。





引用返信/返信

▽[全レス4件(ResNo.1-4 表示)]
■21110 / ResNo.1)  Re[1]: 私の転校生A
□投稿者/ 牧 一般♪(2回)-(2008/09/19(Fri) 02:48:16)
    牧 紗江 15歳、両親は幼くして離婚し生活能力のない母親は、

    紗江を施設に預け消息を絶った。それ以来、言葉を発しなくなった。

    真奈美が理事長に命じられたことは、社会性を身につけさせることと、

    親代わりになって相談相手になること。

    実は、真奈美自身、両親を早く失い親戚に預けられて育った身の上だ。



    登校初日、6時限目が終わり、生徒の帰った教室で、紗江と真奈美は、

    2人きりで向かいあって数学の補修をしていた。

    この学校の進度に合わせなくてはならない。

    「あなたも、早くこの高校に慣れてね、私もできるだけ協力するから」

    また、あの無愛想な顔だ。不安になる。

    紗江の横に椅子を並べて教科書を開く。

    何を考えているのかわからない・・・・・

    「お願いね、先生も一生懸命あなたのためにがんばるわ」


    その時、すっと手が伸びたと思うと、真奈美のふとももにのせられた。

    「あらこの子、甘えているんだわ」

    気にしないことににして、数学の定理の解き方を丁寧に教える。

    「きゃっ・・・」

    いつの間にか太ももの付け根まで指が這ってきている、

    すっと穿くように下腹を触られた。

    「やめて・・・」声はか細いものだった。

    どうしてもその手をはらうことができない。

    するとあの美しい笑顔でじっと見つめられる。

    10歳以上年下の少女の瞳に抵抗を封じられる。

    普段、堅物といわれ嫌われ役の生活指導主任。

    私は、これからどうなるの真奈美は震えた。



    ゆっくり立ち上がった。モデル体系の長身だ。

    この子は、言葉でなく瞳で私に何かを伝える。

    私もあやつられるようにふらふら立ち上がった。

    あのやさしいほほえみで、担任の私を見下ろす。

    「その瞳、で見つめるのやめて」

    心の中で、叫ぶ・・・

    そっと、両手でブラウスの上から細い指先が胸を包み込むように触る。

    いつの間にか、足の震えが止まらない。

    無言の息遣いだけがあたりにひろがる。

引用返信/返信
■21111 / ResNo.2)  Re[1]: 私の転校生B
□投稿者/ 牧 一般♪(3回)-(2008/09/20(Sat) 13:18:01)
    牧 紗江 15歳、両親は幼くして離婚し生活能力のない母親は、

    紗江を施設に預け消息を絶った。それ以来、言葉を発しなくなった。

    真奈美が理事長に命じられたことは、社会性を身につけさせることと、親代わりに

    なって相談相手になるること。

    実は、真奈美自身、両親を早く失い親戚に預けられて育った身の上だ。

    登校初日、6時限目が終わり、生徒の帰った教室で、紗江と真奈美は、

    向かいあって数学の補修をしていた。

    この学校の進度に合わせなくてはならない。

    「あなたも、早くこの高校に慣れてね、私もできるだけ協力するから」

    また、あの無愛想な顔だ。不安になる。

    紗江の横に椅子を並べて教科書を開く。

    何を考えているのかわからない・・・・・

    「お願いね、先生も一生懸命あなたのためにがんばるわ」

    その時、すっと手が伸びたと思うと、真奈美のふとももにのせられた。

    「あらこの子、甘えているんだわ」

    気にしないことににして、数学の定理の解き方を丁寧に教える。

    「きゃっ・・・」

    いつの間にか太ももの付け根まで指が這ってきている、

    すっと穿くように下腹を触られた。

    「やめて・・・」声はか細いものだった。

    どうしてもその手をはらうことができない。

    するとあの美しい笑顔でじっと見つめられる。

    10歳以上年下の少女の瞳に抵抗を封じられる。

    普段、堅物といわれ嫌われ役の生活指導主任。

    私は、これからどうなるの真奈美は震えた。

    ゆっくり立ち上がった。モデル体系の長身だ。

    この子は、言葉でなく瞳で私に何かを伝える。

    私もあやつられるようにふらふら立ち上がった。

    あのやさしいほほえみで、担任の私を見下ろす。

    「その瞳、で見つめるのやめて」

    心の中で、叫ぶ・・・


引用返信/返信
■21112 / ResNo.3)  Re[1]: 私の転校生C
□投稿者/ 牧 一般♪(4回)-(2008/09/20(Sat) 13:21:08)
    そっと、両手でブラウスの上から細い指先が胸を包み込むように触る。

