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■22224 / 親記事)  僕に彼女が出来たんだ。
□投稿者/ いちこ ちょと常連(89回)-(2017/04/15(Sat) 00:25:13)

    ボクは朝子 19歳、看護師。男には興味ない。彼女募集中。
    一緒に住んでる子はいる。名前は彩ちゃん。中学以来の親友だ。
    性別によって態度を変える嫌な女。男にはモテるが、女友達はボクだけ。
    ほんと、最っ低なおんな!!
    でも実は彼女のことが苦しいほど好き。彼女は憎らしいほどノンケなのに。
    一緒に住もうと言い出したのは彼女の方。嬉しかった!
    彼女はボクの前ではとんでもなく無防備だ。
    それにスキンシップが激しい。
    それでボクの理性は何度も飛びそうになる。
    まったくなにを考えているんだか。この小悪魔は!!

    あたしは彩、19歳。OLをしてる。
    自分で言うのもあれだけど、あたしは可愛い。実際よくモテる!
    お給料の半分以上、ファッションと美容に消えてる。
    男なんかチョロい。話を聞いてやり、時々褒める。
    そしてボディータッチ。露骨にしなくてもいい。
    相手の膝にそっと手を置いたり、袖を摘むだけでもいい。
    それで大抵の男は落ちる。顔が良ければ寝てあげてもいい。
    でも身も心も熱くなる男には出会えていない。
    今、あたしは女友達とルームシェアしてる。
    確証はないけど、たぶん彼女はあたしのことが好き。
    あたしの身体を盗み見る彼女の目に、ゾクゾクしちゃう。
    だからわざと彼女の前で着替えたりする。
    恥じらいが無さすぎると、叱られたりする。
    あたしは男好きだが、朝子だったらいいかなと思っている。

    でも楽しい日々は長くは続かない。
    あたしがあんなことに巻き込まれるなんて。
    きっとバチが当たったんだ。

    続く


引用返信/返信

▽[全レス8件(ResNo.4-8 表示)]
■22228 / ResNo.4)  僕に彼女が出来たんだ。5
□投稿者/ いちこ ちょと常連(93回)-(2017/05/03(Wed) 23:16:34)

    とうとうソイツがボクの肩に手を掛ける。

    「彩‥‥」

    振り返ったボクを見て、ソイツが絶句する。

    「お前、誰だ?」
    「誰でもいい。これ以上彩ちゃんに付きまとわないで!」
    「はあ?何言ってんの。あっ、お前さっき一緒にいたヤツか?
    彩は俺の女だよ。文句言われる筋合いはねぇよ。」
    「そっちこそ何言ってるの?
    彩ちゃんはもうあなたに興味ないの。いい加減にして。」
    「だめだ。俺は彼女のことを愛してるんだ。」
    「そんな、ボクの方が‥‥‥」
    「あれっ?もしかしてお前、女のくせに彩に惚れてるのか?ええ?気持ちわり ー!」
    「と、とにかくもう近づかないで!
    これ以上付きまとうと警察に通報するから。犯罪者になりたい?」

    ソイツはボクの周りを歩きながら

    「へえー、初めて見たよ!勿体無いなあ。」

    ソイツはボクの前に立つと、顔を近づけて言った。

    「なんなら俺が女にしてやろうか?」
    「くっ。」

    ボクは嫌悪感を覚え、反射的にソイツに平手打ちしようとしたが、
    頬に当たる寸前でソイツに手首を掴まれた。

    「俺、結構上手いんだぜ。彩なんか俺の下でヒーヒー言ってたぜ。」
    「なっ。」

    ボクはカッとして、バッグの中からスタンガンを出し、ソイツに押し当てた。

    これで終わるはずだった。ところがスイッチが入らない。

    「はっ?なにこれ?」

    ソイツはスタンガンをアッと言う間に取り上げると、後ろに放った。
    しまった!そうか、安全装置を外してなかった。
    気づいたが後の祭りだ。ソイツの平手が飛んでくる。避けられないっ。
    バシッと音を残し、ボクは3mくらい吹っ飛び、地面に倒れる。
    頬の痛みに耐え起き上がろうと手をつくと、ポタポタッと血が落ちる。
    鼻血が出ている。涙が溢れてくる。ソイツが更に腹を蹴ってくる。

    「ううっ。」

    その時、悲鳴が上がった。

    「きゃーー!」

    ソイツが振り返るとスウェット姿の彩ちゃんがいた。
    だめだよ、来ちゃだめだ。
    コイツはおかしいよ。

    続く





引用返信/返信
■22229 / ResNo.5)  僕に彼女が出来たんだ。6
□投稿者/ いちこ ちょと常連(94回)-(2017/05/05(Fri) 19:13:47)

    「あれっ、彩じゃん!会いに来てくれた?」

    と言って彩ちゃんの方に行こうとする。
    ボクは行かせまいとして、ソイツの足首に絡みつき、噛みついてやった。

    「痛てーー、なにしやがる?」

    ボクを振り切ろうと足をバタバタするが、離してやるもんか。

    「離せよっ、変態女!」

    とうとうソイツは空いている足で、ボクの頭を踏みつけるように蹴り出す。
    蹴られるたびにボクの頭は砂だらけになり、強烈な痛みが襲ってくる。
    離すもんかっと頑張っていたが、もうだめ、限界と思ったその時、
    バチバチバチと音がして、ソイツが倒れる。
    彩ちゃんがスタンガンを使ったのだ。
    彩ちゃん、ありがとう!でも‥‥ボクにも電流が流れんだよ。
    そして目の前が真っ暗になった。

    ーーーーーーーーーーーーーーー

    うわーん朝子、ごめん!どうしよう?
    あー朝子。目を覚ましてよ、お願い!あれっ朝子、なぜあたしの服なんか?
    そうかコイツをおびき出すために?あたしなんかのために?
    そんなにもあたしのことを?そんな!
    朝子ー、あたし朝子に愛される資格なんかないのに。
    あー朝子、ひどい顔!頬が腫れて、鼻血出して。可哀想に!
    それにしてもなんてヤツ、なんてヤツ!女に手を上げるなんて最低っ!
    こんなヤツと付き合わなくてよかった。もう一発お見舞いしてやる。

    バチバチバチバチ!

    朝子、どうすれば起きてくれるの?あっそうか人口呼吸か。
    あたし、やったことないけど、やるしかないか。

    ーーーーーーーーーーーーーーー

    あれっ?彩ちゃん?なんか彩ちゃんの顔が迫ってくる。
    もしかしてボクにキス??えっ、夢なのかな?

    ンチュ‥‥

    あー、柔らかい!夢ならいっそ味わっちゃおう。
    ボクは彩ちゃんの後頭部に手を回して、口を開いて舌を差し入れた。

    んー!彩ちゃんが驚いて離れようとする。逃すもんか。
    とことん味わってやる。ボクは回した手に力を入れた。

    続く




引用返信/返信
■22230 / ResNo.6)  僕に彼女が出来たんだ。7
□投稿者/ いちこ ちょと常連(95回)-(2017/05/07(Sun) 13:13:09)


    えー、なに?なに?朝子起きてたの?でもいきなり はげしっ!
    えっ、やだっ、舌が‥‥、だめっ‥‥、
    あたしは手をついて逃れようとしたけど、逆に引き寄せられる。
    んっ‥‥、あっ、だめっ‥‥、感じてきちゃう!力が入らない!
    んん〜‥‥‥、も、もっと‥‥‥、

    彩ちゃんから力が抜けたと思ったら、急に積極的に応えてくる。
    彩ちゃんの舌は自由奔放に動き、ボクを絡め取る。
    ボクは負けてはならじと、彩ちゃんのおっぱいに手を伸ばした。
    スウェットの上からやわやわと揉みしだき、突起を探り出しそっと摘んだ。
    ビクッとなった彩ちゃんだったが、なかば強引にボクから離れた。
    そして欲望に濡れた瞳で、ボクを見つめる。ボクは思わず言ってしまう。

    「好きなんだ!」

    ぽっと頬を染めた彩ちゃんだったけど、次の瞬間 ぷっと吹き出した。
    ボクは自分の告白が笑われたことに腹を立てた。

    「ごめんなさい!でもそんな鼻血ブーの顔で言わないでよ。
    ふふっ、ありがとう!でもここでこれ以上はダメ。家で、ネッ!」

    とウインクする。この小悪魔め!
    ボクは急いで立ち上がると、彩ちゃんの手を引いて歩き出した。

    こうしてボクに彼女が出来たんだ。
    それはそれはかわいいんだっ。

    完結


完結!
引用返信/返信
■22277 / ResNo.7)  Re[7]: 僕に彼女が出来たんだ。7
□投稿者/ 優 一般♪(1回)-(2018/04/08(Sun) 07:41:07)
    こんにちは!久々に閲覧致しました。

    更新記事読ませて頂きました。書かれているのを見て

    嬉しかったです!

