SMビアンエッセイ♪

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■5712 / 親記事)  永遠に家出
□投稿者/ 妖子 一般人(1回)-(2009/04/20(Mon) 02:27:58)
    −−−−−−−−−−
    ▼留美菜
    女性16歳
    誰か助けてください
    今日親と喧嘩して、
    ○○の近くのネットカフェにいます。
    お金が200円ぐらいしかありまえん。
    だれかこんな私を助けてくれませんか?
    メールが来たら返信します。
    誰か助けてください。
    (PC)
    6/31 18:30
    [削除]
    −−−−−−−−−−




    「は〜〜〜。何やってるんだよアタシ」外は雨、今日始めての母と喧嘩して家出した。喧嘩の理由は本のささいなことだった。学校の成績が落ちたの、最近帰りが遅いなど、そんな話をされ、つい家を飛び出しちゃった。

    今日は帰りたくなかった。友達の誰かの家に泊めてもらおうとしたけど、誰も泊めてくれる人はいなかった。

    みんな薄情だな〜
    仕方がなく持っていた携帯で適当な掲示板にさっきの文章を書いてみた。どうせメールなんて来ないと思うけど

    でもメールが帰ってきたらどうしよう。こんな掲示板にでの出会いに限ってロクなことがないってテレビでやってたっけ?知らない人の家に行っていろいろ変なこと要求されるのかな〜?そんな経験アタシないし・・・なんか考えただけで怖くなってきちゃったな〜
    仕方ない
    今から帰ってお母さんに謝ろうかな〜

    そんなことを考えて間にメールの受信があった。誰からだろう・・・お母さんかな〜

    −−−−−−−−−−
    受信トレイ
    6/31 18:40
    ○○○@○○○.ne.jp
    (掲示板見ました)
    忍 28歳
    1日で良ければ泊めて上げます。
    一人暮らしで寂しいので、
    話し相手なってもらうと嬉しいです。
    よろしければ連絡ください。
    090-1234-○○○○
    −−−−−−−−−−
    えっ!嘘っ!メール来た!どうしよう向こうは話し相手なってなればいいって言ってるし

    まっ!取り合えず電話して怖そうなおじさんだったらすぐ切ればいいし一日くらい帰らないでお母さんを困らせるのもいいかもしれないし

    アタシはその人に連絡することにしてみた

引用返信/返信

▽[全レス16件(ResNo.12-16 表示)]
■5750 / ResNo.12)  永遠に家出その10
□投稿者/ 妖子 一般人(12回)-(2009/04/26(Sun) 18:32:16)
    はぁ〜ん・・・どうしよう・・・ア・・・アソコが濡れちゃってる・・・

    「フフッ。どうしたのココが具合でも悪いの?」
    下着の中に手を入れてきた!

    「あっ・・・あぁ〜ん・・・」
    アイツの指がアタシの中に入ってくる・・・

    「もうここ、ぐしょぐしょだね・・・フフッ」
    ぐちゅぐちゅ・・・アソコから嫌らしい音がしてくる・・・

    「ダ・・・ダメ・・・そんなに・・・そこ・・・いじらないで・・・」

    「見て見て!あなたの下のお口からこんなに涎が出てきたのよ。フフッ」
    アタシの顔の前に透明の粘液の付いた指を持ってくる
    アタシは思わず顔を背けた

    「フフッ。相変わらず可愛い反応するのねルミは・・・」
    ぐっ!とアタシの身体が持ち上がる

    「それじゃ続きは私の部屋でしましょうね」
    そのまま昨日と同じようにお姫様抱っこされて食堂から出て行こうとする

    「い・・・イヤ!は・・・離して・・・ハァハァ・・・」
    アタシはあまり出ない力を振り絞って抵抗する

    「いい加減自分の立場をわきまえなさい」
    「痛い!!」抱いている手をアタシの胸に持ってきて強く掴んだ

    「ルミ。ちょっとお仕置きが必要みたいね」
    と怖いほどの笑みをアタシに向けてきた・・・
引用返信/返信
■5751 / ResNo.13)  永遠に家出その11
□投稿者/ 妖子 一般人(13回)-(2009/04/26(Sun) 18:33:17)
    再び先ほど寝ていた部屋に連れてこられた
    アタシの身体をベットに置くとアイツは縄を取り出し、拘束されていた手を解いた
    そして今度はアタシの服を脱がして縄で身体をきつく縛った

    「ハァハァ・・・い・・・痛い!と・・・解いてよ」

    「ダメよ!今からあなたをお仕置するんだから」
    アタシの胸の突起を強く摘む

    「ひゃ・・・ああぁ・・・ん」

    「フフッ。あっ!忘れてた。今からそこでおとなしくしておきなさい。すぐに戻るから」
    と言って部屋を出て行く

    ・・・しばらくするとアイツはビニールシートと袋を持ってきた
    袋から何か取り出した・・・あっアレは剃刀・・・何をするつもりなの・・・
    きゃ!冷たい!突然スプレーを取り出すとアタシのアソコの吹きかけてきた
    その刺激でさらにアソコから嫌らしい汁が流れてきちゃった・・・
    吹きつけられた場所には泡が付いていた・・・まさか・・・

    「それでは今からルミの大事なところに付いている邪魔な毛を剃るからね。フフッ」
    アタシの御尻の下にビニールシートを敷きそして・・・
    アソコに刃を当てる・・・

    「ひゃっ!ダ・・・ダメ・・・」

    「フフッ。あんまり暴れると留美菜の大事なところが血だらけになるよ・・・」
    ジョリ!ジョリ!綺麗に泡を取っていく・・・

    「ハァ・・・ハァ・・・い・・・いや・・・」
    剃られる刺激がなんだか気持ちいい・・・
    怖い筈なのに・・・あぁ・・・

    「ハァ〜・・・綺麗・・・留美菜のアソコ・・・ツルツルで綺麗だよ・・・」
    アタシのアソコを押し広げて

    「本当に綺麗なサーモンピンクね・・・フフッ」

    「ひ・・・酷い・・・最低・・・」
    ビクッ!アタシはアソコの突起が摘まれたので身体が跳ねた・・・

    「まだ分かってないようね!あなたは私のペットになったのよ!分からないならあなたの身体に痛みを刻みこんであげましょうか?」

    「ひっ!ご・・・ごめんなさい・・・ゆ・・・許して下さい」

    「そう・・・分かったのなら気持ちよくしてあげる・・・フフッ」
    そのままアソコの突起を指でいじり回される

    「あぁ・・・・ん・・・ハァ・・・ハァ・・・ダ・・・ダメ・・・」

    「どう?気持ちいい?」

    「は・・・はい・・・気持ちいいです・・・ハァハァ・・・」

    「私のことを愛してる?」

    「は・・・はい・・・留美菜は・・・し・・・忍様のことが・・・大好き・・・ああぁ・・・ん・・・」

    「私も留美菜を愛してる。フフッもう私から逃げられないようにしてあげる」

    ・・・それからアタシはめちゃくちゃに犯されてた・・・
    失神するまであの人に犯された・・・
引用返信/返信
■5752 / ResNo.14)  永遠に家出その12
□投稿者/ 妖子 一般人(14回)-(2009/04/26(Sun) 18:35:15)
    毎朝、目が覚めれるとあの人はいつもアタシの隣にいた
    そして熱い口付けをしてくる・・・
    たまにあの人の口付けで目を覚ます日もあったけど・・・

    食事、床に置いてある皿の中に、アタシは犬のように四つん這いになってご飯を食べる
    時々あの人はアタシに口移しで食事を与えてるくれることもあった・・・
    さらにアタシの身体をテーブルの上に乗せ、仰向けに寝かせ、足を開いて、アタシの秘部にワインなど垂らして飲んだりしていた・・・

    昼間は、あの人がいる時は館の中庭などを散歩させてくれた・・・もちろん首輪を着けてだけど・・・
    いない時には、部屋のベットに足を繋がれていた・・・ただ前よりも長い鎖で繋げれていたのでトイレなどは行くことが出来た
    部屋には本やテレビがあったけど、ほとんどの物の内容がレズものの卑猥なものだった・・・
    アタシは本を読んだり、あの人・・・いや忍様のことを考えながら自慰に更けていた・・・