    足の震えが止まらない。

    無言の息遣いだけがあたりにひろがる。

    「あの後どうなったんだっけ?」

    紗江との補習授業の途中から記憶がはっきりしない

    「あの子の目力に支配されている」

    紗江の瞳にあやつられるように、

    立ち上がり真奈美の胸をやさしく触られた。

    学生時代、恋人から形がよいとほめられたちょっと自慢の胸。

    その後、くちびるが近づいてきた、目を閉じるとスッと離れてしまった。

    「あの時私は、なにを期待したのか」

    自己嫌悪になる。

    その後どうして、自宅へ帰ったのかよく思い出せない。

    家に帰るとすぐに、下着を替えシャワーを浴びた。

    耐えられないほどびっしょりになっていたのだ。

    翌日は、中間試験だった。

    テスト用紙を配りながらも、一番後ろの席の紗江が気になる。

    相変わらず、無愛想な顔をしているのだが。

    試験開始後、20分くらいたった時、

    視線を感じて生徒のほうを見ると、紗江のあの瞳だった。

    「何かしら」

    吸い寄せられるように、紗江の机の横に行く。

    すると顔は、テスト用紙におとしたまま、

    スッと指先が伸びると、いきなり真奈美のスカートの中に

    侵入してきた。

    「えっ、困るわ」

    でもさからえない。

    おしりの方からの侵入者は、さわさわと真奈美のゆたかなおしりを這い回り、

    やさしく前に回りこみ花園のあたりまできている。

    「どうしよう、止めないといけないわ」

    その時ふとももにヌルッとあふれ出たものがあしもとまでにつたわるのがわかった。

    ピシッとおしりを叩かれた

    顔を上げた紗江の瞳は、

    「ここまでよ」

    とても悲しい気持ちを引き擦りながら教壇にもどった。

    下着の冷たさが、よけい悲しい。

    その日も、補修授業がある。

    早く早く、補習授業までの時間がとても長く感じる。

    今日は、最初から紗江の椅子にぴったり横付けして、

    数学の定理に取り掛かる。

    しかし、来てくれない。

    どうして

    いつものように指先がきてくれない。

    時間はながれ、補習授業は終わった。

    今日は、なにもなかった。

    「何故なの・・・」

    はしたない女教師に飽きてしまったのかも、

    あの瞳に心の中を見すかされているような気がした。

    帰る仕度を終えた紗江が教室の出口で振りかえった。

    そして、

    「おいで」

    確かに瞳がそう言っている。

    小走りで紗江のところまで行くと

    あの優しい笑顔で見下ろし、真奈美の両頬を両手ではさみ、

    ひとさし指と親指が真奈美のくちびるを割り舌をつままれた。

    真奈美は、目をつむりされるがままに舌を差し出す。

    その時「がりっ」と舌をかまれた。

    全てが、夢の中でのできごとのように進行してゆく。

    気がつくと、そこに紗江はいない。

    教室にひとり取り残された真奈美は、こころから湧き上がる幸せに浸っていた。

引用返信/返信
■21205 / ResNo.4)  すごい気になりますっ
□投稿者/ 鶴 一般♪(2回)-(2008/12/24(Wed) 02:32:27)
    面白いです
    応援してますんで、続きおねがいしま〜す^^
引用返信/返信

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■20837 / 親記事)  糸の静寂
□投稿者/ 上月 一般♪(1回)-(2008/05/23(Fri) 21:30:16)
    −ねぇ



    傷つけて




    あたしをもっと




    傷つけて




    血が見たい訳じゃないの



    あたしの身体に


    あなたのしるしをつけたいの



    一瞬でいい




    一生残る傷をつけて




    触れる度に



    うずくような







    (携帯)
引用返信/返信

▽[全レス4件(ResNo.1-4 表示)]
■20838 / ResNo.1)  
□投稿者/ 上月 一般♪(2回)-(2008/05/23(Fri) 21:52:24)
    「ねぇ、ピアス開けてくれないかな。」


    一月上旬

    まだ薄暗い朝

    熱が去らぬ内に依子が言った。


    「いいよ。でも急にどうしたの?」


    鬱陶しくなったボブヘアをかきあげながら実里が聞いた。


    「なんとなく。耳が寂しい。」


    依子の髪は細く柔らかい。

    実里は撫でるように耳にかかった髪をすきあげた。


    「そのままでもいいのに。」


    親指でそっと耳のふちをなぞった。


    「こわい?」


    依子は実里を見つめた。


    「こわくはないけど…。しばらく噛めなくなるのは少し嫌かな。」


    「開けたら、出来ないね。」


    依子は血に触れられるのをひどく嫌がる。


    「開ける時、少し血が出るよ?」

    実里は依子の耳たぶをなぞった。


    「手袋して。終わったら手を洗って。お願い。」


    依子の目は切なそうに実里を包んだ。


    −あぁ、またこの目だ


    実里は苦しくなった。

    依子がこの瞳になると

    いつも胸が苦しくなる。

    依子の心の傷が見えた時

    実里の心を僅かに傷つける。




    「わかった。大丈夫だよ。ちゃんとそうする。」


    なだめるように優しく言う


    「良かった。ありがとう。」


    ほっとしたと依子の瞳が緩む。


    実里は何かに耐えれず

    依子を抱き締めた。



    −ねぇ

    あたしは

    ずっと触れられないの?

    あなたの血液と

    あなたの傷に−





    (携帯)
引用返信/返信
■20839 / ResNo.2)  浸透
□投稿者/ 上月 一般♪(3回)-(2008/05/23(Fri) 22:23:25)
    依子は出逢った時からすでに

    実里が血液に触れることを拒んだ。

    以前依子が持っていたグラスが倒れ

    割れた拍子に破片が依子の手の甲を傷つけた。

    「いいっ!!触らないで!!!」


    手当てをしようと近付けた実里の手を

    依子は払いのけた。


    −えっ?


    小さな傷からはまだ滲む程度しか血は出ていなかったが

    依子の拒否反応は強かった。



    どうして?