    人魚の方の話、不覚にも泣いてまいました・・・w

    また読ませて頂けるのを、楽しみにしてます♪
引用返信/返信
■22278 / ResNo.8)  Re[8]: 僕に彼女が出来たんだ。7
□投稿者/ いちこ 一般♪(1回)-(2018/04/12(Thu) 00:11:18)
    優さん ありがとう。

    とても嬉しい。

    久しぶりに自分で読み返してみました。

    すっかり内容を忘れてて、素で感動してしまった。

    バカみたいですね。

    また応援して下さい。
引用返信/返信

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■21622 / 親記事)  ヤクソク
□投稿者/ 楼 一般♪(2回)-(2012/09/08(Sat) 18:45:59)
    2012/09/08(Sat) 20:24:10 編集(投稿者)





    出会ったきっかけは・・・・確か、大学の入学式の時。










    留年も浪人もすることなく、無事地元の高校を卒業できた。
    1年生の時から憧れていた第一志望の大学にも一発合格、入学決定。
    初めて地元からも親元からも離れ、他県で一人暮らしをすることになった。




    春休み、両親と妹を引き連れて、これからの生活の拠点にお引越し。
    先に運んでおいてもらった段ボールの山を、4人で片付けた。
    部屋を決める時にも訪れたマンションだったけど、やっぱり違った。
    今日からここで生活するんだなあ、って思うと、複雑な気持ちだった。
    わくわく感と、寂しさと、不安と・・・・いろんな感情があった。
    だけど今更実家に帰ることもできなくて、せっせと片付けに精を出した。




    4人で集中して作業をしたおかげで、数時間で片付けは終了。
    近くのレストランで、家族全員で引っ越し祝いのディナーを食べた。
    その後、両親も妹も新幹線でとっとと家に帰っちゃったけど。
    1泊ぐらいしていってもよかったけど、生憎場所がなかったから。
    ホテルに泊まるのも何だかねえ、ってお母さんは笑ってた。




    それから1週間経って、大学で盛大に入学式が行われた。
    事前に買い揃えておいた黒のレディーススーツを身にまとい出席。
    両親は共働き、2人とも仕事で入学式には出席できなかった。
    だから1人で電車に乗って大学に行って、1人で出席した。
    親御さんも来ている人がたくさんいたけど、羨ましくはなかった。
    昔から周りの人に「意外とドライなとこあるよね」って言われる私。
    確かにこういうところがドライだよなあ、って1人で小さく苦笑した。




    やっぱり大学の入学式はすごくて、とにかく人が多かった。
    今まで入学した学校の生徒数は少ない方ではなかったけど、比じゃない。
    人、人、人で、人が多い場所が苦手な私は、うんざりしていた。
    だから入学式が始まるまでの間、ちょっとそこらを散策することに。
    正直電車の時間を間違えてしまって、早めに来ちゃって暇だったから。
    入学式が始まる予定の時間まで、あと数十分の余裕があった。




    人の流れに逆らって歩いて、適当に敷地内をぶらぶら歩いた。
    先輩方の視線が多少は気になったけど、全部無視して歩く。
    オープンキャンパス以来だったから、夏以来の大学の風景だ。
    夏とは違って丁度いいぐらいの気温で、春らしい晴天の日だった。




    携帯を弄りながら適当に歩き回っていると、1人の先輩が視界に映った。
    赤いファイルやら教材らしき本やらを抱えた、1人の女の先輩。
    急いでいるのか、少し多めの荷物を抱えながら走っていた。
    年上だろうけどどこか危なっかしい感じで、なんだか気になる先輩だ。
    つい立ち止まって、その先輩がこちらに走ってくるのを眺める。




    「あっ、えっ、わわわっ!?」



    「!?」




    ・・・・・私が立ち止まった数秒後、その先輩は盛大にすっ転んだ。
    段差も何もない、本来なら転ぶ要素がどこにもない場所で、盛大に、だ。
    ファイルやら本やら荷物が宙に舞い、先輩の身体は前方に大きく傾いていく。
    手ぐらいつけばいいものを、腕を真っ直ぐに伸ばしたまま、顔面から、ドシャッ。
    しかも転んだ後、すぐに起き上がることをせず、しばらくそのまま。




    頭を打って気絶でもしたのかと思い、近くに歩み寄ってみる。
    すると、むくりと顔をあげ、こちらを涙で潤んだ目で見上げてきた。




    (・・・・・可愛い)




    顔面から地面に着地したせいで、額に傷ができ、血が出ていた。
    無言のまま身体を起こし、身体のあちこちをチェックする。
    膝も少し擦りむけていたし、荷物は少し離れた場所に吹っ飛んでいる。
    よくもまああそこまで盛大に転んだものだと、内心感心すらした。




    「・・・・大丈夫ですか?」




    未だに涙目で荷物を拾い上げていた先輩に声をかけた。
    荷物を全部拾い終わると同時に、額から血を出した先輩が振り向く。
    私は無言でカバンから絆創膏を取り出し、先輩に数枚手渡す。
    先輩もきょとんとしたままの顔で無言で受け取った。




    「あ・・・・ありがとう、ございます、」




    私の顔をしっかり見ながらふにゃり、と笑った顔は、可愛らしく見えた。
    私は無言で先輩の小さな手から1枚の絆創膏を抜き取った。
    それにまたきょとんとした先輩の顔は、目が点になっている。




    「・・・・おでこ、血ぃ出てるんで。貼ってあげましょうか?」



    「えっ!?あ、じゃあ・・・・お願いします」




    前髪を両手で押さえ、貼りやすいようにして、目をぎゅっと瞑る。
    目を瞑る必要性なんてどこにもないけど、特につっこまず。
    傷の大きさと絆創膏の大きさが合うか心配したけど、大丈夫だった。
    絆創膏を貼り終えると、先輩は、必死で前髪で隠そうとしていた。
    額に貼るついでに、膝の怪我の所にも絆創膏を貼ってあげた。




    「本当すみません・・・・」



    「いえ、別にこんぐらい・・・・じゃ」




    私は荷物を両手で胸のところで抱えた先輩を置いて、来た道を戻った。
    ちょっと後ろを振り返ってみたい気がしたけど、入学式の会場へと歩く。
    思い出しても笑える転び方をした先輩と、これから関わることはあるだろうか。
    人数が多い学校だし、多分数えるほどしか関われないとは思う。
    というか、これから先、何らかの形で関われたなら、それはすごい。
    私は積極的に何かの役を引き受けたりしないタイプだから余計に。
    サークルには参加する予定だけど、サークルもたくさんある。




    その後、入学式に出席し、その日は徐々に慣れてきた自宅に帰った。





引用返信/返信

▽[全レス8件(ResNo.4-8 表示)]
■21626 / ResNo.4)  
□投稿者/ 楼 一般♪(6回)-(2012/09/08(Sat) 20:34:57)