    夜、忍様が戻ってくるとアタシをお風呂に連れて行ってくれた・・・
    もちろん一緒に・・・
    そしてまた朝まで忍様はアタシを貪るように抱いてくる・・・

    ・・・何日もそんな生活が続いた・・・
    気づいたことだけど、館にはアタシ達のほかにお手伝いさんが沢山いた
    みんな女性の方で忍様がいない時には、アタシの世話などをしてくれた
    皆さんは全員この館で住み込みでお仕事をしていた
    昔、親がいなくて路頭に迷って居た所を拾われたり、旦那と離婚してここに来たとか、借金のかたに連れてこられたりしたなど、話してくれた

    みんな忍様の家族に感謝いたのでアタシのことなどあまり気にせずに接してくれた
    そうそう忍様の家族のことだけど、どうやら忍様の館の当主の姪だった
    そして当主の方が由香利様という30代後半の方だってと忍様は話してくれた

    忙しい人でまだ会ったことがなかったどんな人か分からなかったけど・・・

    今日、忍様が自分のペットであるアタシを由香利様に紹介すると言うことで会いに行くことになった・・・

    部屋は館の3階の奥にあるという。忍様の部屋は2階にあったのでまず3階に行くことはなかった

    アタシはいつものシースルーのベビードールを着せられて両腕に手枷、首に首輪と縄を着けていた

    3階に上がり長い廊下の奥の扉を開ける

    「まぁいらっしゃい。あら忍、この子があなたの新しいペットね?」

    「フフッはい叔母様。名前は留美菜って言いますの」

    「まぁ可愛い。あなたが留美菜ちゃんね。よろしく」
    頭を撫でられる
    忍様より背は低いけどアタシより高かった
    見た目も綺麗でとても30代後半には見えなかった
    何処となく忍様に似て忍様が少し大人っぽくなった姿だった

    「私のペットも紹介してあげましょうね。可奈恵いらっしゃい」
    すると部屋の奥からアタシと同じ格好の女の子が出てきた
    アッ!この人!もしかして可奈恵先輩!?
    アタシの学校いた先輩だ!
    お金持ちのお嬢様だったけど確か会社の都合か何かで転校したって聞いたけど・・・

    「えっ!もしかしてルミ!?あなたなの!?」
    向こうも驚いていた・・・

    可奈恵先輩はアタシの部活の先輩でいつもアタシに優しくしてくれた
    テニス部の副キャプテンで、いつもアタシがキャプテンに苛められていた時に間に入って仲裁してくれたり、部活の後片付けを一人でやらされた時にこっそり手伝ってくれたり、アタシにとってお姉さんのような人だった・・・

    だから転校した後しばらく寂しかった・・・
引用返信/返信
■5758 / ResNo.15)  永遠に家出その13
□投稿者/ 妖子 一般人(15回)-(2009/04/27(Mon) 21:38:24)
    「ルミ!?あなたどうしてここにいるの?」

    「それはこっちの台詞です!転校した先輩が何でこんな所にいるんですか!?」

    「やっぱりあなただったのね。こっちにも色々事情があるの。それよりなんで・・・
    「はいはい!そこまで!」
    忍様がアタシと先輩の会話に割って入ってきた

    「二人はどうやら知り合いのようね。これならお互いの紹介をしなくてもいいわね」

    「忍・・・フフッ。それならお互いの主人とペットの親交を深めた方がいいわね」

    「叔母様・・・可奈恵なら前に可愛がったことがありますけど?」

    「ならあなたの留美菜ちゃんを私が可愛がってもいいでしょ?」

    「もう!叔母様は我がままなんだから」

    「フフッ。決まりね。来なさい可愛がってあげる」
    アタシの首輪の縄を持って部屋の奥のベットに連れて行く

    先輩のことはなんとなく察した。どうせアタシと同じように連れてきたか、借金のかたにつれてきたなどの理由でしょう
    そして由香利様のペットとしてアタシと同じように調教されたんだろう・・・

    由香利様に抱かれながらアタシは悲しくなってきた
    改めて自分が誰かのペットになったこと、大好きだった先輩との再会、先輩が既にペットになっていたこと、そしてアタシだけを愛してくれていたんだと信じた忍様のこと・・・
    そんな忍様にあっさり別の誰かにアタシを引き渡すこと・・・どうせアタシは忍様、あなたの欲望を満たす道具なんでしょ・・・

    「あぁ・・・ん。ダ・・・ダメ・・・き・・・気持ちいい・・・」
    由香利様がアタシの胸に愛撫する・・・結局アタシは快感に逆らえず声を漏らす・・・そんなアタシが悔しかった・・・

    「どうしたのあなた泣いてるわよ・・・」
    そっと由香利様がアタシの耳に囁く

    アタシいつの間にか泣いてたんだろう・・・

    「ごめんね・・・もしかして私みたいなオバさんに抱かれるの嫌だった?」
    なんだろう・・・この人・・・優しかった
    アタシは急に申し訳なく思ったのか首を横に振った

    「そう・・・でもあなたの泣き顔が可愛くて我慢できないわ・・・」
    そしてやさしい声で
    「ごめんね留美菜ちゃん・・・後で可奈恵と二人っきりにさせてあげる・・・」
    この人・・・もしかしてアタシが先輩のこと好きだと思ったから・・・
    そしてアタシの秘部に顔を近づけて・・・舐めてきた・・・

    「あぁ・・・っ・・・いぃ」

    この人は上手かった・・・
    忍様も上手かったけど・・・
    忍様とは違った上手さだった・・・
    やさしく・・・そしてしっとりと・・・気持ちいい・・・

    くちゅ・・・・・・ゆ・・・指が・・・は・・・入ってくる・・・
    か・・・快感で・・・頭が白くなってくる・・・

    どうせアタシはペットなんだから・・・
    あなた以外の人と気持ちよくなっていいよね・・・
    忍様・・・
引用返信/返信
■5759 / ResNo.16)  永遠に家出その14
□投稿者/ 妖子 一般人(16回)-(2009/04/27(Mon) 21:39:37)
    ・・・気がつくとベットの上で、アタシの隣に先輩が寝転んでいた
    他の二人は居ない・・・

    「お目覚めねルミ」

    「あっ・・・先輩・・・はっ!」
    アタシは咄嗟に布団の中に潜り込んだ・・・だって服着てなかったから・・・

    「アハハそんなに恥ずかしがらなくてもいいでしょ」
    そんな先輩も同じ格好だった・・・そして先輩も布団の中に入ってくる・・・胸がドキドキする・・・

    「ルミあなたは昔から恥ずかしがりやだね・・・」
    そうアタシは昔から恥ずかしがりやで中々人の輪に入ることが出来なかった・・・だから部活のキャプテンなんかに苛められたりした・・・でもそのおかげで先輩と知り合えた・・・

    「それより先輩は何でここに居るんですか?」

    「あぁ。それはね、あたしの家の会社の経営が危うくなって倒産しそうになったの。それで遠い親戚である由香利様が支援をしてくれることになったの。条件付でね・・・」

    「その条件って・・・」

    「そう。あたし・・・だから転校と言う形でこっちに来たの・・・そりゃ!最初は年上のそれも同性愛者の相手をするのは嫌だった・・・でもね由香利様は優しかった・・・」

    「優しかった?・・・」

    「始めてのあたしの処女も優しく奪ってくれたし、両親と違っていつも構ってくれた。ルミと離れ離れになったのは辛かったけど・・・由香利様会えてよかった・・・」

    「でも先輩!!あの人はアタシを抱いたのよ!!悔しくなかったの・・・」

    「悔しくなかった・・・って言うのは嘘になるけど、でもあたしもあの人のことを思って嫉妬できる関係にあるんだなぁ〜って思うとなんだろう・・・うれしい気がする・・・それにね、あたし前に忍様に抱かれてたことがあったの。よく由香利様の目を盗んでは抱かれたっけ・・・あの人は由香利様の姪だから直接由香利様に告げ口することが出来なかったの。でもある日それが見つかって忍様はお仕置されてたっけ・・・あたしもお仕置されるかと思ったけどあの後・・・由香利様にめちゃくちゃに抱かれたの。よく耐えたのね・・・ってね。まぁある意味それがお仕置だったのかもね。当分足腰が立たなかったから・・・」