    実里は疑問に思った。

    些細な傷に遠慮ではなく、あからさまに拒否という形に取れる程に声を荒げて

    近付くなと背を向けて

    普通ではないその態度

    取り乱す程のことではない筈なのに。



    カバンをあさり

    依子が除菌タイプのウェットティッシュを取り出した時

    テーブルに一滴

    血が落ちた。


    「あぁっ!!!!」

    依子は余計取り乱し

    急いでウェットティッシュを出して傷に当て

    押さえながら傷ついた手で

    テーブルを拭き出した。


    何度も何度も


    一枚で拭える筈の

    たった一滴の血液を

    依子は幾度も拭き

    何枚も使った。



    「大丈夫だよ。そんなにしなくても。」


    落ち着かせようと腕に触れようとした


    「だめ。だめだよ。ちゃんと拭かないと。ちゃんと拭かないとだめなんだよ。残ってるかもしれない。まだ残ってるかもしれない。」


    依子は今にも泣きそうになりながら一心不乱に何も残っていないテーブルを拭いていた


    「ねぇ、もういいよ。残ってないよ。綺麗だよ。」



    実里の指先が腕に触れても


    「だめ。だめなんだよ。」

    依子は小さな声で言った

    手は止めようとしない



    「もう大丈夫だよ!!!!」


    実里は声を荒げて依子の腕を掴んだ


    依子の手が止まり


    静かで深い呼吸に肩が揺れた。



    「本当に?」



    依子は


    泣いていた



    「大丈夫。大丈夫だから。」



    実里は依子の背中から静かに強く抱き締めた


    それでも


    傷ついた手を握る力は弱めずに

    指のふちが白くなる程

    血が止まり小指が赤くなる程


    頑なに握っていた。




    しばらくして涙も引き

    呼吸も落ち着いた時


    依子が呟いた



    「あたしの血が付くと、汚れちゃう。」



    実里は驚いた。


    普段、依子は至って普通の女の子だ。

    落ち着いているけど明るくて

    前向きで優しい。


    そんな子が

    ここまで取り乱す程


    自分の血液を嫌悪している



    (携帯)
引用返信/返信
■20851 / ResNo.3)  ベアリー
□投稿者/ 上月 一般♪(4回)-(2008/05/25(Sun) 23:57:00)
    「絆創膏…取ってくるよ。」

    実里は依子を刺激しないように静かに言い、その場を離れようとした。


    その時の

    依子の瞳は

    恐らく一生忘れない程

    失望していた。



    一瞬

    時が止まった。



    そして実里は依子の肩を握った。



    失望は悲しみに移った。



    彼女の何がこれ程までにしているのだろう




    寝室の小さな戸棚の薬箱を取り出した。


    怒りが湧く


    何に対して?


    わからない


    何があったのか





    依子のもとに戻り、箱から絆創膏を取り出すと

    「自分でやる。」


    依子が小さな声で言った。


    差し出された手は

    震えている。


    「はい。」


    静かな時が流れた。

    「もう…一枚…。」

    「はい。」

    「やっぱりあと二枚…。」

    「はい。」


    実里は言われた通りにした。

    小さな傷に重ねられた何枚もの絆創膏。

    それを眺めて

    終わった合図のように依子が絆創膏を撫でた。


    「何か…あったの?」

    実里が聞く。

    何だか涙が出てくる。

    勝手に出てくるのが何故か悔しい。


    依子は黙っている。


    実里は泣いている。


    依子は傷ついていない方の手で実里の頬を撫でた。


    「何故泣いてるの?」

    そう言った依子の頬にも涙が伝う。


    「何があったの?」


    震える唇で

    もう一度実里が聞いた。

    その震える声は

    依子の手をかたく握らせた。



    「いつかその時がきたらちゃんと言う。今は言えない。ごめん。」


    依子は小さな声でもう一度ごめんと呟いた。




    実里は

    自分が小さく感じた。


    何にも力が及ばぬ程の

    小さな小さなものに。



    世界から落ちていくのではなく

    身が剥がれそうな勢いで

    自分が小さくなっていくような





    (携帯)
引用返信/返信
■20865 / ResNo.4)  カモフラージュ
□投稿者/ 上月 一般♪(5回)-(2008/06/04(Wed) 00:23:56)
    春先の昼下がり

    実里と依子の二人は河原に向かっていた。


    「あー…。」

    依子は目を細め空に顔を向けた。


    実里は依子の横顔を見つめた。



    今この子はゆったりした風をまとっている


    つい半月程前に目の当たりにした怯えた鋭い帯は見る影もない


    確かに依子には違いなかった

    だが依子とは違う人間だった




    「ここらへんにしようか。」

    空に向けた表情より柔らかく依子は実里に笑いかけた。


    「うん。」


    実里は依子の表情に心が柔らかくなるのを感じた。


    実里はトートバッグからシートを出した。

    それは以前二人がデートで洋雑貨店に行き

    子供が描いたような花がちりばめられたそのシートは依子が一目惚れし、購入したものだった。


    二人はシートを広げ

    足を伸ばす


    依子は愛しそうにシートの花を指先で撫でた姿を見て実里が呟いた


    「お気に入りだね。」


    パッとあげた依子の顔は子供みたいだった。

    「うんっ。かわいい。」


    笑う依子は本当に愛される人の笑顔になる。


    愛される人間がここに居て

    愛する人間と共に居る



    「良かったね。」

    依子からの愛情のベールに包まれた実里は

    その温かさを噛み締めるように言った。


    「うんっ。あー…気持ちいい…。」


    春風が吹く

    それはより一層

    二人を包み込む



    実里は春の空気を深く吸い

    「気持ちいい…。」

    ゆっくりと吐息と共に言った。




    二人は共に居た。




    共に春に包まれていた。




    これが


    去年の春だった。




    (携帯)
引用返信/返信

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■18038 / 親記事)  cradle
□投稿者/ 唯亜 一般♪(6回)-(2007/02/20(Tue) 21:04:54)
    はじめまして。唯亜(ゆあ)です。
    Cradleはあたしの初作品。
    稚拙な駄文ですが・・・。
引用返信/返信