    それから目まぐるしく月日は過ぎ去り、9月になった。
    残暑は厳しいけど、もうすっかり1人きりでの生活に慣れた。
    あの先輩とは会うことはなく、里香ともあの話をすることもなく。
    講義を受けてサークルの活動に参加してバイトをして家事をこなす。
    そんな単調、時には刺激的な生活をひたすらに繰り返していた。





    「葵ー、いるー?」




    先輩に誘われてラリーをし始めて数分、別の先輩に呼ばれた。
    1つ年上の川上先輩、最初見た時に男性かと思ったけど女性だった。
    そこらへんの男性よりも男前な先輩の呼び名は、“兄貴”。
    でも下の名前は“瑛里”という、ものすごいギャップ。




    「はい、なんですか?」



    「葵に会いたいって人が来てるんだけど・・・・」



    「私に・・・・会いたい人、ですか?」



    「いやー、私も名前知らなくてね・・・・同い年らしいんだけど」



    「先輩と同い年の人なんですか?」



    「そうそう、だけど違う学部らしくて、面識なくってね」




    名前を知らない先輩からの呼び出しだが、一応行ってみることにした。
    待っているという体育館の入り口に出てみると、1人の女性がいた。




    「「あ・・・・・」」




    ・・・・あの、おっちょこちょいで危なっかしい先輩が、立っていた。
    私より1つ年上の先輩だったなんて、今初めて知った先輩が。




    「あのっ・・・・さっき、たまたま体育館にいるの見かけて・・・・」




    どうやら、私が体育館にいたのを、通りすがるついでに見つけたらしく。
    グッドタイミングで体育館に入ろうとした先輩に、呼んでもらったらしい。




    「せめて名前を伝えてあげて下さい・・・・先輩困ってたんで」



    「あっ、ほんとだ・・・・名前言い忘れてた・・・・!」




    ここまでくるとおっちょこちょいというよりは、天然なんだろうか。
    まあ名前を伝えてもらっても、先輩のことが思い浮かぶはずがないけど。




    「で、名前、なんて言うんですか?」



    「えっと、心理学部の、榎原美優っていいます、」




    確かに、文学部の“兄貴”こと瑛里先輩とは、面識がないはずの学部。
    先輩が名前も分からず面識もなくて戸惑うのは、納得できる。
    同じサークルのメンバーでもないし、余計に戸惑ってしまうだろう。




    「あなたは、なんてお名前ですか?」



    「私は法学部の渡部葵です」



    「わあ、賢いんですね・・・・!」




    心の底から感心しました、って感じの顔をした先輩は、子供のよう。
    目をきらきらさせながら見つめてくる先輩は、年上には見えない。
    まあ身長が150センチぐらいだから、見た目からして子供みたいだけど。
    私が165センチぐらいあるから、一層子供みたいに見えてしまう。




    「あの、このあ「みーちゃん・・・・・?」・・・・・え・・・・?」




    私の背後、体育館の中の入り口近くの方から、声がした。
    振り返ってみると、そこには、美穂が立っていた。




    「みーちゃん・・・・・」




    どういうことだ、と混乱する私に、更に混乱が訪れる。




    「美穂ー、いきなりどうしたの・・・・・え・・・・美優・・・・・?」




    笑顔で美穂の元に走ってきた里香の笑顔がふっと消えた。
    そして、驚きの表情を浮かべ、先輩を呼び捨てにして見つめる。




    (なにこのドラマか何かみたいな展開・・・・・)




    「みっちゃん・・・・?りぃ・・・・・?」




    何かが、起きる予感がする・・・・私の胸は、ざわついた。





引用返信/返信
■21627 / ResNo.5)  
□投稿者/ 楼 一般♪(7回)-(2012/09/08(Sat) 20:50:10)





    立ちつくし、お互いを黙り込んだまま見つめあう3人。
    このままでは入口近くだし邪魔だから、中に入るよう促す。
    3人は黙ったまま中に入り、体育館の隅に座り込んだ。
    私も3人と並んで座り込んで、どうしたもんかと考える。




    (・・・・これは、どういうことなんだ・・・・・?)




    3人とも黙ったままで、どうしたらいいか分からない。
    どうやら何かあった関係らしいけど、私はそれを知らない。




    「あのさ・・・・・どういうことなの、これ。説明してくれる?」




    私がこう聞くと、お互い顔を見合わせていたが、里香が口を開いた。




    「前、話したでしょ、双子の話・・・・・私が好きだった方の、片割れの方」




    つまり、里香の忘れられない人の、双子の姉だか妹だかが、先輩だと。
    数年ぶりに突然再会したんだったら、そりゃあ戸惑うのも頷ける。
    美穂は体育座りをしたまま俯き、床をじっと見つめたまま動かない。




    「で・・・・・美穂と先輩は?」



    「私とみっちゃんは・・・・・昔、付き合ってたの・・・・・」



    「つまりは、元カノ?」




    里香の忘れられない人の双子の片割れは、美穂の元恋人で、3人が再会。
    なんとまあややこしく波乱が起こってしまいそうな展開なんだろうか。
    それに挟まれてしまった私は、これからを想像して頭を抱えた。




    「とりあえずさ・・・・場所移動しない?」




    何事だと注目を浴び始めたのもあり、3人を再度促して体育館を出る。
    そして私と里香と美穂は着替えを済ませ、4人で駅前のカフェに向かった。
    その途中でも誰もしゃべらず、あまりおしゃべりではない私はまた困っていた。
    こういう時に場を盛り上げてくれるのは里香だけど、今は無理そうだ。





    私たち4人はきまずい雰囲気のまま、明るいカフェの1番奥のテーブルへ。
    ・・・・・空はオレンジ色に染まって、そろそろ夜を迎えそうだった。





引用返信/返信
■21628 / ResNo.6)  
□投稿者/ 楼 一般♪(8回)-(2012/09/08(Sat) 22:22:11)




    それぞれ飲み物ぐらいは、と飲み物を注文してからの話は、こうだ。










    里香と離れ離れになった先輩の片割れ、亜優さんは、しばらくふさぎ込んだ。
    先輩は必死で亜優さんを慰め、支え、長い月日を経て元気を取り戻した。
    先輩と亜優さんは母親と、弟さんは父親と一緒に暮らしていたという。




    2人で一緒に地元の高校に進学し、大学を目指した。
    しかし亜優さんは途中で志望を変更、専門学校に入学したらしい。
    亜優さんは今は他県の専門学校でエステの技術を学んでいる。
    それでも先輩とは1か月に1回は会っているとのことだ。










    そんな先輩が美穂と出会ったのは、中学校生活が残りわずかな時。
    同じ部活に所属していて仲が良かった美穂と、連絡先を交換。
    それからメールのやり取りや電話のやり取りが始まった。
    休みには一緒に遊んだり泊まりに行ったり来たりする仲になった。
    そして先輩が高校に入学する前に・・・・付き合い始めた。
    だけど忙しさゆえのすれ違いと先輩の気持ちが冷めたのが原因で破局。
    2人は別々の高校に進学して、別れてからは会っていなかった。










    「まさかこんなことになるなんて・・・・・同じ大学なんて・・・・・」




    紅茶にミルクとシロップを入れた先輩は、それをゆっくりかき混ぜた。
    里香も美穂も、無言でココアと抹茶オレを喉に流し込んだ。
    私はコーヒーを飲むのも忘れ、どうしようかと考えを巡らせていた。
    でも、何も思い浮かばない、まあある意味当たり前かもしれない。




    「あの・・・・これから、どうするの?」




    最初に口を開いたのは、里香だった。




    「私たちはきまずかったりするけど、葵は関係ないし・・・・」



    「そうだよね、葵は関係ないよね・・・・」




    1番気まずいのは、元の関係が恋人同士だった、先輩と美穂だ。
    里香も里香で戸惑うかもしれないが、先輩と美穂の方が気まずいだろう。
    先輩が亜優さんとやらだったら、里香も気まずいかもしれないけど。




    「まあ私はとりあえず、重い空気にならなければ構わないです」




    そうは言ったものの、果たしてその願いが実現するのだろうか?
    しばらくは特に先輩と美穂が気まずいだろうから。




    「・・・・・分かった。努力はする」




    美穂はそう言ってくれたけど、私の気持ちはいまいちなままだ。





    その日は結局、特に何も変化がないまま、解散した。





引用返信/返信
■21648 / ResNo.7)  楼さんへ
□投稿者/ nico 一般♪(1回)-(2012/09/26(Wed) 05:39:23)
    面白いです(>∀<)

    続きが気になりますので
    是非ともお願いします!!