    「でもそれとこれと何が関係あるんですか?」

    「分からない?」

    「えっ?」

    「仕返しよ。シ・カ・エ・シ。あたしが抱かれたね」

    「だからあんな口実立てたのね。でもそれでも理解できない」

    「う〜ん。そうかなあたしは由香利様の気持ち理解できるね」
    先輩がアタシを抱き寄せて

    「ルミが可愛いから」
    突然のことで戸惑った・・・

    「しばらく見ないうちに綺麗になったのね。髪伸ばしたの?」

    「先輩・・・カナ先輩が髪が長い子が好きだって言ってたから・・・」

    ギュッ!
    「うれしい!あたしの言ったこと覚えてくれたの!それに昔のようにそう呼んでくれるのね!」
    カナ先輩はアタシを強く抱いてきた・・・ドキドキする

    「ねぇ!しよっか!?」
引用返信/返信

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■5693 / 親記事)  鎮雛
□投稿者/ 葉 一般人(14回)-(2009/04/15(Wed) 01:48:44)
    ――かく浅ましき殺生の家に生まれ、
    明け暮れ物の命を奪う悲しさよ


    純白の半紙の上に青みがかった刀身が現れた時、ただでさえ静まり返った座敷の空気が止まった。
    外気に触れた刃は冷たい硬質の光をちらりと放ち、僅かに青みがかったそれは波間の魚の鱗を思わせる。ひんやりと静かで、どこか厳しい‥それは今、刀身に目を落とし検分する鑑定人の佇まいにも通じていた。
    「‥どないですか?」
    傍らから膝を進める年配の同業者を見る事もせず、恐らくは私と同年くらいの女鑑定人は呟いた。
    「業物ですね。村井さんのお見立て通り、江戸末期の作でしょう」
    「ほな、やっぱり‥?」
    頼りなげな声音に端で見守る私達も身をすくませる。しかし女鑑定人は音もなく刀身を鞘に納め、畳にそっと下ろして首を振った。
    「確かに浅右衛門のお墨付きはありますが、四つ胴や六つ胴ではありません」
    「あの‥」
    私は恐る恐る口を挟んだ。
    「四つ胴とか六つ胴って‥何ですか?」
    「人を二人重ねて断ち斬れば四つ、三人重ねて斬れば六つになります」
    女鑑定人は淡々と答えた。
    「刀の斬れ味を保証するために、実際に試し斬りをした刀につく呼び名です‥だから、売買の際に由緒書きには必ず記載されます。価格に直結する付加価値ですから」
    素人には腰が引けそうな説明に私はたじろぐが、隣の庵主さんは心からほっとしたように口を開いた。
    「ほな‥人を斬った刀ではないゆうことですか? ほんにもうそれだけが気に病めて‥」
    女鑑定人はいくらか和らいだ口調でそれに答えた。
    「浅右衛門が武家や富裕層に推薦した数ある刀の一つ、でしょう。刀工は関の世古春俊。収集家なら垂涎ものの一財産ですよ」
    「せやから、あんたはんにわざわざ来てもろたんですわ」
    土地の古美術商がしきりに額の汗を拭う。
    「こちらさんが日本刀もようさん持ってはるのは承知どしたけど、春俊の業物で由緒書きは浅右衛門、しかもこちらに来たのが明治末‥これは誰かて、まさかと思いますわ」
    女鑑定人は同業者を見てちらりと笑った。どうだか、と言いたげな笑いだった。
    「首斬り浅右衛門、それも最後の浅右衛門使用の刀なら、刀剣マニアでなくても高値をつける人はいるでしょうしね」
    ‥この国の死刑が明治の初めまでは斬首であった事や、それに従事した家系があった事も、長らく生家を離れて暮らし、これからその家を継ぐことになる私には無縁の話だった。

    (携帯)
引用返信/返信

▽[全レス34件(ResNo.30-34 表示)]
■5755 / ResNo.30)  鎮雛・30
□投稿者/ 葉 一般人(44回)-(2009/04/27(Mon) 03:55:52)
    怖かった。でも、だからこそ目を閉じられなかった。
    沙耶は、いつの間にか刀を掴んでいた。
    (そう言えば…どこに置いてたんだろう?)
    どうでもいいような疑問がよぎる―――そうでもしていなければ、耐えられない。
    ギシッ、ギシッ…
    足音が障子のすぐ外までやって来て、しんと途絶えた。


    突然、大きな音と共に障子が破られた。
    私は悲鳴を上げた。障子の一角から、五本の指が突き出している。
    「いや………!」
    私は後ずさり、次の瞬間に声すら出なくなった。
    障子に、はっきりと人影が映っていた。


    視界の隅に、棒のような物が飛んだ。
    私には、沙耶が刀の鞘を払った所は見えなかった。青白い光を見たと思った瞬間、障子は袈裟掛けに斬り倒されていた。
    『―――舐めるんじゃないよ』
    視界いっぱいに飛び散る血潮を見たと思った時に、沙耶とは違う、鞭のような女の声がした。
    『年季が違うんだよ、年季が』


    障子の向こうには誰もいなかった。
    床や障子を染めたと思った血潮もなく、廊下にはただ庭から吹き込んだいくひらかの桜の花弁が散っているだけだった。


    (携帯)
引用返信/返信
■5757 / ResNo.31)  感想
□投稿者/ momo 一般人(1回)-(2009/04/27(Mon) 14:58:15)
    今まで感想を書くのは無粋かと思ってましたが・・・。

    お話とても楽しく読ませてもらっています。
    世界観を大切にこれからも頑張ってください。
引用返信/返信
■5760 / ResNo.32)  鎮雛・31
□投稿者/ 葉 一般人(45回)-(2009/04/27(Mon) 22:06:50)
    俊江尼が住持をつとめる禅寺は、私の家から歩いて十分ほどの場所にある。
    「―――まあまあ、綺麗なべべ着せて貰うて…」
    母と同年ならば六十半ばだが、仕草や表情にどこか童女めいた所のある俊江尼は雛人形の包みを見ると目を見張り、いそいそと手を合わせた。
    「娘時分にこさえた晴れ着やなんかも祥子はん、みぃんな処分してしもて……まさか居んようになってから、手放しなさった娘さんにこないにして貰えるやなんて、夢にも思うておりませなんだやろなぁ…」
    俊江尼は愛おしげに目を細め、衣の袖でちらりと目尻を拭う。
    「あんじょう承りました。私も独りですよって、祥子はんと昔語りする気持ちでお預かり致しましょ―――時に羽希はん、吉崎はんは…?」
    「…はあ、あの」
    私はちょっと口ごもる。
    「今ちょっと、障子貼りを…」
    「へ?」
    俊江尼はぽかんとした。
    「少し前に新調したばかりどっせ」
    「はあ…ちょっと、色々…」
    私は首をすくめ、恐れ入る。
    「器用な人ですなあ…」
    俊江尼は感じ入ったように頭を振り、またひとしきり人形の包みをあちこちから眺めて感嘆し、はたと顔を上げて呟いた。
    「お蔵の方は、もう…?」
    「はい」
    私は頷いた。
    「さっき司法書士さんがいらして、目録をお渡ししました」
    「ほな、手続きもぼちぼち終わりですなぁ」
    少ししんみりした表情で、俊江尼は頷いた。
    寺はなだらかな山の中腹にあり、通された庵室は竹林に面している。言葉が途切れると葉ずれの音が波のように響き、胸を浸した。
    「―――本当に、よろしいんやな…」
    「はい」
    一度だけ、短いやりとりが交わされた。
    どちらの声も、穏やかだった。


    「どうだった?」
    縁側に新しい紙を貼り替えた障子戸を立てかけて、足を投げ出して煙草を吸っていた沙耶が顔を上げた。
    「喜んで下さってた―――それで袱紗とか、ぜひお願いしたいって」
    「ああ、それが一番喜ばれる。職人は仕事が増えてナンボだから」
    沙耶は小さく笑みを漏らし、生乾きの障子を振り返る。
    「枠とかは、接着剤でくっつけただけだから…」
    「気をつけるから大丈夫よ」
    そして並んで縁側に座り、庭とその向こうに広がる景色をぼんやり眺めた。
    「……供養塔に花、供えたんだ?」
    「ええ」
    「お仏壇のと同じだ」
    「そう」
    時間が、ゆっくり過ぎていく。