▽[全レス4件(ResNo.1-4 表示)]
■18039 / ResNo.1)  cradle ・・・1
□投稿者/ 唯亜 一般♪(7回)-(2007/02/20(Tue) 21:05:55)
    真夜中に鳴り響く携帯。耳に馴染んだ指定音。
     恋人ユウヤからの着信だった。眠い目で、電話に出る。

    「ごめん。また切った。」

     それだけの電話に全てを悟り、合鍵と携帯を握り締め、着の身着のまま。
     コートだけを羽織って肌寒い4月の夜の下を走り出す。

    ***

     ユウヤのいるアパート。インターホンは鳴らさずに、合鍵で、室内に入る。
     ドアを開けると、ザーという水音が耳に押し入ってきた。
     急いでバスルームに駆け込む。
     服を着たままのユウヤはシャワーで全身びしょ濡れで。ただ放心したように歌っていた。
     床のタイルは一部、赤く染まっていた。
     あたしはシャワーを止め、彼女をバスルームから引きずり出す。相変わらずユウヤは歌い続けている。


     とりあえずユウヤの体を拭き、傷口の様子を確認した。
     白く細い腕に、ひしめき合うケロイドと、赤くぱっくり開いた新しい傷。けれど、思った程は深くないようでほっとする。
    「ハルカ…。」
     あたしを見て、ユウヤが呟く。彼女の大きな瞳は、悲しい程に虚ろだった。
    「オハヨ。ユウヤったらまた無茶したね?」
     無理に笑ってみせる。そんなあたしを見てユウヤは苦笑した。
    「ごめん…。」

引用返信/返信
■18040 / ResNo.2)  cradle ・・・2
□投稿者/ 唯亜 一般♪(8回)-(2007/02/20(Tue) 21:06:45)
    2007/03/18(Sun) 20:36:00 編集(投稿者)

    「良いから…。手、出して。」

     それだけユウヤに言い、傷口を消毒して、更に軟膏を塗り、パットを当てて包帯を巻いた。

    「これでよし…」
     手慣れた様子で処置を終えると、ユウヤは無言であたしを抱き締めた。

    ―――わかってる。欲しいんだ…。

     冷え切った指先が、あたしの唇をなぞり。間もなくして二人の唇が重なった。
     ひんやりした唇のピアスと、少し低い彼女の体温が、唇を通して伝わってくる。
     長いキスの間。あたしはずっと、ユウヤ頭を抱えるように黒髪を撫でていた。
     キスをしたまま、ユウヤの手があたしのパジャマのボタンを外す。それに身を委ねて目を閉じる。
     パジャマが肩から滑り落ち、上半身が剥き出しになった。
    「…ユウヤも脱いで?濡れたままじゃ風邪引いちゃうよ。」
     あたしの言葉を無視して、ユウヤは続ける。
    「ユウヤ。ベッドが良い…。床、寒いよ…。」
     そういって笑うと、やっとユウヤは首を縦に振った。

引用返信/返信
■18041 / ResNo.3)  cradle ・・・3
□投稿者/ 唯亜 一般♪(9回)-(2007/02/20(Tue) 21:07:17)
    2007/03/18(Sun) 20:36:44 編集(投稿者)

     不意に抱き上げられた。軽々とお姫様抱っこ。
     間近になったユウヤの髪から冷たい雫が落ちてきて、あたしの顔を濡らす。
     傷口が開かないか…心配になるけれど。今のユウヤには、そんなこと何でもない。だから黙って、ユウヤの首筋にしがみついて顔を埋めた。開かないで、って祈るみたいに。

    ***

     無機質な金属のパイプベッドが小さく軋む。
     真っ暗な室内で、お互いの存在だけが世界の全てみたいに。聴覚、嗅覚、触覚、味覚で愛しあう。
     あたし達の行為に「視覚」はいらなかった。暗闇に描き出す相手の表情、仕草…それが更に焔を掻き立てるから。

     うわずった声で彼女の名前を呼んで、汗ばむ体をなぞって…。香水と蜜と汗のにおい。ユウヤの舌の感触…。
     あたしが声を漏らす度、ユウヤの体がじんわりと熱を帯びて、荒くなる呼吸に、なんだか嬉しくなる。
     手探りで唇をなぞるキスの合図に、甘く絡まる舌。
     あたし達は、暗闇から逃げるみたいに快楽にのめり込んで…白ける空を待って、眠りに沈んでいく。それが、彼女との「日常」
引用返信/返信
■18042 / ResNo.4)   cradle ・・・4
□投稿者/ 唯亜 一般♪(10回)-(2007/02/20(Tue) 21:07:49)
    だるい体を起こし、閉め切った遮光カーテンを捲り外を窺う。傾きかけた日射しが、隙間から室内をオレンジに照らす。
     その光の中で眠っているのは、いつものユウヤだった。

     透き通る白肌に、肩までの黒いウルフ。大きな目に長い睫。薄いけれどふっくらとした唇…鷲鼻がかった高い鼻。背が高くて、細くて…悔しいけど胸もあたしより大きい…。
     「僕?結構モテたよ。特に年上のお姉様方に。勿論男連中は蹴りまくったけどね」以前ユウヤが言ったことを、改めて実感した。本当に綺麗…。
     初めてユウヤを見た時、ぞっとした。人形のような美しさ、というよりも生きた人形そのものだった。けれどその体はグロテスクな傷跡だらけ。残酷にもその傷が、彼女の美しさをより引き立てる…。