    (携帯)
引用返信/返信
■21775 / ResNo.8)  Re[1]: ヤクソク
□投稿者/ 夢 一般♪(1回)-(2013/11/12(Tue) 23:11:23)
    面白いです!!

    ちなみに、この名前は適当に付けられましたか?
    って聞くのは、年上の知り合いと同姓同名なので…。
    宜しくお願い致します。
引用返信/返信

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■21349 / 親記事)  漆黒の夜
□投稿者/ Kaoru 一般♪(1回)-(2009/04/07(Tue) 13:54:34)


    この話は実話にフィクションを混ぜたお話です。

    ストーリーの進行状により一部少しだけ男性のような方が出てきますがトランスだと言う設定ですのでご了承下さい。


    kaoru

    (携帯)
引用返信/返信

▽[全レス8件(ResNo.4-8 表示)]
■21353 / ResNo.4)  
□投稿者/ Kaoru 一般♪(5回)-(2009/04/07(Tue) 14:01:05)


    「どんなお仕事してるんですか?」


    『運送ですね』


    「え〜キツそうなイメージ」


    『毎日ヘロヘロですよ』


    マイカと仕事の苦労話に花が咲いた頃、黒服がマイカさんお願いしますと声をかけた。


    「今日はありがとうございます楽しかったです♪」


    ポーチを片手に持ちマイカは席を立つ。


    そういうことか。


    次に来たのは清楚な感じのキャバ。


    先ほどと同じように名刺を受け取り水割りを作られる。


    名刺にはアイと書かれていた。
    この時点で6杯くらい飲んだかな。


    酒に強くない僕はボーっとしていた。


    「大丈夫ですかぁ〜?」


    アイが僕の顔の前で手をひらひらさせる。


    『少し酔ったみたい』


    おしぼりで顔を冷やし、ぼやける視界を押さえた。


    「アイも実はお酒弱くって(笑)」


    『水商売してても強くない仔いるんですね〜』


    「たくさん居ますよ♪」


    『普段あまり飲まないし、でもせっかく作ってくれるからって…ついついペース上がっちゃって』


    「そんなことしてたらダウンしちゃいますね〜お酒作るの仕事だから気にしなくていいよ」


    アイは表情がコロコロ変わって楽しい。


    ユリカみたいだな…。


    僕はほんの少し昔を思い出し苦笑いした。


    「そろそろお時間なんですが、ご延長は如何なさいますか?」

    タツヤ先輩はチェックと言い会計を済ませた。


    一時間で二人、13500エン


    高いなぁ〜やっぱ。


    この時はそう思った。


    タツヤ先輩とは別のタクシーに乗り込み帰路に着くと時刻は午前一時を回っていた。


    水商売にハマったら終わりだろうなぁ〜。


    まぁそんな余裕もないか。

    (携帯)
引用返信/返信
■21354 / ResNo.5)  
□投稿者/ Kaoru 一般♪(6回)-(2009/04/07(Tue) 14:06:46)


    毎日毎日仕事をして、帰るのは夜の22時過ぎ。ご飯を食べて眠るだけの生活リズムが僕にとってストレスだった。


    そんな折り、ビアン仲間のハイジ君から電話がかかる。


    「ユズキー?いつ暇?」


    『夜ならいつでも』


    「じゃあさ、明日飲みにいこ」

    『まさかキャバクラ!?』


    「いやいや、そんな高いとこ行かないから(笑)ラウンジだよ」

    ラウンジは指名とかが無く、ボトル入れれば何時間でも居れるらしい。


    キャバクラは時間制だから、ラウンジの方が安い。


    「お気に入りの子紹介するよ」

    最近僕の周りは夜の店に入り浸る人が多くなっていた。


    みんな、寂しいんだろうな。


    電話を切った後、何故かアイを思い出した。


    ユリカみたいに笑顔が可愛くて、見てるこっちが楽しくて仕方ない。


    また会いたいな…。


    いやいや、何を思ってるんだ僕は。


    これじゃあ営業課の田中さんと一緒じゃないか。


    その夜僕は中々眠れなかった。

    (携帯)
引用返信/返信
■21355 / ResNo.6)  
□投稿者/ Kaoru 一般♪(7回)-(2009/04/07(Tue) 14:08:42)


    「よっ!」


    『こんばんわ〜』


    ハイジ君と合流したのは夜22時過ぎ。


    街のネオンが光り、僕らを眩しく照らす。


    幸いにも、平日のせいか人はまばらであった。


    「行きますか!」


    ハイジ君はスタスタと歩き、路地裏に入り込む。


    その背中を追い、僕も路地裏に消えた。


    繁華街から離れたその場所に、ひっそり佇む『ラウンジ・渚』があった。


    「いらっしゃい」


    ドアを開けると、ママが優しく笑いかけていた。


    店内は小さめでカウンター6席にボックスが二つ。


    僕らはボックスに案内された。

    「ママ、ミチルちゃんは?」


    ハイジがニタニタ笑っている。

    キモッ笑


    「居るわよ〜。ミチルー!ハイジちゃん来てるわよ」


    ママが呼ぶとカウンター奥の部屋から綺麗な女性、恐らくミチルが現れた。


    「ハイジ〜来てくれたん?」


    「おう!久しぶり」


    「お隣はお友達?初めまして、ミチルです」


    僕は軽く会釈して、笑ってみせた。


    「この子はユズキ。うちのダチだから仲良くしてあげて」


    「了解♪ミチルの名刺良かったらもらって下さい」


    ミチルから僕は名刺を受け取り財布に閉まった。


    キャバクラと違って雰囲気は優しく落ち着いていて僕は楽だった。


    酒が進んだ頃、話題は他店の話になった。


    「ハイジたちは、ミチル以外のお店に行くの〜?」


    「うちは行かんよ(笑)ここ気に入ってるからさ」


    ミチルはありがとう〜とハートマークをたくさん飛ばしながらハイジに抱きつく。


    『僕はこないだ会社の付き合いでキャバクラに行きましたよ』

    「マジか!何処の店?」


    ハイジが目をキラキラさせて聞いてきたのでアイの話をした。


    「それミチル知ってるわ!club ナインでしょ!」


    『うん』


    「ナインのアイちゃんとミチル仲良しだよ〜アイリちゃん喜ぶよ!お気に入りって知ったら」

    「おぉ!ユズキやったなぁ〜」

    意外に繋がってしまったことに世間の狭さを実感した。


    「また飲みに行ってあげて♪」

    また………か。


    もう会うことはないと思っていたアイ。


    もう一度会いたいと思う。


    ユリカに似てるから好きなのか?


    アイが気になるのか?