    (携帯)
引用返信/返信
■5761 / ResNo.33)  鎮雛・32
□投稿者/ 葉 一般人(46回)-(2009/04/27(Mon) 22:39:50)
    「見てきたけど…」
    私は背後の座敷を振り返る。
    「空になってたわ、一升瓶」
    「日本酒派だから……でも、飲ませ出したらキリがないよ」
    「明日、二日酔いで電車に乗るのかな」
    私の呟きに沙耶はちらりと視線を向け、再び煙草に火をつけた。
    「……あれ、置いていっていい?」
    「え?」
    沙耶は肩をすくめる。
    「からかわれるから……昨夜の……」
    私もつられて赤くなり、背中を丸めた。
    「大事な物なんじゃないの?」
    「売り物にならないし、もし盗まれても自力で戻って来るし……」
    また顔を出すから、と言って沙耶は俯いた。
    私はひどく安心した。
    「―――いつかは来るかもしれないよ、彼女」
    低い声で沙耶が呟く。
    「懲役になるかどうかも分からないし、懲役を終えた後かもしれない。それは彼女次第なんだけど―――」
    「……そうね」
    私は頷き、沙耶にならって足を投げ出した。
    「その時はまず、お茶でも出すわ」
    不意に、沙耶が弾かれたように笑い出す。
    私はちょっと驚き、そして笑った。


    (携帯)
引用返信/返信
■5762 / ResNo.34)  ありがとうございます
□投稿者/ 葉 一般人(47回)-(2009/04/27(Mon) 22:50:08)
    長々しい話を読んで下さった方やコメントを下さった方々に、今さらながらどうもありがとうございました…

    恥ずかしいやら、何とお礼を言えばいいのか、いやもう本当にお見苦しくてすみませんでした…汗しか出ません。

    ありがとうございましたm(_ _)m

    (携帯)
完結!
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■5679 / 親記事)  姫鏡台
□投稿者/ 葉 一般人(7回)-(2009/04/11(Sat) 03:41:30)
    近くの神社の境内に、月に一度骨董市が立つ。
    老舗の骨董店の三代目の友人に言わせれば「骨董じゃなくて古道具市」だが、その道の素人には小鉢や櫛、小さな珊瑚の簪や懐中時計といった細々な品を眺めるのはそれなりに楽しい。

    「うわ白藤堂はん堪忍しとくなはれ、目利きに見張られたら商売あがったりですわ」
    店番の古物商に手を合わされまくるのも嫌なのだと沙耶は言う。
    「大抵はわざと汚したり錆びさせて、古く見せかけてるだけよ。それならまだいいけど」
    それ以上はあえて言わないが、わざわざ補足してくれる同業者がいる。
    「うちは胸張って出しとります。全部御祓い済みですわ」
    ――ああまた地雷を踏んだ。同業者からそれを言われる事が、沙耶は一番嫌なのだ。時には同業者からも鑑定を頼まれる、『いわくつき骨董』の目利きである事が。

    「また持って帰れないような物を衝動買いするんじゃないよ、佳乃」
    うんざりした声を聞き流し、露店から露店を渡り歩く。骨董商が友達ならそこで買えと言われそうだけど、しがないOLの給料で買えるような品は沙耶の店にないから仕方がない。
    「あ、これ可愛くない?」
    私は露店のひとつの前にしゃがみこみ、目についたものに手を伸ばした。
    両手の平に乗るくらいの、朱塗りの姫鏡台のミニチュアだ。鏡も引き出しも精巧に作りつけてある。
    「ピアスとか入れとくのにいいよね‥これくらいなら持って帰れるから、文句ないでしょ?」
    「やめとき」
    声と動作が同時だった。沙耶は無造作に私の手から姫鏡台を取り上げ、元に戻した。
    「帰るよ」
    そのまま、反論を受けつける素振りもなく背を向けてすたすたと歩き出す。
    こういう時は何を言っても無駄なのは、長い付き合いで知っている。
    元々は共通の友人の誕生祝いの買い物だった。それをデパートで済ませた後、喫茶店で蒸し返してみた。

    「沙耶、さっきのあれ、何か憑いてたの?」
    「何の話」
    このご時勢にヘビースモーカーの沙耶は、そっぽを向いて煙草をふかしている。
    「だからさっきの姫鏡台‥売り物にしちゃいけないようなもんだったの?」
    「別に」
    沙耶は抑揚のない声で吐き捨て、テーブルの下で脚を組み換えた。
    「お金出して買うほどのもんじゃないでしょ。小物入れなら百均で十分よ」
    「ちょっとそれ、『用の美』で商売してる人のセリフ?」
    私は諦めたふりをして携帯で時刻をチェックした。沙耶には用事があり、骨董市が閉まるまでにはまだ時間がある。

    (携帯)
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▽[全レス7件(ResNo.3-7 表示)]
■5684 / ResNo.3)  姫鏡台・4
□投稿者/ 葉 一般人(10回)-(2009/04/11(Sat) 22:20:42)
    くちゅくちゅ‥聞くまいとしてもはっきりと、粘ったいやらしい音が耳に響く。片手は乳首に、片手は股間に吸いつかせたまま女はのたうつ。
    「ああ‥お願い、もう焦らさんといて‥お姐はん‥もう‥」
    小猫が甘えるような、息も絶え絶えな喘ぎ声。
    (お姐はん?)
    一瞬正気が戻り、そのついでにか、それまで見ていなかったものが見えた。
    女を取り巻く赤い枠――紅殻の格子のような――いや、違う。
    「‥あああああ!!」
    その瞬間、辺りを撫でるばかりだった指が充血したクリトリスをいきなり擦り上げた。
    「あっ、あっ、あ‥やぁ‥ああ、んんっ‥!!」
    電流のような快感が下半身から全身に駆け巡り、私はそのまま床に倒れ込んだ。

    気が付いたのは翌朝で、私はほとんど裸でフローリングの床に横たわっていた。
    「‥ない」
    まず最初に確認したのは、昨夜あの女がいた場所だった。いや女もそうだが――
    続いて小物の棚に目をやると、小さな姫鏡台は置かれたままの場所にきちんとあった。
    「でも―――」
    昨夜、目の前にあったのだ。それも普通の大きさで。
    立ち上がろうとすると身体の節々が痛かった。頭もぼんやりして、会社に欠勤の電話をかける事くらいしたできなかった。

    べとべとの体で布団にくるまっていると、携帯が鳴り出した。
    「会社に電話したら休んでるって言うから」
    沙耶だと分かると少し悩んだ。
    「うん‥風邪ひいた」
    やっぱり言わないでおこう。怒るに決まってる。
    「風邪? オール学級閉鎖でもインフルエンザが寄り付かないあんたが?」
    この女の辞書に気遣いという文字はないのか。
    「もう小学生じゃないんだから‥何?」
    「カブールがね、何か知らないけどあんたに連絡取れって言うから」
    「うっ‥」
    ほんの少し、頭がはっきりした。
    『カブール博の首』がまた戻って来ているのか。
    「べ‥別に何もないよ、微熱があるくらいで。ずっと寝てるし」
    「本当に? あたし明日から京都行くから呼んでもいないよ?」
    「大丈夫だってば‥」
    同じ言い訳を繰り返して通話を切り、布団の中で頭を抱える。
    (やばいかもなぁ‥)
    それでも、軽々しく説明できるような話ではない。私にも恥はある‥

    恥があるという事は、内心それを歓迎していると知られたくない事でもある。
    (来た‥)
    夜の訪れ、幽かな三味線、あえかな歌声。
    三日も経てば姫鏡台が普通サイズで現れる事も、初めは鏡の中だけだった女が生身を持って触れてくる事も気にならない。