引用返信/返信

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■13859 / 親記事)  LuxurySpa
□投稿者/ ひより 一般♪(1回)-(2006/03/11(Sat) 20:46:15)
    ‘露天風呂って癒されるな〜… ’
    なんだか今日は、一人暮らしのあの小さなワンルームに真っ直ぐ帰るのが躊躇われ、
    自分にご褒美と称し、ちょっとお高めの女性専用スパにやってきた。
    平日だけに人の入りも混みいってなく、この場所柄とこのお値段だけに客層も落ち着いている。

    露天風呂には誰もいなかった。
    お湯の中で伸びをして,澄んだ夜空を見上げると、
    なんだか寂しかったこの気持ちを、
    優しく包み込むように忘れさせてくれた。


    穏やかな静寂の中、足先を浴槽からそっと持ち上げた。
    そのまま足先を小さく動かすと、ぴちゃぴちゃとお湯が飛び跳ねる。
    それを見てたら、何だか今までの悩みがチッポケでくだらなく思えて、気持ちが明るくなった。

    そんな時、他のお客さんが露天風呂に入ってきた。

    私は慌てて行儀の良い体勢に変え、そちらの方に背を向ける。
    ぽちゃん と彼女も湯船につかる音がする。

    しばらく経った時、何となく体勢を変え、ちらっと彼女を見た。

    ‘綺麗な背中… ’

    スッと伸びた背中には程よく筋肉がついていて、凛として、… かっこいい。
    ‘いくつぐらい年上なんだろう ’
    理想の上司って感じだな、なぁーんて考えながら、さりげなさを装って彼女の後姿を見つめ続けた。

    ミディくらいの髪の長さかな、無造作に結わえた黒髪の先から僅かにおちる滴。
    長い首筋。
    肩へと続くなだらかな曲線。

    多分ジムでも行って鍛えてるんだろうと思う。

    ‘ こんな人に甘えてみたい… ’

    静かな月に照らされた彼女の後姿は神神しく私の目に映った。
引用返信/返信

▽[全レス4件(ResNo.1-4 表示)]
■13860 / ResNo.1)   LuxurySpa★2
□投稿者/ ひより 一般♪(2回)-(2006/03/11(Sat) 21:21:21)
    パシャ…。
    うっとりと眺めている私に構わず、彼女はスッと立ち上がり、露天をあとにする。

    なんだか名残惜しい。
    未練たらしく、彼女の去る姿をじっと見つづけた。

    身長も高く、脚はひきしまって長い。
    きゅっと上がったヒップ。
    モデルもように細過ぎるわけではなく、かと言って、アスリートもようなマッチョでもなく。
    かっこいい大人の女。
    誰が見てもそう思うはず。


    私はしばらく露天にいたが、堪えきれず彼女を探すように館内に戻った。
    湯気で充満した館内の浴場には、パラパラと人がいて、時折、若い子達の話声が響いていた。

    パっと見回しても館内の浴槽に、彼女の姿はなかった。
    ミストサウナ、エステコーナーとやや急ぎ足で見回しても姿はない。
    そして、ドライサウナの扉を開ける。

    中には数人の女性たちが顔を真っ赤にして腰掛けていた。

    ‘   …   いた!! ’

    二段になっている、その上段にの角の近くに彼女の姿を見つけた。

    長い脚を軽く組み、じっと瞳を閉じている彼女。
    彼女の隣、そして彼女を横から眺めれるところに私はすかさず陣取った。


    彼女の体は細かな汗でじっとりと包まれていた。
    所々にある大きめな汗の滴を目で追っていくと、
    ふっくらと、つんと上を向いたバストが目に入った。
    見るからに私より年上なのに、張りのあるバスト。
    ツンとした大き目の乳首。
    組んだ長い脚。
    引き締まった太もも。

    色っぽいというよりも、かっこいい。

    でも。
    眺め続けていると、この人に抱かれたいという欲望の目線に変わっていった。


引用返信/返信
■13862 / ResNo.2)  LuxurySpa★3
□投稿者/ ひより 一般♪(3回)-(2006/03/12(Sun) 20:15:11)
    ‘暑い…! 熱くなってきたよー ’
    先にサウナにいた人たちが徐々にサウナを出て行く。
    でも、私は彼女の傍にいたいが為に、苦手のサウナだけど頑張って居座った。

    ‘あークラクラしてきたよー… ’
    彼女の太ももについた細かな水滴がぼやけ始めた時だった。

    「どこかでお逢いしました?」
    少し低めの大人っぽい声。
    慌てて、うなだれ始めた顔を持ち上げると、じっと見つめる彼女の顔が目に入った。
    もの静かな感じだけれど、その奥には熱いナニカが感じられる、吸い込まれそう瞳だった。
    「えっ?!あ、いえ… 」
    ぼやけた視界は一気に吹き飛び、逆に恥ずかしさが昇りつめた。
    なぜか慌てて、腰にかけていたタオルを胸まで引き上げる。

    「大丈夫?顔、真っ赤よ?」
    彼女は大きめなその手で、私の頬に優しく手をあてると、優しく笑って
    「じゃ、お先に。」と言って出て行った。

    ‘え?!!やだ、話掛けられちゃったよ!!’
     