    もう一度確かめたい。

    (携帯)
引用返信/返信
■21356 / ResNo.7)  
□投稿者/ Kaoru 一般♪(8回)-(2009/04/07(Tue) 14:09:35)


    「ユズキ!ユリカを越えろ!」

    ベロベロになったハイジが肩に腕を回す。


    「ユリカ?」


    ミチルが不思議そうに僕を見る。


    『昔の恋人ですよ』


    ハイジの頭を殴り、酒を煽った。


    「ごめん、ユズキ」


    普段のハイジならユリカの名前を絶対口には出さない。


    それはタブーだから。

    (携帯)
引用返信/返信
■21394 / ResNo.8)  感想
□投稿者/ みさ 一般♪(1回)-(2009/04/27(Mon) 10:42:07)
    続きがみたいです♪
引用返信/返信

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■19438 / 親記事)  君と。
□投稿者/ 累 一般♪(1回)-(2007/07/10(Tue) 08:28:36)
    「維にはわかんねーよ!僕の気持ちなんか!!」

    バタンッ

    閉まるドア。
    またこのパターン。

    維は部屋の、閉まったドアを見つめた。

    …今晩も、帰って来ないんだろうな。

    浮かんだ言葉がまた維を追い詰める。
    カシュッ

    君を苦しめたかったんじゃない。
    責めたかったんじゃない。
    …ただ、君が

    (携帯)
引用返信/返信

▽[全レス8件(ResNo.4-8 表示)]
■19447 / ResNo.4)  君と。3
□投稿者/ 累 一般♪(5回)-(2007/07/11(Wed) 07:26:54)
    …今に至る。
    会社は軌道にのり、裄は仕事を辞めた。

    綺麗な維に憧れと羨望を抱いていた裄は、髪をオレンジ色に染めた。
    太陽のような存在でいたい。
    見た目から中身を奮い起たせたい。

    髪を染めることで気持ちも落ち着いた。



    (携帯)
引用返信/返信
■19459 / ResNo.5)  君と。4
□投稿者/ 累 一般♪(6回)-(2007/07/12(Thu) 20:14:15)
    カタン…

    そう、私が彼女と別れられずに体の関係が続いていたあの日も、君はそのドアから飛び出した。


    ーガチャ…
    『ゅ、維?』

    白いシーツ
    歪むしなやかな腰の線
    綺麗な長い髪の毛
    白いなめらかな肌

    「あ、裄。ごめんね、今…」
    バンッ!


    ー恥ずかしく思った。君はかっこいいし綺麗だから、恋人がいて当然。なのに、僕は嫉妬した。君は僕をそんな風に見てないことくらい、わかっていたはずなのに。

    (携帯)
引用返信/返信
■19460 / ResNo.6)  君と。5
□投稿者/ 累 一般♪(7回)-(2007/07/12(Thu) 20:32:50)
    2007/07/12(Thu) 23:22:26 編集(投稿者)

    裄はそれからしばらく家にこなくなった。忙しいんだと、気にしないようにした。
    …でも、気になった。何で気になるのかは、わからなかった。不思議な気持ちだった。

    『会いたい』一言メールした。

    「維。」
    目の前に現れた君を抱き締めて、もうはなさないと思った。

    その夜私は、君を抱いた。

    (携帯)
引用返信/返信
■19474 / ResNo.7)  君と。6
□投稿者/ 累 一般♪(8回)-(2007/07/14(Sat) 07:08:02)
    焼けた肌
    映える綺麗なオレンジの短い髪
    意外に細い首すじ
    緊張した頬
    そらした瞳

    すべてが新鮮で。
    いつもの君とは違うその表情に夢中でキスをした。

    君の目には私がうつっていてほしくて。告白できないまま、彼女と別れられないまま…。

    君は、今どこにいる?

    篠のところ?亜美ちゃんの家?
    それとも、佐奈のところ?

    君が誰と何をしようが、私には束縛する権利も嫉妬する権利もない。

    君だけの特別に、なりたい。

    (携帯)
引用返信/返信
■19480 / ResNo.8)  君と。7
□投稿者/ 累 一般♪(9回)-(2007/07/15(Sun) 23:59:11)
    ー僕はまた逃げた。
    あなたには愛しい恋人がいる。
    突きつけられる事実に、僕は耐えられなくて。

    「佐奈」
    「裄、いらっしゃい」

    招き入れて優しく包んでくれる佐奈に甘えて眠りにつく…

    このままじゃいけない。なのに進めない。
    いつまで想えば、あなたは僕をみてくれますか?

    「…裄…」
    佐奈を抱いている僕を軽蔑しますか?
    あなたが彼女を抱いて帰ってきたのをみて、嫉妬せずにはいられない。
    僕はあなたを愛しています。

    (携帯)
引用返信/返信

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■18740 / 親記事)  チェリー1
□投稿者/ 恵麻 一般♪(1回)-(2007/04/19(Thu) 23:04:42)
    寒さが一段と厳しくなっている1月半ば。
    外は北風が窓を打ち付けるかのように吹く中、一人の少女が問題集とにらめっこしている。 が、北向きの部屋のため、エアコンでもつけなければやってられない。
    問い1の途中で公式はとまったまま、彼女、桜 美咲の思考もストップ中である。

    手のひらを こすりあわせて 息を吐く やってられない やめてやる

    (おっ? あたしって天才)

    先程までうんうん唸りながら考えていた数式はどこへやら、くだらない歌を心の中で詠んで一人自画自賛していた美咲だがー



    「ぶっ・・・! なんだよ そのセンスねー歌は!」
    「げっ・・・! なっちゃん 聞いてたのっ?」
    「いや、聞いてたも何も、人の隣でつぶやいてたら聞くデショ」

    そういい、なっちゃんー 高田夏季はカラカラと笑う。

    (やだ、てっきり心の中でつぶやいてたつもりだったのに〜・・・)

    「今は数学の時間なんですけど、美咲さん? うちのガッコ受かりたいならもっと力いれてやんな〜 美咲が落ちたら私の顔がたたんでしょ」
    「・・わかってるよ・・あ、今日は部活いいの?」
    「早引けしてきましたよ〜 かわいい美咲のために」
    「かっ・・・・!」
    美咲のほっぺたに手を添えながら答える夏季に、思わず真っ赤になる。

    (バカ、女たらし、ヘンタイ・・・)
    決して本人を前にしてはいえないので、心の中だけでつぶやく。

    もうどのくらいこの人の放つ言葉、一挙一動にドキドキさせられてきただろうか。
    それはもう両手では数え切れないくらい。こうして週に2回、家庭教師をひきうけてくれるようになってからというもの、心臓がわしづかみにされるような想いを何度も味わっている。

    現生徒会長、スポーツ万能、秀才、眉目秀麗、人望が厚い
    高田夏季を一言で語るとこんな感じだ。
    まるで映画から抜け出たヒーローみたいだが、一つ違うところがある。
    ヒーローではなく、ヒロインなのだ。

    そう、高田夏季はれっきとした女。
    中世的な容貌で背も高いせいか、制服を着ていないと今でもたまに男に間違われることがある。
    小さな頃から夏季の後にくっついていた美咲。 夏季は彼女にとって憧れの存在だったのだ。

    しかし、そんな美咲を快く思わない女子連中からの嫉妬ゆえの罵詈雑言が、次第に二人の間に距離を作ることになる。 もちろん、それは美咲からの一方的なものだったのだが。

    「あんた、高田夏季のナニ?」
    耳が腐るほど尋ねられた質問に答えるのも決まってるー 

    「・・・従兄弟です」

    そう、高田夏季と桜美咲は従兄弟同士。
    その言葉を聞いた彼女らの反応もいつも同じだった。
    口にこそ出さないが、視線でわかるというもの。釣り合わないのは百も承知なのだ。


    悪意の篭った視線に耐え切れず、置いた距離。
    しかしそれがかえって夏季への想いを美咲に気づかせるきっかけへとなり、
    よりいっそう彼女を苦しめる結果となった。

    一緒にいることで感じた夏季への劣等感
    離れることで感じた狂おしいほどの恋慕

    どちらも苦しいのは同じだった。
    だけど、どうせ苦しいのならば・・・そばにいる苦しみを選ぼう。





    「あらっ?夏季ちゃん来てたの〜? いらっしゃいっ!」
    ノックもせずに美咲の部屋のドアを開けた母は嬉しそうに声を上げた。
    「ちょっとお母さん〜 ノックしてから入ってよ〜」そう抗議の声を上げた彼女を無視してずかずかと部屋へ上がりこむ。