    (携帯)
引用返信/返信
■5685 / ResNo.4)  姫鏡台・5
□投稿者/ 葉 一般人(11回)-(2009/04/11(Sat) 23:34:39)
    「‥お姐はん、嬉しおす」
    さらりとした黒髪が頬を撫でる。
    「ずうっと待っとったんどすえ、長いこと」
    ベッドに仰向けに横たわる私に跨り、赤い襦袢を肩から滑り落として女が囁く。
    身体の重みも温かさも普通の人間と変わらない。肌は白いが生きている人間のものだ。怖いという気持ちはなかった。
    女の指がパジャマの上から身体を撫で、乳首を探り布越しに愛撫する。私の腰の辺りに跨る女の秘所は既に熱く潤い、溢れている。
    「姐はんの意地悪‥」
    私のパジャマの前を開きながら女が呟く。
    「恥ずかしいの我慢してあんなに誘わしといて‥まだ焦らさはるの?‥」
    乳房をきゅっと掴まれ、顔を埋められる。指と唇と舌で丹念に撫で回され、泣きたいほどの切なさに胸が詰まる。
    「分かってる‥初めての時もそうやった‥教えてくれた時‥」
    女の唇が片方の乳首を包み、音を立てて吸う。その間にもう片方は女の指に絡められ、ますます硬くなっていく。
    「あっ‥」
    「気持ちいい? 姐はん‥気持ちいい?」
    絶妙な舌使いと指使いに身体が浮く。くすぐったいのと快感とで言葉にならない。
    「ああ‥お姐はんのおっぱい、美味しい‥」
    「ああ‥」
    私も手探りで女の乳房を掴み、闇雲に揉みしだく。乳首は既に硬く尖り、摘むと女の全身が痙攣した。
    「私にも‥頂戴」
    女は呑み込みも早く、互いの乳房が顔に当たるように身体の向きを変える。私達は赤子のように互いの乳首を吸い、舐め合い、甘噛みして喘ぎ合う。
    「‥んっ‥ん‥」
    互いの身体は重なったまま次第に下りていき、女は私の、私は女の股間に頭を挟んだ。
    「はあ‥」
    互いに太ももを抱き手の平を這わせ、ほとんど同時に舌を伸ばす。鼻先をぬめる繁みに埋め、一心不乱に舌先を動かす。
    「ああっ―――いい‥!」
    言葉とは裏腹に逃げようとする腰を両腕で抱きすくめ、硬くなったクリトリスにむしゃぶりつく。
    「気持ちいい‥」
    勝手に腰が動いてしまう快感の中、死んでもいいと私は思った。
    「うちも同じえ」
    心でも読んだのか、身体の下の方で女が答えた。
    「どんな客に抱かれても嫌なだけやった―――お姐はんだけや。ずっと、ずっと」
    喘ぎやよがりとは違う、童女のような声だった。快楽がひたすら募る中、頭の片隅の醒めた部分がそうか、と呟いた。そこまで言ってくれる人があるのなら、我が生涯に一片の悔いなしでも有りかもしれな‥
    「なっ―――」
    女が何か言った気がした。

    (携帯)
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■5687 / ResNo.5)  姫鏡台・6
□投稿者/ 葉 一般人(12回)-(2009/04/12(Sun) 00:49:10)
    それと同時に覆い被さっていた女の身体の重みと温もりが消え、私はうつ伏せにひっくり返された。
    だが、すぐに背中に重みを感じた。いく寸前だったので不満だったが、背後から乳房を掴まれてまた我を忘れた。
    「ああ‥」
    それまでとは違う、性急で激しい愛撫だった。唇がうなじを這い耳朶を噛み、 やや乱暴に背後から乳房を包み乳首を弄る。荒い息遣いが背筋を滑り、お尻の谷間から熱く奥に入り込む。
    「あ‥ああ‥」
    どうなってるの? そこは違う――どっちが舌で、どっちが指なの? いやどっちでもいい――
    「だめ‥もう、だめ‥」
    後は言葉にならず、全身が痺れて、弛緩した。

    我に返った時、私がいたのは死後の世界ではなかった。
    いや、ある意味、三途の川を渡って獄卒に閻魔様の前に引き据えられたのに等しい。日頃から喫煙厳禁の部屋で黙々と煙草をふかしているのは沙耶だった。
    「なんで‥京都‥」
    「買い付けるようなものがなかったから」
    相変わらずのにべもない口調。しかし、ベッドに腰かけるその足元を見て、私は凍りついた。
    「だからやめとけって言ったのに、全くあんたは‥」
    あの姫鏡台(買った時サイズ)がぺしゃんこに潰れている。いや、潰されている。
    「これは朱漆じゃないよ。多分、血」
    沙耶の淡々とした言葉に私は目をむいた。
    「あと、鏡の裏」
    言われるままに目をやると、割れて粉々になった鏡の台座に小指の先ほどの黒い絹糸の束のようなものが貼り付けてあった。―――これは、説明して貰うまでもなく、髪の毛だ。
    「心中物の芝居が流行った頃‥元禄くらいの物だと思う。想い人の形見か、心中立ての証に互いの血や髪を仕込んだ物かは分からないけどね」
    姫鏡台の残骸を見下ろしながら私は呟く。
    「近松の浄瑠璃を聞いたわ、女の」
    「そりゃ、場末の遊女でも唄えたでしょうね。当時は歌謡曲みたいなもんだから」
    「最初から分かってたの?」
    沙耶は横を向いた。
    「生々しくて嫌だと思っただけよ、今も気分悪いわ‥それよりあんた、服着たら?」
    そこで初めて、自分が裸だと気がついた。

    姫鏡台の残骸(沙耶が踏み壊したらしい)を焚き上げてもらった帰り、ふと聞いてみた。
    「そう言えば沙耶、あの時あたしの前にお風呂使った?」
    「はっ?」
    自分の店の玄関先で、沙耶は敷居にけつまづく。
    「なんで?」
    「風呂場の床に泡が残ってて転んだから」
    「す‥すいません」
    そのまま店の奥へ行こうとすると、がっしり肩を掴まれた。


    (携帯)
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■5688 / ResNo.6)  姫鏡台・7
□投稿者/ 葉 一般人(13回)-(2009/04/12(Sun) 01:31:50)
    「どこ行くの?」
    心なしか真剣な声に私は眉をひそめる。
    「いや、カブール帰ってるんでしょ? 助けて頂いたみたいだからお礼言わなきゃ」
    「言わなくていい!それに店じゃなくて蔵の金庫に入ってるし! 最近税関厳しいし!」
    何度売っても戻ってくる、そもそもはアフガンのカブール博物館の収蔵品の仏頭。私は話はできないが、沙耶にはできる。
    沙耶に言わせれば相当にたちが悪い生臭仏だが、険しい峠を越えて盗品を売って生活する現地の人達のために何度も売られ、国に返還されてもまた盗まれて売られてくるというのはかなり有り難い仏様なのではないかと私は思っている。
    補足すれば、沙耶はこの店の実の娘ではない。先代もそう。初代が曰く付きの品物で恐ろしい目に遭ったとかで、それらを見分けられる子供を養子に貰うのがしきたりで、沙耶もまた先代の実子と交換された。
    思春期に家出して実家に戻った時、小さな工場をやっている実家で両親と、自分と取り替えられた息子に深々と頭を下げられたと聞いた事がある。沙耶のとっつきの悪さ、近寄り難さはこの辺から来ている。
    よその骨董店からは呪物扱いされるカブールとの付き合いもその時分かららしく、沙耶には数少ない知己というか守り仏ではないかと思うのだが、沙耶は頑強に否定する。
    「金庫なんて可哀想じゃない、出してあげなよ」
    「売るまで出さない!」
    何をむきになっているのか、まるで分からない。
    お礼を言うつもりで来たのだからと店の奥に向かって手を合わせ、少しだけ姫鏡台の女の事を考えた。
    ‥想い人との愛の誓いの証なら、一人で、わざわざ外に出てくる必要はなかっただろう。
    けれども最後の時、自分を抱いていたのが別の女に変わったような気がする。

    あれは気のせいだったんだろうか?