    私はサウナの熱ではなく、彼女によって熱くさせられた頬に手を当てると、その場から動けなくなっていた。
引用返信/返信
■13881 / ResNo.3)  LuxurySpa★4
□投稿者/ ひより 一般♪(4回)-(2006/03/13(Mon) 21:49:06)
    またも追いかけようと思ったけど、今度は怪しまれてしまいそうだから、
    私はほんの少しだけサウナで頑張り続けて、そして、サウナを出た。
    案の定、彼女の姿はもうなくて、‘当たり前か…’そう思っていた。


    落ち着いた色合いの館内着に着替え、私はここで朝を迎えようと決めた。
    給料日前の平日。
    たぶん、リラックスルームも空いてるはず。

    予想通り、チェアも空席が目立った。
    私は一番後方の一番端のチェアに身をうずめる。
    大き目のチェアは体をすっぽりと包み、ゆっくりと眠れそう。


    でも…。
    … 眠れない。

    彼女の肌、手の温もり。  優しい笑顔。
    目を閉じても、彼女のことで余計頭がいっぱいになってしまう…
    彼女を思うと、だんだんと熱くなっていくカラダ。
    その叶えられない熱を断ち切りたいが為に、何度も強く瞼を閉じるけれど、
    その想いとは裏腹に熱くなる私のカラダ。

    ‘この場所なら誰にも気づかれない…?’
    こんな所で、ハシタナイ事をしてしまいそう…。
    そんな気持ちを抑えるべく、館内用のウエアの胸元をグッと握り、ギュっと強く目を閉じた。
     …その時だった。


    熱くなった頬をスっ…と触れる冷たい指。
    「 っェ?!! 」
    思わず、小さく声を漏らすと、あの彼女が全てを見透かしたような瞳で小さく微笑みながら、私を見下ろしていた。

    「…?!! 」

    飛び出しそうな心臓を抑えるべく、私は自分の口を両手で抑えた。
    一気に顔が熱く火照る。


    「 …… 」

    彼女は人差し指を口元にあて、小さく‘静かに’と合図すると、
    その艶やかな唇をそっと動かした。


    ‘    o  i  d e   …   ?? ’


    おいで… ?


    彼女は不思議顔の私にまた笑顔を見せた。
    あまりの事に驚いて、身動きが取れない私をよそに、彼女はすっと、その場から立ち去っていく。

    私の口元を覆っていた両手からは一気に汗が噴出してきた。
    でもすぐに、嬉しさから口元がだらしなく緩む。
    今度はその喜びを抑えるべく、両手で口元を覆いながら、ニヤケ顔の私は急いで、彼女の後を早足で追った。
引用返信/返信
■14199 / ResNo.4)  Re[2]: LuxurySpa★4
□投稿者/ エミル 一般♪(1回)-(2006/04/09(Sun) 02:18:01)
    続きが気になります!!
    ひよりさんの文章、テンポが良くて読み易くてホントに現実にありそうなシチュエーションで
    興奮しちゃって引き込まれます。続き楽しみに待ってます☆
引用返信/返信

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■21960 / 親記事)  ギターを弾く女
□投稿者/ いちこ 一般♪(5回)-(2015/06/28(Sun) 16:03:12)

    ケイコは、中小企業のOLだ。
    ケイコは落ち込んでいた。仕事でミスが
    重なり、上司にひどく叱られたのだ。
    仕事が終わり、帰りの途についても、
    まだ引きずっていた。
    改札を出て交差点の前で、信号が変わるのを
    待っていた。頭の上からは、電車がやかましく
    通り過ぎる音が降ってくる。
    この交差点を渡り、500mほど歩くとアパートに着く。
    「はぁ〜〜。」と溜息が漏れる。
    やがて信号が変わり、歩行者用信号が
    急き立てるように鳴り出した。
    周りの人たちが、ケイコを残して渡り出す。
    なんとなくこのまま帰りたくなかった。
    ケイコは踵を返し、駅裏へ歩き出した。
    別に呑みに行きたいわけじゃなかった。
    女ひとりで、居酒屋に入れるほどの根性はない。
    ただ、歩きたかった。でもすぐに後悔した。
    呑み屋の多い駅裏は、酔っぱらいも多かった。
    女ひとりは珍しいのか、ジロジロ見られた。
    いやだなぁ〜。
    前から運動部系の学生数人の酔っぱらいが来た。
    大きな声で笑ったり話したりしている。
    その内のひとりがケイコに気づき、
    隣りの仲間になにか喋った。
    思わず立ち止まり横道を探したが、なかった。
    彼らはあきらかにケイコを見ながら近づいてくる。
    逃げるように、すぐ横の木のドアを開けていた。
    そこは小さなライブハウスだった。
    これから始まるようで、ステージの前には
    数人の女の子達がいる。
    ネクタイをしたサラリーマン風のおじ様達もいた。
    ケイコはソルティードッグを注文して待った。
    やがてその人がギターを持って登場した。
    おんな?オトコ?
    前の女の子達が歓声をあげる。
    パラパラと拍手があった。
    黒髪に白いメッシュの入ったベリーショートヘアー。
    穴の空いたスリムジーンズ、よれたTシャツに革ジャン。
    その人はあいさつもせずに、ギターを弾きだした。

    いきなり音の洪水がケイコを包む。
    すごい‥‥音楽には詳しくないが、
    素人目に見ても凄さは感じた。
    とてもひとりで弾いているとは思えない。
    やがて激しい一曲目が終わり、一転して
    静かな曲が始まった。
    その時、その人と目が合った。
    ケイコの胸の奥でズキッと痛みが走った。
    弾きながらも、その人は目を逸らさない。
    ケイコも視線を外せなかった。
    そしてハスキーヴォイスで歌う。
    あっ!‥‥ギターの音とハスキーヴォイスが
    素肌に直接しみ込むような感覚があった。
    身体の中心が熱を持つのが感じた。
    ラブソングだ。
    英語なので歌詞は正確には解らないが
    ケイコはそう感じた。