    「こんばんは、おばさん。おじゃましてます〜」
    「いいえぇ〜 夏季ちゃんなら大歓迎っ! 悪いわねえ、この子の勉強見てもらって・・・あ、でも今日は家庭教師の日だったかしら?」
    「いえ、違うんですけど、そろそろ受験も近いし心配になって勝手に押しかけてるんです」
    「まぁあああ・・・! 何ていい子なのっ!!夏季ちゃんってば!」

    (・・・・ココにも夏季信者が一人)
    ずずず〜・・・っとお茶を啜りながら母の蕩けそうな顔を横目でちらりと見やる。

    夏季ちゃんはすごいわね〜 優等生であんなにかっこいいなんてっ!
    これも母の常套句だった。若かりし頃、姉(夏季の母)と足繁く宝塚に通っていたことのある彼女からすれば、夏季はもろヒット・・・らしい。

    だからこうやって勉強の合間にひょこっと顔を出しては、夏季を褒め称えるのが母の日課となっている。

    (私より、絶対かわいがってるよなあ・・・夏季のこと)
    夏季と距離を置いたのも、少なからず関係あることは二人には内緒だ。


    「ねえ夏季ちゃん。この子急に貴方と同じ学校目指すって言い始めて嬉しかったのは事実なんだけど、大丈夫なのかしら? ちゃんとできてる? あそこは偏差値も高いし・・心配なのよねえ」

    前から気になっていたことなのか、珍しく真面目な顔で夏季に問いかけた。決して悪い成績ではないが、飛びぬけていいわけでもない。中の上くらいの美咲の成績では正直星蘭女子は厳しい。それは担任の教師、そして美咲の母親二人の見解だった。
    この辺一体でも進学校として知られる星蘭女子へはかなり狭き門なのだ。

    「大分成績もあがってますし、大丈夫ですよ。私が合格させますから。」
    そのために家庭教師じゃない日にもこうやって勉強をみてくれている。嬉しい反面、なんだかせつなくもあった。 しょせん、従兄弟だからしてくれてることなのだろうと。

    夏季にそう言われて安心したのか、母は満面の笑顔で立ち上がり、よろしくねと微笑んだ。
    (やっといってくれるか・・・)
    母のしゃべりだすと長いのだ。だけど、それも気が済んだのだろう。
    そろそろ問題に集中しないと・・・・そう思い直した美咲を一瞥した母の一言。

    「私ねえ嬉しいのよ。またこうやって美咲と夏季ちゃんの仲いい姿みられるの。ほら、一時期貴方たち距離を置いてた時あったでしょ? 私さびしくてさびしくて・・・この子のことだから変な劣等感感じたんでしょうけど・・・」

    (な、なぜそれを・・・)
    背中に嫌な汗をかき始めた娘に母は気づかない。

    「だからね?美咲が星蘭女子受けたいって言った時ほんとーに嬉しかったのよ? だから頑張ってちょうだいよっ?」
    言いたい事は言ったとばかりに母は背を向けて部屋を去っていく。


    (う・・・なんか気まずい・・・)
    母が去った後のこの静けさ。彼女が余計な爆弾を残していくものだからなんと言っていいかわからず美咲は混乱する。必死にこの場を取り繕う言葉を探そうとするがあせればあせるほど頭の中は真っ白だ。

    「・・・・美咲」
    「・・えっ・・!」

    下を向いていた顔を驚いてあげれば、目前に迫る夏季の端正な顔。
    身体中の血が一気に駆け巡り顔に集まる。身体に力が入って一ミリも自由意志で動かせない。


    「・・・私は嬉しいよ。美咲がそばにいてくれて」

    数秒の沈黙の後、じゃあ今日はコレでお開きな。 そう言って頭をぽんぽんと叩き、あっという間に部屋から出て行ってしまった。


    「ずるいよ・・・・そんなこと言わないで・・」そんな呟きが思わず漏れた。
    だから、私は貴方の事をあきらめられないんだ・・・
    いつだって私の前を走ってて。いつだって輝いてて。
    夏季の一挙一動に振り回される私は何て滑稽なんだろう。
    彼女にとっては何気ない一言でも、美咲にとってはそうではない。

    狂おしいほどのこの想いを恋と呼ぶならば
    私は同性の夏季に恋をしている。

    もう逃げない。正々堂々とこの気持ちに向かい合ってやるんだ。
    改めて認めざるを得ない状況に一人決意を新たにする美咲だった。











引用返信/返信

▽[全レス8件(ResNo.4-8 表示)]
■18753 / ResNo.4)  Re[2]: こんばんは
□投稿者/ 恵麻 一般♪(4回)-(2007/04/21(Sat) 00:52:54)
    優貴さん、こんばんは〜
    おもしろいといっていただけるなんて、作者冥利につきます
    これから更新するのでよかったら見てください^^
引用返信/返信
■18755 / ResNo.5)  チェリー2
□投稿者/ 恵麻 一般♪(6回)-(2007/04/21(Sat) 00:59:26)
    pipipipipi・・・・

    すっぽり被った布団の中から、腕だけをもぞもぞと出して眠りを妨げる音をストップした。
    いつもならここで2度寝という名の脳内旅行へとトリップするのだが、今日だけはそうもいかない。
    上半身を起こし、思いっきり伸びをする。

    (今日は入学式か・・・)
    そう、夏季のスパルタ&美咲の努力が実を結び、見事星蘭女子への切符を手に入れたのだ。
    クローゼットの扉に真新しい制服がかけてある・・・・はずなのだが。


    「あ、あれ・・?ない」
    代わりにあるのは地元の公立高校の制服だ。滑り止めとして受けてはいたが、制服を購入した覚えはない。
    この状況を飲み込めずぽかんとしていると、ドアの向こうの階段の音に気づいた。

    「あら、起きてたのね」
    「おっ、おかあさん!ちょうどよかった! 私の制服はどこ?」
    母が部屋へと入り込むなり、美咲は彼女にしがみつきながらそう問うた。
    「・・・どこ?目の前にかかってるじゃないの」
    顎でついと示した先には、先程の制服がかかってある。
    そうじゃなくて私が聞きたいのはと、くってかかったのだがー

    「あんなに夏季ちゃんに迷惑かけた結果がコレだなんて・・・お母さんがっかりだわ」
    手のひらを片頬にあてて溜息混じりにそう呟いた母の顔は・・・・どう形容したらいいのだろうか。
    まるで般若のようだった。このような顔は娘としてこの世に生を受けてから今までみたことがない。

    「え・・・どういうこと・・?」
    「どういうことも、こういうことも貴方は星蘭女子に落ちたのよ!」
    「残念だよ、美咲。絶対私の期待に応えてくれるって思ってたんだけどな・・・」
    その声にびっくりして振り返るとそこにはいつのまにか夏季が立っていた。いつもは周りが振り返るほどの容姿の持ち主がきつく眉を寄せる様は、恐怖を感じるのと同時に魅力的でもあった。

    (どうしよう・・・あんなに熱心に面倒見てくれたのに私ったら・・)
    やっぱり夏季のそばにいたいなんて私には分不相応だったんだ。


    泣きじゃくる美咲を見限ったのか、二人はつれなくその場をあとにしようとした。
    「まっ・待って!! 行かないで!!」
    もう口も聞いてもらえないかもしれない。そのことに恐怖を感じて必死で夏季の背中に腕を伸ばした。





    「・・・さき・・・・・美咲っ!」
    「・・・・え・・・? なっちゃ・・・?」
    美咲の見開いた瞳には、ベッドに腰掛けて心配そうに見詰める夏季の姿があった。
    「何か怖い夢見たか・・? 大丈夫?」そう言い、美咲の後頭部に手のひらをあててそっと胸に引き寄せる。片方の手は美咲の手をぎゅっと握ったまま。