    (携帯)
完結!
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■5732 / ResNo.7)  NO TITLE
□投稿者/ さやか 一般人(1回)-(2009/04/23(Thu) 07:42:51)
    2009/05/27(Wed) 15:02:08 編集(管理者)

    すごく好きです(*^o^*)
    他の作品も見てみたぃです(^-^)

    (携帯)
完結!
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■5669 / 親記事)  蜜香
□投稿者/ 葉 一般人(1回)-(2009/04/09(Thu) 00:09:42)
    桜日和、現世(うつしよ)忘れてそぞろ歩かん。

    ふいに思い立って仕事を休み、古都を訪れた佳織の心境はまさにそれだった。
    元々神社仏閣は好きな方で、一人でも寂しくはない。観光客も少なく木々に埋もれたような小さな寺を選び、花見と森林浴を兼ねてリフレッシュでもするつもりだった。

    それが今、思いもよらぬ事になっている。
    本堂の裏の遊歩道、木立の陰に隠れた小さな東屋で、佳織は柔らかな胸と腕に抱きとめられていた。
    相手の顔はまだ見ていない。冷たく滑らかなブラウス越しの豊かな乳房と、むせ返るような甘い匂いに混乱し、動くことも忘れている。

    甘い匂い――花とも違う、ムスクのような動物性の香水とも違う、でもそれら全てが混じっているような匂い。
    それがこの女の後を追った理由だった。すれ違いざまにふと佳織を捉え、観光客のいない林にまで誘った香りだった。

    「あっ‥‥」
    女に抱きすくめられたまま佳織は呻き、微かに下半身をくねらせた。
    (何?これ‥‥)
    女はそれ以上動いていない。けれども佳織の身体は熱くなり、股間の奥に何かが響いた。むず痒いような感覚――疼きだ。

    「嫌…っ」
    佳織は初めて我に返り、女の抱擁から逃れようとした。
    怖いと言うより恥ずかしかった。身体の芯が疼くような思いなど、経験の少ない自分には独り寝の寝床での手慰みの時くらいしかない。それも見知らぬ同性相手に――

    「だいじょうぶ」
    突然の混乱に涙さえ浮かべる佳織の耳に、とろけるような声が届いた。
    「分かってるわ‥感じてるんでしょう? 貴女のせいじゃないの、そのままでいいのよ」
    穏やかで落ちついた、深みのある声だった。佳織は恐る恐る女の胸元から顔を上げ、初めて女の顔を見た。

    端正な目鼻立ちの、綺麗な女だった。メイクは濃くもなく薄くもなく、まっすぐな黒髪が胸元まで垂れている。どことなく古風で、和装が似合いそうな女だった。
    「会えて嬉しいわ」
    女は微笑んで佳織の目を覗き、その頭を抱き込んで自分の胸に押しつけた。
    あの甘い匂いが再び鼻腔を満たし、佳織は頭がくらくらした。両脚の間がむずむずし、身体から力が抜けるようだ。
    (このひと‥)
    無意識に頭を動かした時、佳織は気付いた。
    (このひと、下着を着けてない‥)
    ブラウス越しに鼻先に、ぽつんと硬いものが掠めた。
    (このひとも‥乳首、勃ってる‥)


    (携帯)
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▽[全レス6件(ResNo.2-6 表示)]
■5671 / ResNo.2)  蜜香・3
□投稿者/ 葉 一般人(3回)-(2009/04/09(Thu) 02:26:25)
    あまり罰当たりな事もできないからと女は笑い、中途半端に昂ぶったままの佳織をホテルに誘った。
    「名前はお互いに知らない方がいいと思うわ」
    部屋に入るなり佳織を抱きすくめ、ベッドに優しく腰掛けさせながら女は言った。
    「教えて‥」
    寺を出るまで散々弄られ焦らされた花芯は恥ずかしいくらいに濡れそぼち、ショーツはぐしょぐしょになっている。女は指だけでなく唇でそこを愛撫し、生かさず殺さずで責めたてた。佳織は歩くのもやっとでこの部屋にたどり着き、相手が同性なのも見ず知らずの相手なのも、もうどうでもよくなっていた。
    「教えて‥」
    女の唇が首筋を這い、指が胸元をまさぐるのに息を弾ませながら佳織は繰り返した。
    「何を?」
    女はからかうように言い、唇を下に滑らせる。佳織は仰向けにベッドに倒れ込み、両脚を上げて女の腰に絡ませた。
    「教えて‥媚香って‥なに‥?」
    「もう分かってるじゃない」
    女は器用に唇と歯で佳織のブラウスのボタンを外し、両手で乱暴にブラジャーを引き下ろす。はずみで佳織の乳房がぶるんと揺れて露わになった。
    「嫌‥っ」
    反射的に隠そうとする佳織の手を女は払い、容赦なく掴み、撫で回した。
    「んんっ‥」
    左右の乳房からざわざわと快感が広がり、背筋を駆け上る。佳織はこらえきれず身体を仰け反らせた。
    「可愛いわよ‥すごく」
    指の腹で片方の乳首を転がし、首筋を強く吸いながら女が囁く。
    「さっき貴女にしてもらった事、全部してあげる‥貴女乳首が感じやすいのね。オナニーする時、いつも弄ってるの?」
    「嫌‥そんなの‥」
    「嫌じゃないでしょ? こんなに硬くして‥ほら、びんびんよ?」
    「‥ああっ!!」
    「ふふふ、もっと虐めてあげる‥敏感なのはどっちの乳首かしら?」
    佳織はびくんびくんと上半身を痙攣させて叫び声をあげた。女は両方の乳首を代わる代わる摘み、撫で、甘噛みと吸い上げるのを繰り返す。自分で愛撫するのとは違う、先の見えない快感が乳首から全身に広がるのを感じ、あられもなく叫び続けた。
    「ああん、あああ‥いい‥すごい‥」
    「気持ちいい?」
    「気持ちいい―――すごい‥すごいよぉ‥」
    佳織は涙声になっていた。女は絶妙のタイミングで乳首への愛撫を指と唇に使い分け、舌で丹念に舐め上げ虐め抜く。さらに露わにした自分の乳房と乳房をこすり合わせ、乳首で乳首を弄られる。

    (携帯)
引用返信/返信
■5672 / ResNo.3)  蜜香・4
□投稿者/ 葉 一般人(4回)-(2009/04/09(Thu) 03:32:34)
    乳首と乳首がこすれ合うもどかしさ頼りなさはたまらなく、佳織はすすり泣きながら身体を弾ませた。
    女は佳織に両脚でがっしりと腰を捉えられつつも上半身を巧みに揺すり、揺れる乳房は佳織の顔のすぐ上を上下左右する。佳織は両腕で女に抱きつき頭を起こし、揺れる乳房の先端に吸い付き乳首を舐める。
    「ああっ―――」
    女は身体を仰け反らせて声を上げ、佳織の舌技に笑みを漏らした。
    「いやらしい子ね‥こんなにしてもまだ足りない? こんなに淫乱な子は初めてよ」
    「もっと‥」
    「もっと何?」
    「もっと、して‥」
    「何をしてほしいの? ちゃんとおっしゃい」
    女の乳房と自分の顔を唾液でぐしょぐしょにして佳織は喘いだ。
    「もっと虐めて‥佳織の乳首も‥あそこも‥」
    名前を口にしたが、女は聞こえないふりをした。代わりに指先で佳織の乳首を摘み、軽く捻った。
    「‥ああっ!」
    「乳首と、どこ?」
    佳織は悔しくて泣きそうになった。分からないわけないじゃない! 散々弄って、焦らしておいて―――
    けれども佳織にできるのは女の腰に絡ませた両脚に力を込め、腰を浮かせておねだりする事だけだった。
    「あそこ―――佳織のあそこ‥お願い‥弄って‥虐めて‥お願い‥お姉さま‥」
    女はくすっと笑い、佳織のショーツの端を掴み、ぐいっと引き上げた。
    「ここ?」
    「――ああッ!!」
    「痛かった?」
    「ううん‥気持ち‥いい‥」
    ショーツは佳織の花芯をきつく締め上げ、Tバックのように食い込んだ。佳織の腰は無意識に動き、緊縛感を更に強めようと淫らにくねった。
    「ああ‥お姉さまあ‥」
    腰をくねらせ、女の乳首を音を立てて吸い、佳織は空いた手で自分で乳房を揉みしだき、乳首を弄り始めた。しかし独りよがりを女は見過ごさず、強引に身体を引き剥がすと69の体勢で佳織に覆い被さり、自分のショーツをずらして佳織の鼻先に花芯を突き出した。
    「教えてあげるわ」
    佳織は涙にかすむ目で剥き出しの女の花芯を見つめ、そこから立ち上る芳香にむせた。
    「お舐めなさい」
    有無を言わせぬ声だったが、言われなくてもそうしたように、佳織はそこに顔を埋めた。

    「あ‥はああ‥あっ‥」
    女もかなり感じているのか、腰がびくんびくんと痙攣する。佳織は女の太ももをがっしり掴み、熱く潤んだそこを懸命に舌でなぞり、舐め回した。