    その人は圧倒的なテクニックで五曲ほど
    演奏して、やはり挨拶もなく、さっさと
    袖に隠れた。
    しばらく呆然としていたが、名前も解らないことに気づいた。
    店を出て、表のポスターを確かめると
    ライブスケジュールが貼りだしてあり、
    今日の欄に

    『アッシュ』

    とだけ書かれている。
    「女か男かわかんないじゃない!」
    思わずつぶやくと、背後にアルコールの
    臭気がした。
    いつの間にか、酔っぱらいのおじさん達がいた。
    「ねえちゃん、かわいいねぇ。これから
    一緒に呑まないかい?」
    「ごっ、ごめんなさい。待ち合わせしてるの。」
    「また、またぁ〜。‥‥いてっ!」
    おじさんを突き飛ばして、『アッシュ』がケイコの前に立った。
    「走るよ!」
    アッシュはケイコの手を取り、走り出した。
    アッシュの手は意外に小さく、
    とてもあんな演奏ができるとは思えなかった。
    踏切の高架下まで、一気に走った。

    ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥

    荒い息を整えながら、アッシュが言った。
    「僕、おんなだよ!」
    そして、強引にケイコを抱き寄せ、くちづけた。
    「えっ‥‥んん〜。」
    首すじにもキスをする。
    「あっ‥‥いやっ、やめて!」
    思わずケイコはアッシュを突き飛ばしていた。
    頭の上を電車が轟音とともに通り過ぎていく。
    ケイコは、逃げるように走って帰った。

    続く












引用返信/返信

▽[全レス3件(ResNo.1-3 表示)]
■21964 / ResNo.1)  ギターを弾く女2
□投稿者/ いちこ 一般♪(6回)-(2015/07/02(Thu) 23:25:27)

    アパートに戻っても、激しい動悸が続いていた。
    「どうしてあんな、あんなこと!」
    首すじが、熱い。
    用を足すためにトイレに入って、ケイコは愕然とした。
    あっ、まさかそんな?!
    下着を下ろしたら、ソコが糸を引くほど濡れていた。

    ケイコは『アッシュ』について調べてみた。

    超絶ギターテクの女性歌手であること。
    ケイコより2歳若いこと。
    デビューして2年経つが、ぱっとしないこと。
    音楽のジャンルはブルースであること。

    あまり情報がなく、この程度だった。
    ケイコは次の日、あのライブハウスにいた。
    自然と足が向いていた。今日も出演するはずだ。
    昨日と同じく激しい曲のあと、あのラブソングが始まった。
    ケイコはアッシュの視線を待った。
    しかしアッシュはちらっと見ただけで、
    すぐにギターに集中した。
    ケイコはひどく傷ついている自分に驚いた。
    バカみたい。これではまるで恋する乙女ではないか?
    自分より年下で、しかも女性なのに。
    ライブが終わっても、しばらく動けなかった。
    いい大人が、なにをしているのだろう?
    溜息をついて出口へ向かう。
    出口の横にアッシュがいた。
    腕組みをして壁にもたれていた。
    目を合わせないよう、出ようとしたら、
    アッシュに腕を掴まれた。驚いて振り向くと
    「昨日はごめん!お詫びに飯を奢るよ!」
    と言って、アッシュはさっさと歩き出した。
    一度も振り向かないアッシュに、少しむっとしながらも、
    ケイコは大人しく付いていった。
    アッシュは呑むと饒舌になった。
    自分のことを「カズミ」と名乗った。
    ケイコは思わず吹き出した。あまりにも
    イメージと違ったからだ。
    二人で自分の名前の不満を言い合った。
    そしてアッシュは唐突に、ケイコの目を見つめ、
    「ねぇ、一目惚れって信じる?」
    と欲望にギラついた目でケイコを見た。
    女の子に求愛されたのは、初めてだったが
    ケイコは舞い上がった。

    女の子の一人歩きは危ないからと、
    アッシュは年下のくせに言い張った。
    でも部屋に誘ったのは、ケイコだった。
    そして靴を脱ぐ前にケイコは抱きしめられ
    キスをされた。
    今度はもう抵抗しなかった。

    続く








引用返信/返信
■21965 / ResNo.2)  ギターを弾く女3
□投稿者/ いちこ 一般♪(7回)-(2015/07/05(Sun) 13:27:39)

    アッシュとのセックスは、オトコとのそれに似ていると
    ケイコは感じた。身勝手で傲慢だと。
    でも決定的に違うのは、相手が女だということ。
    当然 女の身体を知り尽くしている。
    アッシュはケイコを楽器のように扱った。
    アッシュは、キスをしながら器用にケイコを素裸にした。
    ベッドに押し倒すと、楽器をチューニングするように
    両手と口で身体中の性感帯を調べられた。
    それからおもむろにケイコという楽器の演奏を始める。
    ケイコはアッシュの望むまま、声を上げさせられ、
    ほとんど強制的に何度もイカされ、
    ケイコがもう許してと懇願しても、
    自分が満足するまでやめなかった。
    アッシュが自分のソコとケイコのソコを
    合わせて動き始めた時、ケイコは痙攣していた。
    身体中いたるところに、キスマークを付けられ、
    ビクンビクンと痙攣しているケイコの耳元に口を寄せ
    アッシュは
    「ありがとう。またね!」
    と言って出て行った。
    ケイコは起き上がることもできずに
    ドアの閉まる音を聞いていた。