    (夢・・?・・・あんなリアルな夢があるの?)
    思わず夏季の肩越しに目線を上げれば、元通り麗しき星蘭女子の制服が掲げられていた。

    よかった・・・と美咲はほっと息をついた。もしさっきの夢が事実だったらとてもじゃないけど夏季にあわせる顔がなかっただろう。よく考えたらお気楽母があのような態度を取る時点でおかしいのだが、自分でももともと受かるなんて自信がなかったため、気づかなかったのだ。
    そう、今だって安心させようと頭を撫で、手を握ってくれている・・・って あ、れ・?
    なぜ、こんな時間に夏季が・・・


    「・・ちょっ・・・何でココにいるの〜?! どっ・・・どうやってっ!!」
    美咲の母親はああ見えて雑誌の編集長を務めるいわゆる“バリキャリ”だ。 
    故に帰宅は大抵遅く、朝のこの時間は当然夢の中。少々のことでは滅多に眼を覚ましなどしない。
    当然うちの鍵など持ってるはずもなく、だからなぜ彼女がここにいるのかわからない。

    「あ?どっからって・・・あそこから」
    そう指し示す先には開け放たれた窓。カーテンがパタパタとはためいている。
    小さい頃はよくここから出入りしたじゃん? そう暢気に言うが今何歳だと思っているのだ。
    「あのねえ・・・こんな所から出入りするなんて、危ないでしょ? そっ・・それにっ・・・」
    そう言い二の句を告げないで赤くなる美咲を見て、夏季が訝しがる。

    美咲が赤くなるのも無理はない。 なにせ、今の格好は当然パジャマ。
    そして今の体勢といったら、まるで飼い主に甘える子猫のよう。
    女同士なら何も赤くなることはないと思うのだが、美咲にとって夏季は恋焦がれる相手。
    異性にされているのとなんら変わりはないのだ。




    顔を赤らめながら夏季の胸に抱かれる美咲。
    こんな面白い状況をほっといていられようか、否、である。
    「・・・まるでロミオとジュリエットみたいじゃない・・?」美咲の耳元でわざと吐息混じりに囁く。
    (まるで茹蛸みたいだな・・・)くっくっと忍び笑いを漏らす。
    ほんと、この子はからかい甲斐がある。だから何かに付けてかまってしまうのだ。
    美咲にはいつも笑っていて欲しい。そのためにはなんでもするつもりでいる。
    もう二度とあんな辛い思いはさせない。あの時にそう誓ったのだ。

    こんな事をしたら君は笑うだろうか。 それとも真っ赤になって怒る?
    反応が見たくてそっと握り締めていた手を引き寄せて、その甲にキスを落とす。
    ジュリエット? どんな悪夢を見てたの?と。









引用返信/返信
■18756 / ResNo.6)  チェリー3
□投稿者/ 恵麻 一般♪(7回)-(2007/04/21(Sat) 01:00:35)
    「ジュリエットかぁ・・・相変わらず飛ばすねえ 夏季サンも☆」
    「あのねえ・・笑い事じゃないわよっ なんであの人はあんななのっ? ふつーあーいうこと言う? 恥ずかしいったらありゃしないっ」

    初登校中の道すがら、ぷりぷりしながら口を尖らす親友の横で各務舞はにかっと笑う。
    二人して晴れて星蘭へ通える喜びを分かち合ったのもつかの間、先程の出来事を真っ赤になりながら語る美咲。ぶつぶつ「ヘンタイなんだから」と呟いている。
    「あたしも久しぶりだし会いたいな〜 夏季さんに。で、どんな夢見てたわけ?」
    「・・・・・・星蘭に落ちる夢・・・」
    「はぁ?」
    クールビューティが台無しだ、と美咲は思った。 何しろ鳩が豆鉄砲をくらったかのように口をぽかんと開けて自分を見つめているのだから。

    「・・なんでそんな夢みるかなあ」
    「だっ だってしょうがないじゃない! そりゃ舞は帰国子女だから英語もペラペラだしっ?頭もいいから星蘭の試験なんて簡単だったんでしょーけどっ 私はやっとの思いで入ったのよ?」

    やれやれ、すぐむきになるのも悪い癖だ。これも長い間あの夏季さんと比べられてきた結果なのだろうか。彼女には少々僻みっぽく、自分を過小評価しすぎるところがある。

    親友の自分が言うのもなんだが、美咲は普通に可愛い。
    ただ相手があの夏季さんだから。彼女と比べることなんてない。美咲には美咲の良さがあるのだから。
    芸能人相手に私なんて・・・と言ってるのと同じようなものだと舞は考えていた。


    「あのねえ・・私はそんなこと言いたいんじゃなくて。まだ発表前だったら分かるけどお分かり?
    今日は入学式だってこと。何でこんな日にそんな夢見るんだって言ってんの」
    「言わないで。なっちゃんにもそれは言われたから」
    それ以上はつっこむな、ということらしい。そっぽを向いた美咲に舞は溜息をつく。

    「それからさあ・・あんま自分を卑下する物の言い方って止めたほうがいいよ。気持悪いし。そんなだと夏季さんにも愛想つかされちゃうよ?」

    容赦ない言葉が美咲の胸に突き刺さる。好きでこんな風になったわけじゃないのだ。
    夏季のそばにいれば誰だって・・・・


    涙ぐんだ美咲を横目に舞は(いいすぎたか・・・)と罪悪感を感じていた。
    「ごめん。言い過ぎたかもだけど、でもね」
    「舞って前からだったけどオーストラリア行ってから毒舌に磨きがかかったよね」

    言い終わらないうちに美咲が切り出した。その顔に涙はもうない。
    彼女もこのままじゃいけないと思っているのだろう。その瞳にはっきりとした意思を感じる。
    「そりゃあたしも色々あったし? うじうじしてたら向こうではやってけないしね〜」
    そう言ってにかっと笑う。
    元々二人は幼馴染だったのだが、小学校へ上がる寸前に父親の都合でオーストラリアへと引っ越してしまった。以来メール等で連絡は欠かさず取り合ってきた仲だが、よくお互いに悩みを打ち明けていたりもした。特に異国で暮らす舞にとっては美咲との些細な繋がりはとても大事なものだった。

    おおらかな国だが、虐めがないこともない。 アジア人だと蔑まれたこともある。
    時に子供は大人よりも残酷な一面を持っている。
    幼少期に差別を受けた舞には、美咲の受けた傷が痛いほどわかる。
    だけど、そこで負けてはいけない。何も悪いことはしていないのだから。 もっと強くなってほしい。その思いがあるからこそ、きつく諭しもするのだ。

    (でも、もう必要ないみたいね)
    美咲の瞳は今までとは違う。これなら前みたいなことにはもうならないだろう。
    自分ももう日本にいるんだし、あの時とは違う。そばで守ってやれるんだから。何より夏季さんがそばにいる。

    手をかざしながら空を仰げば、春らしい陽気を感じることができる。
    (これからの学校生活が私たちにとっていいものでありますように・・・)
    隣にいる親友と微笑みあいながら、校門への道を急いだのだった。







    その頃、美咲の母 沙羅は姉である響子の元を訪れていた。といっても、隣なのだが。
    「いつも昼頃まで寝てるあんたがこんな時間に起きてるなんてめずらしーじゃない。なんかあったの?」
    「ん、これ夏季ちゃんにね〜」
    そう言って響子の目の前にマダムご用達のケーキ屋の箱が掲げられた。ココのは朝から並ばないとすぐに売切れてしまうほど大人気だ。どれだけ沙羅が朝早くに起きたかが想像できる。