    (携帯)
引用返信/返信
■5673 / ResNo.4)  蜜香・5
□投稿者/ 葉 一般人(5回)-(2009/04/09(Thu) 04:37:14)
    「ああ――あ、あ、あっ‥」
    女のクリトリスは硬く勃起し、弾けんばかりになって震えている。佳織は自分もこうしてほしいと伝えたい一心でそれを舐め、舌先でつつき、吸い込んだ。
    (ああ‥なんて甘いの‥)
    舌先の奉仕の最中にも、女の花芯から溢れる愛液が佳織の顔に垂れ落ちる。それは蜂蜜ともメイプルシロップとも違う、濃厚で甘い蜜だった。
    「待って‥慌てないで‥」
    一心不乱に奉仕する佳織の口から蜜の花が離れ、佳織の太ももがふわりと抱え上げられる。佳織は喜びで胸を詰まらせた。
    「蜜香というものを作る人がいるの」
    女の息を内股に感じ、佳織は気が遠くなりかけながらも耳を澄ませた。
    「普段は香道――お香の香を作る職人さんよ。でも、媚薬になるお香を作る事があるの」
    ショーツがずらされ、熱い息がかかる。女の鼻先が触れる――
    「あ‥はあッ!!」
    柔らかい唇が花芯を包み、女が喋る震動が電気のように奥に伝わる。
    「そのお香はオーダーメイドでね、作られる人自身が原料を提供するの。何かは言わないでも分かるわね」
    女の唇がゆっくり開き、熱い舌がちろちろと動き出す。
    「ああ―――‥あ‥」
    耐えに耐え続けた後のあまりの快感に、佳織は腰をくねらせた。
    「その香りを嗅ぐとね、嗅がされた人は獣になるのよ‥貴女みたいにね」
    誰にでもと言うわけではない。その香りに惹かれる相手には、と女は続けた。
    「貴女がこんなになってくれるのも、当然と言えば当然よね‥私の蜜に反応してくれたんだもの‥そうでしょう?」
    答える暇は佳織にはなかった。女が語り終えると同時に蜜の花芯が再び間近に迫り、佳織は殆ど反射的にそれに顔を埋めた。
    「んっ‥ん‥ん‥」
    佳織が花芯を舌でなぞると女も同じ動きで佳織の花芯を責め、クリトリスを舐めると舐められ、いつしか秘穴にも後ろの穴にも舌と指が滑り込み、達しようとすれば退き、退けばまた責め、二人とも気が狂わんばかりになるまで責め合った。
    「ああっ、もう、もう―――」
    女がクリトリスを震わせて高く叫びかけた時、佳織は思わず身体を起こし、両脚を大きく開いて女に向けた。
    「お願い――来て‥」
    女はすぐに理解し、素早く身体を起こして開いた両脚をさし違いに佳織のそれと組み合わせ、肘で身体を支えて花芯と花芯をぴったり合わせた。
    「ああ――あ、あ‥」
    「ああ‥いい―――」

    (携帯)
引用返信/返信
■5674 / ResNo.5)  蜜香・6
□投稿者/ 葉 一般人(6回)-(2009/04/09(Thu) 05:21:23)
    乳首と乳首とのこすれ合いとは比べものにならないもどかしさ、そして快楽の鋭さに二人は叫び続けた。
    「いく―――だめ、いっちゃう‥」
    「気持ちいい‥お姉さまのクリトリス‥硬い‥大きい‥」
    「貴女のも、すごい‥犯して――もっと犯して‥」
    「ああ――あ、あ、もう‥ああッ!!」
    佳織は腰を浮かせたまま痙攣し、女もまた仰け反ったまま硬直した。

    「安易に勧められる事じゃないけど‥」
    古都の外れの住所を記したメモを渡す際、女は苦笑いを浮かべていた。
    「セックスも麻薬の一つだし。‥まあ、お前が言うなって感じだけどね」
    古都住まいだけれども蜜香を持つ者にはまだ会った事がない、と女は言った。
    「だから楽しみではあるのよね。またお会いする事は」
    ホテルを出て女と別れ、その足で立ち寄ったコーヒースタンドで、佳織はしばし考え込んだ。

    桜日和、現世を忘れてそぞろ歩かん

    もう一日仕事を休もう。そう決めると楽になった。

    (携帯)
完結!
引用返信/返信
■5730 / ResNo.6)  感想
□投稿者/ mimi 一般人(1回)-(2009/04/22(Wed) 21:57:32)
    もう、濡れ濡れです・・・
引用返信/返信

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■5665 / 親記事)  拾われて   プロローグ
□投稿者/ 郭炉 一般人(1回)-(2009/04/06(Mon) 16:54:32)
    その出来事は、6月・・・・梅雨のある日の出来事だった。




    その日1日は、まさにバケツをひっくり返したような大雨で、傘をさしても雨で濡れてしまうほどだった。
    傘が全くもって意味を持たない。
    唯一の救いは、風が大してない事だった。しかし、気温も湿気も高く、じめじめとして気分も暗くなる。




    『拾われて』




    私は、近所のスーパーに買い物に行ってきた帰りだった。




    今日は本当についていないと心底思う。
    晩御飯の材料が全くと言ってもいいほどに、冷蔵庫には無かった。
    そこまでは仕様が無いのだが、自転車は壊れてしまっているし、車は車検に出してしまっていて無かった。

    私は、傘を差して歩いて行く他にはなかったのだ。




        
                    * 





    ずしりとしたスーパーの半透明の袋を左手に、黒と白のドット柄の傘を右手に持ち、多少イラつきながら急いで自宅へ帰る。
    早くしないと、身体も買い物も濡れてしまう。



    一人暮らしをしている薄紫のマンションに着くと、急いで入り口へ向かった。
    幸い、マンションの入り口には屋根が付いており、そこで傘をたたむ事ができた。



    傘を少し振って、雨の水滴を落としていると、小さなくしゃみが足元から聞こえた。
    なんだろう、とちらりと初めて右側に目をやると、1人のびしょ濡れで震えている少女がいた。



    彼女は、染めていると思われる明るい茶色に染まったショートカットに、黒い切れ長の目が特徴的だった。
    服は白いワイシャツのみで、下は黒いズボンに裸足・・・いかにも寒そうで、家出をしてきた感じだ。
    しかも、古いダンボールの中で体育すわりをしていて、傷だらけの身体を休ませている・・・見た目は20代前半。



    「あの・・・・・?貴方はどなたでいらっしゃいますかね」



    恐る恐る、しかし心配しつつその人に尋ねると、ゆっくりと私の方に視線を向けてくる。
    その目は、しっかりとした意思を秘めたような強い目で、それと共に悲しみや淋しさに塗れていた。



    「あ・・・・・っ」



    彼女はしばらく私を眺めた後に、少し俯くと恥ずかしそうに俯いて声を上げた。
    少し低めの、目の感じと一緒の声だった。



    「・・・・貴方は・・・・俺の新しい御主人様・・・・・?」



    は?とつい固まってしまった・・・・・御主人様・・・・・・?
    私にはそんな趣味はないし、第一赤の他人、見知らぬ女性だ。いきなり言われても・・・困るだけだ。



    「あの、とりあえず中に入りませんか?濡れちゃってるし・・・・・・」



    一応、黙っている彼女の肩を抱いて、マンションの中へと連れて入って行った。














    ・・・・・これが、彼女との出会いだった。
引用返信/返信

▽[全レス5件(ResNo.1-5 表示)]
■5666 / ResNo.1)  拾われて   家で
□投稿者/ 郭炉 一般人(2回)-(2009/04/06(Mon) 17:26:06)
    マンションの4階に、私の住んでいる部屋はある。
    広めの部屋で、風呂、トイレ、キッチン、リビングともう1室が付いている部屋だが、そろそろ出ようかと考えているところだった。



    中へ入ると、まず、やはり黙っている彼女をお風呂へ入らせた。
    随分長時間外にいたみたいで、肌が透けてしまうほどに濡れていたのだ。風邪を引いてしまうといけない。


    お風呂に入っている間に、暖かい紅茶を沸かし、隣に住むおばさんに頂いた洋菓子を出して、小さな木製のテーブルに並べた。





    丁度、それらが終わった時に彼女はこちらへとやってきた。



    「うん、服のサイズは問題ないね」



    多分彼女は、私の着ている服の1つ下のサイズなのだろう。少し大きいが、小さくは無いので問題ない。
    私の黒いジャージを貸してあげたのだが、袖もぶかぶかだし、ズボンも少し引き摺る感じだが・・・・まあいいだろう。