    それからアッシュは、たびたびケイコのもとを訪れた。
    セックス以外は優しいので、ケイコは惹かれていった。
    やがて「カズ」「ケイ」と呼び合う仲になったが、
    ふたりの間でアッシュの音楽の話は禁句だった。
    素人は、黙っててほしいとはっきり言われた。
    アッシュにとっての聖域なのだ。

    そんなある日、アッシュは曲づくりに行き詰まり、
    モヤモヤを抱えたままケイコのもとを
    訪れた。
    ケイコはアッシュのために食事の準備をしているところだった。
    いきなりアッシュは襲いかかった。
    「いやっ、ねぇ‥‥しっ、食事をしてからに。」
    「イヤだ。まずケイを食べたい!」
    後ろから抱きしめて、首すじにキスをした。
    「だめっ‥‥やめて‥‥あぁ。」
    右手はたくみに乳首を探り当て、
    左手は下着の下に潜り込み、クリを探し出し、
    同時に摘んで引っ張った。
    「かはっ‥‥くぅ‥‥」
    こうなるとケイコはアッシュのなすがままだった。

    数十分後、ケイコはキッチンの床を大量の潮で濡らし、
    へたり込んでいた。
    ぼんやりと拭き掃除しなきゃとケイコは思っていた。
    「まだだよ!もっと食べたい!」
    アッシュはケイコをベッドに連れていき、
    身体中にキスの雨を降らせた。
    ケイコに抗う気力は残っていなかった。
    アッシュはケイコの身体中の水分を
    絞り尽くすように貪った。

    アッシュは満足すると、ケイコの作った食事に手もつけず、
    さっさと着替え、出て行こうとした。
    「カズ、待ってよ!」
    ケイコは重い身体を起こし、声を絞り出した。
    「えっ‥‥」
    驚いてアッシュが振り向くと、
    まだ少し痙攣している身体でヨロヨロと
    立ち上がろうとしてよろめくケイコ。
    慌てて手を出したアッシュに
    「触らないでっ!!」
    とヒステリックに叫んでいた。
    ケイコは怒ったいた。

    続く











引用返信/返信
■21966 / ResNo.3)  ギターを弾く女4
□投稿者/ いちこ 一般♪(8回)-(2015/07/11(Sat) 19:04:30)

    「カズは、あたしの身体だけなの?
    いい加減にしてよっ!」
    「そっ、そういうわけじゃ。」
    「だいたい、自分勝手なのよっ。
    見える所にキスマークつけないでって言ったよね。
    それに私だってカズに触りたいよ。愛したいよ‥‥、
    カズのライブだってそうだよ。」
    これ以上、言ってはダメとケイコの頭の中で警告音が鳴ってる。
    でも、もう止まらなかった。
    「自分の曲を、好きなように演奏して
    聴衆はおいてきぼりよ。カズの演奏は
    そりゃすごいよ。でも無理矢理なのよ。
    聴いている人のこと考えたことある?
    ないわよね。いつも挨拶もしないじゃない?
    あなたの演奏はマスターベーションよ。」
    言っているうちから、アッシュの顔が
    みるみる怒りに赤くなってゆく。
    アッシュが一歩踏み出した。
    「きゃっ」
    ケイコは思わず屈み込んだ。

    でもアッシュは黙って出て行った。

    それきりアッシュは消えてしまった。
    あれからケイコは、連絡の取れなくなった
    アッシュをあらゆる方法で探したが、
    見つからなかった。
    ケイコは、きっちり一週間泣き続けた。
    それから少しずつ笑顔を取り戻していった。
    カラ元気だったが、笑顔でいると何人かの男が言い寄ってきた。
    でもケイコは誰とも付き合う気はなかった。
    どうしても彼女のことを忘れることが
    できなかった。
    どうしても、どうしても、どうしても
    忘れることができなかった。

    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

    アッシュが居なくなって一年が経とうとしていた。
    ケイコには生きている実感がなかった。
    そんな時、ケイコの元に一枚のエアメールが届いた。
    差出人の欄には『Kazu』と書かれていた。
    ケイコは封を開ける前に泣き崩れてしまった。
    中にはSDカードとメモが一枚。
    メモには『PASSWORD Kei's birthday』と書かれていた。
    「覚えててくれたんだ。」
    ファイルを開いてみると、カズがアパートの一室で
    ぎこちない笑顔で写っている。
    『ケイ、元気ですか?突然居なくなってゴメンね。
    あの時言われた言葉、正直傷つきました。
    でも冷静になると、その通りだと思いました。
    そこで一からやり直すことにしたの。
    あれから単身、ギターだけ持ってニューヨークへ渡りました。
    別れの挨拶でケイのアパートまで行ったけど、
    ケイの顔を見たら、くじけそうだったから、黙ってきちゃった。
    まずストリートライブから始めたの。
    運も良かったと思うけど、今のブロデューサーと出会えて、
    そしてなんとこちらでデビューが決まりました。
    やったね!』とガッツポーズをしてる。
    『それで、◯月◯日の◯時着の便で
    ブロモーションのため日本に帰ります。
    もしも、もしもケイにステディがいなかったら、
    成田に来て欲しい。
    来なかったら、二度と連絡しません。
    ケイと愛し愛されるエッチがしたい。
    来てくれることを願ってます。』
    「ばかぁ、なに言ってるのよ!もう。心配したんだから!」
    顔を赤らめながら、泣き笑いするケイコだった。








完結!
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