    「ほんとに夏季ちゃんにはお世話になって・・・今日、星蘭の入学式なのよ。 在校生は確か休みよね?夏季ちゃん起きてる?」
    「ああ、あの子アレでも一応生徒会長らしいから、もうとっくに出てるわよ。 出る前に私の可愛い美咲ちゃんに窓から夜這い・・じゃないわね、朝這い?かけてたわよ? ったくあのバカ娘は。ちょっとは美咲ちゃんみたいに可愛らしくできないのかしらねえ」

    沙羅が夏季をベタ可愛がりしてるように、響子の美咲に対するソレも負けず劣らずのところがある。
    こうやってお互い実の娘より、姪を可愛がる光景は何とも滑稽だ。

    「でも美咲が星蘭に合格してくれてほっとしてるわ〜 姉さん覚えてる? 各務舞ちゃんって子」
    「確か、美咲ちゃんの幼馴染よね? オーストラリア行っちゃったんだったっけ?」
    「そう。高校からまたこっちで暮らすらしくてー それが同じ星蘭なのよ!」

    リビングのイスに腰掛けて紅茶を啜りながら、懐かしい話に花を咲かせた二人はふと昔のことを思い出していた。

    「これで夏季ちゃんも同じ学校だし・・・少しは安心だわ」
    「そうね・・・私も美咲ちゃんに二度とあんな辛い思いはさせたくないもの。 だから、最初は私は反対だったのよ?美咲ちゃんがあの子と同じ学校に入るのは」
    「姉さん・・・」

    美咲が夏季を避けるようになってからというもの、彼女を可愛がる叔母としては寂しかったがそのほうがいいのだとも思っていた。
    夏季のそばにいれば美咲は傷付くだけだ。彼女が悲しむ姿を見るよりはマシだった。

    「確かに私も心配だけれど、いつまでも逃げていては何にもならないわ。あの子達は従兄弟同士だもの。一生避けているわけにはいかないでしょう? それに・・・これは美咲が望んだことだわ。」

    そう、いつも逃げていた美咲が「星蘭に行きたい」と沙羅に頼み込んできたのだ。
    その瞳を見たとき、もう大丈夫だと確信した。あの子の決意が見えたからだ。

    本人がその気なら、私は親として応援するわ、そういった沙羅に響子もまた(私にできることなら何でもしよう)と決意を新たにするのであった。

























引用返信/返信
■18783 / ResNo.7)  NO TITLE
□投稿者/ 希 一般♪(1回)-(2007/04/23(Mon) 09:06:34)
    おもしろいです。続き楽しみにしています

    (携帯)
引用返信/返信
■19336 / ResNo.8)  チェリー4
□投稿者/ 恵麻 一般♪(1回)-(2007/06/25(Mon) 23:36:54)
    私立星蘭女子学院ー


    近所でも評判の美しい桜並木を上がった小高い丘の上にそれはある。
    星蘭の教育方針ー即ち『古き良きものを大切にし、尚且つ新しいものを取り入れていく柔軟な女性を育成する』を裏付けるかのように、明治時代からの古めかしき校舎と、最新設備を取り入れた近代的でモダンな校舎が違和感なく立ち並んでいる。

    生徒の自主性を重んじる学校は多々あれど、星蘭を代表する生徒会の持つ特異性は他にはないと言えるだろう。
    全学年から選ばれた生徒会のメンバーは星蘭の『顔』として常に良識ある態度と行動が求められる反面、ある権利が彼女らに与えられている。



    「へ〜 詳しいねえ。舞」
    「って、それはコレに書いてあるから」
    そういって舞は、学院案内のパンフレットを丸めてぽんぽん叩いた。

    「いや、でもその生徒会のこととか、校則を自分たちで云々は載ってないけど」
    そう、確かに教育方針はあれど、先程舞が言ったことなんてどこにも書かれていない。
    「当たり前よー コレは裏情報だもん。パンフにはそんなこと載せないでしょ」
    「・・・って情報源は?」
    「ん、うちの姉。」

    舞の姉、各務幸は今年度3年生で、生徒会長である夏季と同級生だ。
    夏季とはタイプが違うが、凛とした眼差しと腰まで伸ばした艶のある黒髪が妖しい魅力を醸しだして、今では夏季を人気を二分するほどまでになっている。
    彼女には美咲もまるで自分の妹のように可愛がってもらった。
    「そっか、幸さんだけ日本に残ったんだっけ・・・ ねえ、ところでそのある権利ってなんなの?」
    「それは・・・たぶんもうすぐわかるんじゃない?」
    舞の言うとおりその答えはすぐに解明されることとなるのだが、美咲はまだ知る由もない。




    適度な緊張感を伴う体育館の中。 入学式はまだ始まっていない。
    順序良く並ぶイスに座らされた新入生の顔立ちは皆初々しく、はつらつとしている。
    そんな中、壇上の影から美咲と舞を見つめる夏季と幸の姿があった。

    「美咲ちゃんいるわよ。久しぶりだわね〜 何年ぶりかしら」
    「こら あんま覗くなっつーのに」
    幸の首根っこを掴んでひっぱると、口を膨らませて抗議した。
    「ちょっとぐらいいでしょ。夏季だって気になるくせに。 ・・・でもよかったわよね」
    幸は眼を細めて美咲を見つめていた。
    「これで夏季が星蘭に入った意味があるっていうものよね」
    そう言ってにやりと妖しげな笑みを浮かべる幸にはきっと勝てない そう思った夏季だった。



    『これより第○回入学式をとりおこないます』
    マイクアナウンスの後、何事もなく式は進んでいるのだが。
    夢見が悪いせいで、次第に睡魔が美咲を襲おうとしていた。こういう堅苦しい雰囲気は苦手だ。
    眠っちゃいけないと思えば思うほど、眠気が倍増するのはどうしてなのだろう。
    軽く頭が船を漕ぎそうになって舞に注意された時・・・

    「新入生の皆さん。御入学おめでとうございます」
    澄んだ声がマイクを通して響き渡ると同時に美咲は、今までの眠気が嘘のようにぱちっと目を開けた。
    あっという間にこの場の空気が変わり、他の生徒たちも、明らかに先程と目の輝きが違う。
    同時に聞こえるのは「あの人かっこいい〜」という、お決まりのセリフ。

    「うわ〜 夏季さん相変わらずすごいね・・」
    「う、うん・・・」
    隣でそう呟く舞にも上の空の返事しかできない。 美咲の胸中は複雑だった。
    もう夏季は生徒たちの心を掴んでしまった。
    それも仕方のないことなのだろう。 だって何年も夏季のそばにいた自分でさえ、未だにドキドキさせられるのだから。 そんな夏季を誇らしいと思う。
    でもそれ以上にそんな夏季のそばにいることに引け目を感じてしまう。
    そして誰も夏季を見ないで欲しい 私だけの夏季でいてくれたらいいのにー
    そう思うのを止められなかった。
    ドキドキしながら壇上を眺める美咲と、夏季の視線が一瞬絡まり、そして・・・
    (・・え・・・・?)

    気のせいだろうか、いや、でも今確かに・・・
    夏季の形のよい唇が弧を描いた。微笑ったのだ。
    (何か、やな予感がするんですけど)
    夏季があのような表情をする時は、彼女が何かを企んでいる時。
    夏季と離れてからしばらく目にすることはなかった。
    (・・・・やっぱ入学やめとけばよかったかも・・?)
    夏季の微笑に軽く寒気を感じ、これからの学校生活に波乱があることを早くも察知する者が一人。
    何をカン違いしたのか、自分に笑いかけてると頬を染める者、大多数。
    そして・・
    (ふふっ 面白くなりそ〜)
    日本に戻ってきてよかったと、大いに学校生活を楽しみにしている者がこれまた一人。

    それぞれの思いが交錯する中、
    「改めて星蘭学院へようこそ。皆さんの学院生活が悩みのない楽しいものとなることを私達生徒会がお約束いたします。」
    生徒会長、高田夏季の声が体育館に響き渡った。











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