    「ごめんなさい・・・・」


    ポツリと呟くと、私の横にぺたりと座った。少し湿っている髪が垂れて、少し色っぽい。


    「いいよ、別に。家出?」


    そう聞くと、彼女は弱々しく首を左右に振った。違うらしい。
    私は、無理矢理聞くのもなんだし、彼女が自ら話すのを待つことにして、紅茶とお菓子をすすめた。




                      *



    食べ終わって、私が食器を洗い終わる頃に、彼女は自分の事を話し始めるようにまでなった。
    空腹も満たされ、警戒心も解けているようだ。安心したのだろう。



    彼女の名前は、高草充流(タカクサ ミチル)。22歳の女性だ。両親はすでに交通事故で亡くなっているという。私の1つ年下である。
    つい一昨日まではとある人と同居していたらしい・・・それが御主人様だった。


    充流は中学生の頃ぐらいから、自分が恋人に意地悪をされるのが好きだと気が付いた。まあ、自分がMだと気が付いたのだ。
    それからはSである人と付き合うようになっていったらしい。
    彼女はバイ・・・男でも女でも好きになれる性格で、今まで男女4人と付き合ったが、長続きはしなかった。


    しかし、1年半前にとあるバーで元御主人様、明日宮さんと出会う。
    彼女に「私に付いて来る気はある?」と言われて、彼女のペットになった充流だが、彼女は凄まじかったという。
    鞭や蝋燭、過激な露出などを彼女に強要し、言う事を聞かなければ暴力、機嫌が悪くても暴力。ご飯を抜かれたりする事もしょっちゅうだった。

    そんな場所が嫌で、もっと自分を大切にしたくて脱走を幾度か試みるが、その度に捕まり拷問を受けていた。
    そして、一昨日やっと抜け出せた彼女は、行く当ても無くフラフラと来ていたらしい。



    「なるほどね・・・」



    私は乾かした自分のセミロングの黒髪を、くしでときながら聞いていた。
    私も既に汗と雨に濡れた服を着替え、白いワンピースを着ている。



    「あの、さ。行く当て・・・・ないんでしょ?」


    「・・・うん・・・・・」



    しょんぼりと彼女が答える。どう見ても精神的・肉体的ショックが大きいだろう。このまま放っておくわけにはいかない・・・・。






    「私と一緒に暮らす?」












    彼女の答えは・・・・首を縦に振った。
引用返信/返信
■5667 / ResNo.2)  拾われて   同居
□投稿者/ 郭炉 一般人(3回)-(2009/04/06(Mon) 18:53:04)
    「御主人様・・・じゃない、貴方の名前って?」



    そう充流に尋ねられ、私は自分の名前を告げた。



    「菅原美都(スガワラ ミト)。充流の1歳年上で23」



    私の名前を教えると、充流は少し微笑んだ。その顔が可愛らしくて、私は不覚にも少しときめいてしまった。
    そして、彼女に聞かれる前に、私は自ら私の事を話し始めた。


    私の両親は、今は海外で仲良く暮らしていて、滅多に2人には会わないこと。
    仕事はチョコレートの専門店と雑貨店を営んでいること。
    自分もバイで、今まで男性1人、女性2人と付き合ったこと。
    SM系には、自分は一切興味が無いし経験も無いこと。
    今はマンション暮らしだけど、近いうちに隣町に引っ越す予定ということ。


    彼女は黙ってじっとこちらを見て聞いていた。
    私が話し終わると、あ、と小さく声を漏らした。



    「どうしよう・・・荷物持って来てないよ」


    彼女は手ぶらだったので、その事は見ても明らかだったが、ずっと私の服を着るわけにもいかない。


    2人で話し合って、今週の日曜日に買い物に行くことにした。
    充流は無事に家の外を歩けるかは分からないが、とりあえずはその日に大体は揃えようという事になった。


    そういえば、明日は私は仕事の予定が午後から入っている。
    今の充流を1人にさせたくは無いのだが、働かなければならない。
    不安だが仕方の無いことだ。



    「とりあえず、夕ご飯食べようか。今夜はピラフとサラダだけど、食べられる?」



    「うん。食べられるよ」



    「じゃあ、今から作るから・・・テレビでも見といて?スグだよ」



    そういって私はキッチンへ行くと、なるべく急いで夕ご飯を作り始めた。
    材料が足りるか心配だったが、私が元々食べる量が多めなので大丈夫そうだ。
    その間、充流はテレビをつけてドラマを見ていた。が、やはり笑みはない。
    たまにふっと微笑むだけであった。


    作り終わると、充流が気付いてテーブルの前に座った。まあ匂いで分かるのだろう。


    「美味しそうだねっ」


    「そう?ありがと」


    そう言って、私達は食べ始めた。先ほどお茶を下ばかりなのにすんなりと食べ終わり、食後のデザートで苺まで食べ終わった。










    それからすぐに、私達は1つの布団で寄り添って眠ってしまった。
    その頃には雨は止んでいて、少しだけ星が瞬いていたという・・・・。
引用返信/返信
■5668 / ResNo.3)   拾われて 仕事
□投稿者/ 郭炉 一般人(4回)-(2009/04/07(Tue) 15:29:35)
    朝・・・・といっても、11時過ぎに目覚めると、最近はずっと降っていた雨が止んで晴天だった。
    隣を見ると、充流はすやすやと掛け布団の白いシーツを握り締めて眠っている。
    その寝顔は、年齢よりも少し幼い感じがする顔だ。


    私は起こすのも悪いなと思い、静かに布団を抜けると朝食を作り始めた。
    今朝は、コーヒーとブルーベリージャムをたっぷり乗せたトースト、ヨーグルトとバナナ。
    便秘がちな身体を気遣い、毎朝必ずヨーグルトとバナナを食べている。もう日課だ。



    食べ終わって、食器を洗い終えても彼女は起きなかった。
    よっぽど疲れているのだろう。
    もうちょっと家にいたいが、仕事があるので行かなければならない。
    私は不安になりつつ、メモを残していくことにした。


    『充流へ

       おはよう。これを読んでいる頃には、私は仕事中でしょう。
       起こすのが可哀想だったので、寝かせておきました。
       ご飯は、冷蔵庫にある程度は入っている食材で作ってね。
       テーブルにコーヒーとバナナを置いておきます。
       コーヒーは温めて飲んでね?
       いってきます。
       PS  困ったこととかあったら、下に書いてある電話番号に電話して。
       私のお店の電話番号です♪
        
                               美都』


    電話番号を書いて、私は薄い水色のシャツと黒いスーツに着替えてから仕事に向かった。一応、鍵は閉めていった。









                        *








    マンションから車で約20分。ちょっと離れた場所に、私が経営するチョコレートの専門店はあった。


    その店の外見は、黒い壁に白いドア。外からは中の様子は見えないが、横のほうに小さな出窓がいくつかついている。


    表の入り口から入ると、先に来ていた店員・・・ここで働いて3年目の葵さんが私に気が付く。



    「おはようございます、店長さん♪」



    「おはようございまーす。葵さん、なんですかソレ」



    葵さんは私の3つ上だ。一応私は店長だが、年上という事で敬意をはらって敬語で喋る。


    葵さんは、両手に大きなダンボールを抱えていた。
    確か、今日入荷したチョコレートは、そんなに多くは無いはずだ。


    「ああ、コレ?私の知人から頂いたの。蜜柑や苺とか、まあフルーツ系のチョコだって。いくらなんでも多いけどね」


    苦笑しながら、葵さんはそのダンボールを置いて、上に貼ってあったガムテープを剥いだ。
    中からは甘い匂いと、ダンボールの匂いが少しだけ混じった匂いがしてくる。



    「どうする?コレ売っちゃう?」



    「そうですねー・・・売りましょうか」



    ちょうどスペースが空いていたので、その場所に並べてもらった。

引用返信/返信
■5686 / ResNo.4)  Re[4]: 拾われて 仕事
□投稿者/ さき 一般人(1回)-(2009/04/12(Sun) 00:15:56)
    続き楽しみにしてます。
    頑張って下さい♪
引用返信/返信
■5711 / ResNo.5)  Re[4]: 拾われて 仕事
□投稿者/ 塊 一般人(1回)-(2009/04/19(Sun) 22:25:35)
    面白いです
    続き待ってます

引用返信/返信

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